報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「一方その頃……」

2015-10-30 19:42:29 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月21日14:00.宮城県栗原市郊外 KR団秘密研究所 平賀太一、1号機のエミリー、鷲田警視、村中課長]

 ボーカロイド達がライブで盛り上がろうとする中、自爆を免れたKR団の研究施設に警察の捜査が入っていた。
 警戒と専門的知識の為に、平賀とエミリーも同行している。
「何て施設だ!あちこちに危険な罠が仕掛けられてやがる!」
「さすがはKR団の日本拠点の……最終地点ですね」
 鷲田のボヤきに、平賀が冷静に答えた。
 因みに、今まで命の危機に瀕するロボットとの戦いは無い。
 エリオットは館内のバージョン3.0を、本当に旧館に全員集合させたようで、その残骸は全て旧館エントランスホールにあった。
 エミリーのスキャナーにも、引っ掛かるロボットは今のところいない。
「こりゃ1度、停電させてみるか?そしたら、罠は作動しなくなるだろう?」
「警視、それじゃエレベーターまで動かなくなって、詰んじゃいますよ?」
 村中がツッコミを入れる。
「むむ……。それもそうだな」
「いざとなったら、エミリーに何とかさせますから」
 と、平賀。
「お任せ・ください」
 先行するエミリーは振り向き、微笑を浮かべて言った。

 新館では頭部の無い女性の死体を発見した。
「こりゃ、サイボーグだな。人間を改造したヤツの」
「まさか、井辺プロデューサーがやったのではあるまいな?そのショットガンで」
「警視、傷の具合からして、散弾銃ではなく、狙撃銃によるものと思われますよ。それも、使うのに相応の訓練が必要なくらいの。敷島社長はともかく、井辺プロデューサーに使えますかね?」
「いや多分、敷島さんでさえ、そんな狙撃銃は使えないと思いますけど?」
 と、平賀は旧友の為に反論した。
「……そうか」
「これも証拠物件として押収だな。警視、この人間だかロボットだか扱いに困るのはどうしましょうね?」
「元は人間だったのだろう?だったら、荼毘に付すまで人間のホトケさん扱いでいいだろう」
「なるほど」
「そこにいるヤツみたいに、人の皮を被ったロボットだったら、扱いは楽なんだがな」
「失礼な。南里先生の遺作ですよ。それより早く、研究施設へ行きましょう」
「ああ、そうだな。研究施設へ下りるエレベーターは、この先だ」
 井辺は旧館側にアクセスするエレベーターに乗ったが、警察が押さえた情報では新館側からもアクセスできるらしい。

 エレベーターを起動させるのにも、仕掛けを解く必要があった。
「わざわざシリンダーを組み合わせなくてはならないとは……」
「建物自体も、違法建築で捜査しなくてはならんな……」
「こういう時、理系の知識のある博士が一緒にいてくれると助かりますよ」
「いや、簡単なパズルなんで」
 しれっと応える平賀。
「いざとなったら、エミリーに計算させる方法もありますし」
「お任せ・ください」
「機械に任せてばかりいたのでは、却って人間がバカになってしまうな」
 とにかく、起動させたエレベーターで地下研究所に降りた。

 古めかしい造りの地上の洋館と違い、研究所は今風の造りである。
 あきらかにこれがメインで、上の洋館はカムフラージュであることが分かる。
「因みに研究所は、井辺プロデューサーもそんなに探索はしていないようだな?」
「ええ。殆ど真っ直ぐ地上に逃げたようです」
「フム……」
「待って・ください」
「何だ?」
 エミリーが苦い顔になって一行を止めた。
「物凄い・数の・センサーです」
「なに!?」
 エミリーのスキャナーには、壁から天井から網の目に張り巡らされたセンサーが発見された。
「このまま・触れると・危険です」
「どこかで解除できないか?」
「ここにカードリーダーらしきものがあるが、カードキーがどこかに無いかな?」
 と、鷲田。
「途中、いくつかあった部屋を探せば落ちているかもしれませんね」
「警備室のような物を探して、そこで解除できるかもしれませんよ?」
「できれば、両方見つかると良いがな」
「じゃあ、ます手近な部屋に入ってみましょう」
 村中が何も書かれていない部屋の鉄扉を開けようとした時だった。
「村中課長、危険ですので、エミリーに開けさせてください」
「ん?そうか?」
「入った瞬間、いきなりダダダダダーっと撃たれても困るしな。このロボットなら機関銃で撃たれても平気なんだろう?」
「まあ、そうですね」
「では、開けてもら……!」
 その時だった。
「!?」
 黒いスモークの張られた廊下の窓を突き破って、赤い塗装が目立つロボットが襲い掛かって来た。
「うわっ!エミリー!」
「イエス!」
 エミリーは近接戦を得意とする。
 すぐにそのロボットに立ち向かい、
「はーっ!」
 まるで柔道の投げ技のように、そのロボットを掴んで投げ飛ばした。
 二足歩行のロボットは、それだけでは壊れず、立ち上がってヨロヨロと別の部屋のドアにぶつかる。
 左腕がドアノブに引っ掛かり、そのドアを開けるような形になる。
 と!

 チュドーン!!

「!!!」
 そのロボットが自爆した。
 いや、自爆というか……。
「ドアが爆発した!?」
「い、いや、違う。ドアが爆発したんじゃない。そのドアに爆弾が仕掛けられていたんだ!」
「何ですって!?」
「こりゃマズいぞ。不用意にドアを開けようとしようものなら、我々の命がいくつあっても足りない」
「さすがのエミリーも、そう何度も爆発を受けて平気なほど化け物じゃないですよ」
 困惑する村中と平賀。
 しかし、鷲田は咳払いをした。
「それなら、私に良い考えがある。さっきのロボットの体内にあったのか、細長いワイヤーが見えるのだが……。それを持って来てくれ」
「エミリー」
「イエス」
 エミリーは言われた通り、件の鉄塊と化したロボットの中から細長いワイヤーを引っ張り出した。
「これをドアノブに引っ掛け、離れた所から開ける。これなら直接、爆風を浴びることはあるまい?」
「なるほど。さすがは警視!」
「但し、実行役はカンベンだがな」
「それはエミリーにやらせます。……てか、誰が爆弾を……」
「エリオットのヤツ、こんなこともあろうかと思って、爆弾を仕掛けたのだろう。とんでもない悪人だ」

 取りあえず、鷲田の案で平賀達は捜索を再開した。
 爆発するドアとそうでないドアがあり、やはり爆発するドアの先には色々と警察が押収したいものがあった。
 そして何とかKR団のカードキーを手に入れ、それでセキュリティを解除し、更に平賀達は奥に進むことができた。
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“新アンドロイドマスター” 「ボーカロイド・フェスタ」

2015-10-30 15:29:08 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月18日20:30.天候:晴 東北新幹線“やまびこ”197号10号車内 MEGAbyte(結月ゆかり、Lily、未夢)]

〔「……東北新幹線“やまびこ”197号、仙台行きと山形新幹線“つばさ”197号、山形行きです。次は、福島に止まります」〕

 “ボカロ・フェス”に参加する為、新幹線で移動する敷島エージェンシーのボカロ達。
 初音ミクなどの売れっ子達は9号車のグリーン車だが、まだ新人ユニットの3人は普通車である。

 大宮駅を発車直後、この3人ユニットに井辺無事の報がもたらされた。
 3人に搭載された通信機器を通して、敷島から直接伝えられたのと、

『虚構新聞ニュース 国際ロボット・テロ組織KR団の総帥エリオット・フォン・スミス容疑者を宮城県で逮捕。東京都内で誘拐された芸能プロデューサーも救出された』

 というニュースが車内の電光表示板で流れた。
「良かったですぅ……プロデューサー……」
 ゆかりは涙を流して喜んだ。
「ダメだよ、ここで泣いちゃ……」
 Lilyがゆかりの肩を抱いた。
 だが、いつもはクールなLilyも目に涙を浮かべている。
「でも、あいにくと“ボカロ・フェス”には来られないかもね」
 未夢はユニットの年長者らしく、もう少し冷静だった。
「社長の話では病院に運ばれて、色々と検査とかもしなきゃいけないわけだから……。本当は来てもらいたいんだけど……」
 すると、ゆかりは涙を拭いて答えた。
「いいんです。プロデューサーさんが無事なら、それで……」
「だけど、よくあんなテロ組織の総帥の所に拉致されて無事だったよねぇ……」
 と、Lily。
「社長なら普通に無双してそうだけど、まさかプロデューサーも?」
「意外とそうかもね」

 KR団総帥エリオット・フォン・スミス。病院に搬送されるものの、3時間後に死亡が確定。死因、バージョン3.0の転倒による圧死。致命傷、多臓器の破裂……。

[9月19日14:00.宮城県宮城郡利府町・セキスイハイムスーパーアリーナ 一海と井辺翔太を除く敷島エージェンシーの面々]

「いよいよこれから『ボカロ・フェス』が行われる。色々と紆余曲折あったわけだけども、これから3日間、全力で頑張ってほしい。キミ達の調整は既に万全だ。プログラム通りに動けば、ほぼ完ぺきにこなせるようになっている」
 敷島は所属するボカロ達を前に話を始めた。
「本来ならここに井辺君という優秀なプロデューサーがいるはずなんだけども、皆も知っての通り、彼は今、病院で検査入院中だ。ここに来られないのは残念だけども、その代わり、ビデオレターを預かっている」
「ええっ!?」
 敷島の最後の言葉にざわつくボカロ達。
「シンディ」
「はい」
 シンディは控室内にあるテレビとDVDデッキを引っ張り出すと、それでDVDを再生させた。

〔「えー、皆さん。この度は大変、ご心配とご迷惑をお掛けしました。私はおかげさまで、この通り、無事です。……」〕

 病室で撮影された井辺が映し出される。
「プロデューサーさん……」
「はい」
 また泣き出しそうになるゆかりに、ミクがティッシュを渡した。
「ありがとうございます……」

[同日16:00.同場所・バックヤード 敷島孝夫&3号機のシンディ]

 ステージは予定通りに始まった。
 他にボカロを抱える芸能事務所との共同ライブなので、トップバッターは違う事務所のボカロだったが。
 敷島は電話片手に、鷲田警視とのやり取り。
{「キミの所のロボットの映像を見たが、マシンガンを撃ち過ぎだ。全く。おかげでこっちは大事な被疑者が死んだんだぞ」}
「ああでもしないと、うちの社員が殺されるところだったんですよ。だいたい、階段を転げ落ちたのは、うちのシンディのせいじゃないでしょう?」
{「押収した妖精型のロボットだが、もう少し預かることになりそうだ」}
「何かやってました?」
{「今のところは何も。だが、動力などがさっぱり分からん。どうして今まで、あんなロボットが存在しなかったんだ?」}
「体が小さ過ぎて、逆に難しいんだそうですよ。だからエミリーやシンディなど、大きなモデル体型みたいになってるでしょう?」
 アルエットがマルチタイプでロリ化小型化・軽量化に成功していることで、学界では大騒ぎだったのはその為。
{「誰が製作したのかの解析を進めているが、井辺氏から情報は取らせてもらえないか?」}
「大丈夫なんじゃないですか?彼も結構したたかなもので、研究施設から記憶媒体いくつか持ち出してるみたいですから」
{「なにぃっ!?何故それを早く言わんのだ、バカモノ!!」}
「……どのお巡りさんも、事情聴取しに来ないんですもの……」
 敷島は唇を尖らせて答えた。
 とは言いつつも、
(コピーして平賀先生達に流してたから。てへてへw)
 が、正直な答えだったようである。

 そんなこんなで1日目、2日目ともイベントは成功した。

[9月21日10:00.JR仙台駅在来線ホーム ???]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の列車は、10時5分発、普通、利府行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 かつては寝台特急“北斗星”などが停車していたホーム。
 長大編成の列車に合わせ、ホームもその長さに合わせているのだが、それが実に勿体ないほどに短い編成の電車がポツンと停車している。
 その電車に、1人の男が乗り込んだ。

〔「ご案内致します。この電車は10時5分発、東北線下り、普通列車の利府行きです。東仙台、岩切、新利府、終点利府の順に止まります。松島、小牛田(こごた)方面には参りませんので、ご注意ください。……」〕

 たった2両の電車に乗り込んだ男は、詰めれば10人以上は座れる長い座席に腰掛けた。
 ダイヤは乱れていないので、定刻通りに発車し、定刻通りに到着できるだろう。

[同日10:45.セキスイハイムスーパーアリーナ 一海を除く敷島エージェンシーの面々]

「ホームへ降りてく〜♪人の織り成す波に〜♪ただ1人♪浮かんでたあのコ♪……」
 巡音ルカがソロで歌う持ち歌の調整をしている。
 と、
「すいません、敷島エージェンシーの控室はこちらでよろしかったですか、巡音ルカさん?」
「えっ?……ああっ、井辺プロデューサー!?隣の部屋です」
「どうも」
「あっ、てか……井辺プロデューサー?今日一杯まで、入院だったのでは?」
「先生に無理してお願いして、何とか外出許可だけでもらいました。おかげさまで、明日の午後に退院が伸びそうですが……」
「ええっ?」
 ルカの案内で控室に入る井辺。
「みんな!井辺プロデューサーが来られたわよ!」
 クールなルカが、ライブ以外で珍しく大声を上げた。
「ぶっ!」
 オイルを経口補給していた鏡音リンはびっくりして吹いたし、口腔内を整備していたKAITOはドライバーを咥えたまま走って来た。
「プロデューサーさん!」
 1番驚いたのはMEGAbyteの3人。
「皆さん、大変なご心配とご迷惑をおかけしました。せめてライブの最終日はこの目で見たいとの思いで、何とかやってきた次第です。私は……」
「あの、プロデューサー」
 そこへMEIKOが話の腰を負った。
「何ですか?」
「因みにプロデューサーがここに来るって話、社長は知ってるの?」
「いえ。社長とは連絡が付かなかったので……」
「て、ことは……」

 バンッ!とドアがいきなり開けられる。
 右手をマシンガンに換装したシンディが飛び込んで来た。
「そこまでだ!侵入者!!」
「わーっ!侵入者じゃありません!プロデューサーさんですぅ!!」
「シンディ、違うから!」
「銃を下ろしてくださいぃぃぃぃっ!」
 ゆかりとルカ、ミクで取り押さえる。
「なまじっかセキュリティ強化し過ぎると、こうなるのよねぇ……」
 MEIKOはちらっと井辺を見ながら言った。
「申し訳、ありません」
 井辺は右手を頭にやった。
コメント (2)
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