報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「洋館から脱出せよ!」

2015-10-11 19:54:24 | アンドロイドマスターシリーズ
[期日不明 室内の時計によれば現在時刻21:30.天候:晴 洋館3Fスイートルーム 井辺翔太&妖精型ロイド・シー] 

 スイートルームに戻ると、ベッドの上に腰掛けている者がいた。
「バ、バージョン3.0!?」
 井辺が声を上げると、3.0はウィィィンと頭部を井辺に向けた。
 そして、右手を挙げる。
 まるで、
「こんばんは」
 と言っているかのようだ。
 だが、立ち上がると、バタバタと井辺に近づいて来た。
「ヨンロック!この人は敵じゃないよ!」
 シーがパタパタと羽音を立てて、バージョン3.0の前を飛ぶ。
 46号機なので、シーは勝手に名前を付けたようだ。
 シーが話をつけてくれるだろうか。
 しかし、
「ヴン!」
「ぎゃっ!」
 パンッと右手で、まるでハエを叩き落すかのように叩き落した。
「シー君!」
「きゅう……」
 シーは目を回して床に落ちた。
 46は更に、赤い両目をギラッと光らせて井辺に組み付こうとする。
「!」
 井辺は持っていた拳銃で46号の頭部を狙って発砲した。
「くっ!やっぱり弱いか!」
 シンディのライフルやエミリーのショットガンくらいの威力(当然、両方とも強化改造済)が無いと、いかに旧型機と言えども倒すことは難しいようだ。
 最後の1発が大きな右腕に当たる。
 それで46号機はバランスを崩して転倒した。
 ここで井辺の拳銃は弾切れ。
「今だ!」
 井辺はシーを拾い上げると、再び外廊下へ飛び出した。
 そしてケインの手紙通り、2階の外廊下から鍵の掛かっていたドアへ飛び込んだ。
 手紙の通り、鍵が外されていた。
「くっ!」
 井辺はドアを閉めた。
 そして、こちら側から閂を掛けてやる。
 そこから逃げると、そのドアが激しく叩かれる音がした。
「しつこいヤツめ!あれで凌げるといいが……」
 2階の外廊下からまた下に降りる階段があった。
 そこを下りると、正門があった。
 とても重厚な……洋館の正門というよりは、まるで貴族の城のように重厚だ。
「くそっ!鍵が掛かっている!」
 マルチタイプの力なら壊せそうだが、当然ここにそんな者はいない。
 遠くで何かが壊れる音がした。
 恐らく46号機がドアを破壊したのだろう。
「時間が無い!」
 引き返して、今度は正面玄関のドアを開けた。
 ここも鍵は掛かっておらず、中に入ることができた。
 そして、ガチャリと鍵を掛ける。
 洋館のエントランスらしく、中央にはT字型の吹き抜け階段があった。
 階段を登って2階に上がってみた。
 天井には豪勢なシャンデリアが吊るされている。
 いくつかの部屋は鍵が掛かっていたが、2階のとある部屋に入ることができた。
「何だ、ここは?」
 何かの展示室らしい。
 絵画が掛けられていた。
「うー……」
「あっ、シー君!大丈夫かい?」
「相変わらず馬鹿力だ。もう本当に故障しちゃったのかな……」
「それよりシー君、この部屋は何だい?」
「ただの美術室だね。人物画の絵が飾ってあるだけの」
「人物画?それにしては見たことのある……ああっ!?」
 1枚目はエミリーだった。
 3枚目にはシンディがいて、7枚目にレイチェルがいた。
 女性型は楚々とした雰囲気、男性型は雄々しい雰囲気で描かれていた。
 エミリーなどは貞淑然としているし、シンディは笑顔で描かれているが、どことなく禍々しい雰囲気を感じる。
 レイチェルはおっとりした感じに描かれているが、どうも全体的に顔色が悪く描かれているせいか、何か違って見える。
 だいたい合ってはいるのだが……。
「翔太さんはこの絵を知ってるのかい?」
「1号機のエミリーさんと3号機のシンディさん、そして7号機のレイチェルを知っている」
「へえ……。でも、それだけじゃなぁ……」
「何か?」
「その先にドアがあるでしょ?」
「ええ」
「この部屋の仕掛けを解かないと、先には進めないよ」
「ええっ?」
「ヒントは、この絵に描かれているマルチタイプの号数を足して16にすることだね」
 絵の下にはボタンが押してある。
「エミリーさんは1号機だから1、シンディさんは3号機だから3、レイチェルは7……」
 これで合計11だ。
 しかし、マルチタイプの全てを井辺は知らない。
 むしろ、この絵を見て初めて残りのマルチタイプの姿が分かったくらいだ。
 だが、
「うっ!?」

 ドン!ドンドンッ!!

 先ほどエントランスホールから入ってきたドアが激しく叩かれた。
「先客がいる間は、ロボットのセキュリティ解除も効かないんだ。だけど、あいつのことだから壊して入ってくるだろうね」
「! 待てよ。あの人……」
 井辺はクーリッシュな男の絵を見た。
 この絵のマルチタイプだけ眼鏡を掛けている。
「ロイドのくせに眼鏡を掛けてるから怪しいって?別にいいんじゃない?“アラレちゃん”だって眼鏡掛けてるよ?」
「そういう問題ではありません!恐らくあれは5号機のキールです!」
 もちろん、敷島達の前に立ちはだかったのは執事ロイドが転用されたもので、このマルチタイプ本人ではない。
 だが、敷島達の話によれば、エミリーを惑わしたキールは、その5号機のキールをモデルに作られたのだろうとのことだ。
「プラス5で、イコール16!」
 ボタンを押すと、ガチャリと向こうのドアの鍵が外れる音がした。
 と、同時に、バァン!と先ほどのドアがこじ開けられた。
 井辺達が解錠したドアを開けようとした時、どういうわけだか天井から金タライが落ちてきて、46号の頭に直撃した。
 46号は目を回して、その場に倒れた。
「な、何故に金タライ!?」
「……ニヤ」
 含み笑いをするシー。
 おとぎ話の妖精も、中には往々にして悪戯好きの個体が存在するが、もしかしてこのシーもそれが再現されているのだろうか。
「と、とにかく、今のうちだ!」
 井辺はドアを開けて、更に屋敷の奥に進んだ。
(マルチタイプの絵といい、ここは本当に研究所か。しかし、何で……?)
 謎解きや仕掛けを解くことについては、シーからのヒントで何とかなったが、謎は却って深まるばかりであった。
コメント (6)
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