[9月10日19:45.天候:雨 JR仙台駅東口 敷島孝夫、アリス・シキシマ、3号機のシンディ]
大雨降る中、バスは約50分遅れで終点の仙台駅東口バスプールに到着した。
この悪天候の中、50分遅れで済んだのは奇跡としか言いようが無い。
バスを降りると、荷物室に預けた大きな荷物を受け取る。
それは力持ちのシンディが持つ。
「凄い雨だ。早く駅の中に入ろう!」
敷島が促した。
但し、凄い雨といっても、この時点ではまだ傘を差せば何とかなる程度だった。
[同日20:30.東北工科大学・南里志郎記念館 上記メンバーにプラス、平賀太一&1号機のエミリー]
再会した鋼鉄姉妹がどのような反応をお互い取ったか、ご想像にお任せする。
「敷島さんの作戦がオシャカになったので、自爆装置は全て取り外しましたよ?」
と、平賀が肩を竦めて言った。
「すいませんねぇ、ご面倒をおかけして……」
「で、キールの居場所は分かったんですか?」
「何とかね」
シンディが右手を腰にやりながら、平賀に答えた。
「幸い途中で、キールの同型機と会うことができたの。で、そいつのネットワークを使わせてもらって検索した結果、ヤツは宮城県内にいる」
「そうか。やはり首都圏にはいなかったか」
「そこまで逃亡する余裕は無かったってことですか」
「恐らくは……」
「さすがにそこはロイドだ。俺なら外国へ逃げることも考えるけども、ロイドともなると、予めインストールされた地理情報の範囲内でしか逃走しないか」
「アタシは違うよ」
シンディは敷島を見て言った。
「マルチタイプはな。だから怖い」
「フッ……」
「あ、あの……!」
アリスに手を貸してもらって起こされたエミリーが、よろよろと立ち上がりながら申し出た。
「私にも・協力・させて・ください」
「はあ?アンタ何言ってんの?どうせキールの前じゃモジモジしてるくせに!」
シンディはエミリーを睨みつけた。
「もう・平気。これ以上・迷惑は・掛けられない」
「迷惑掛けたくないんだったら、しばらくの間、シャットダウンしたら?アタシがヤツの首だけ手土産に持って返ってやるからさ!」
「私が・責任取る。私に・やらせて」
「この口だけ番長!」
「おい、シンディ。それくらいにしておけ」
と、敷島。
「実は、エミリーを使った作戦を考えてるんだ。お前の作戦とコラボしよう」
「大丈夫なの?ここを吹っ飛ばす作戦、見事に失敗してるけど……」
「キールがどうして県北にいるかは定かではないが、エミリーがシンディと同様、マルチタイプであることがミソなんだ。取りあえず、行ってみよう」
「?」
[同日21:15.宮城県仙台市泉区のぞみケ丘ニュータウン(架空の町) 敷島、アリス、シンディ、エミリー、平賀]
敷島達は平賀に車を出してもらって行動していたが、キールが潜んでいると思われる場所に行くより先に、仙台市内の、ある場所に立ち寄った。
それは旧・南里ロボット研究所。
元々はのぞみケ丘ニュータウンが造成された際、地域の診療所として建設されたものだが、元から隣の地区に病院があり、集客率が悪かった為、閉鎖された。
それを日本国内における研究の拠点として手に入れたのが南里志郎。
改築して居宅兼研究所として始動した。
その南里が死去した後、今度はアリスがその研究所を使うことにしたが、程なくして閉鎖され、アリスはアメリカ資本の企業に主任研究員として迎えられることになる。
その後は買い手が付かず、放置されたままになっていた。
一応、敷島と平賀が倉庫として借りてはいるのだが、そこに置いてあるものと言ったら……。
「平賀先生、これ、学会で発表できないんですか?ノーベル賞ものじゃないですか?」
「ここにいるマルチタイプが量産できるようになったら、ノーベル賞がもらえ……ないでしょうな。少なくとも、平和賞からは程遠い存在なんで。イグノーベル賞は狙えるかもしれません」
「なるほど……」
その倉庫にあったのは、バージョン・シリーズの素であった。
何故、ヤツらが突然、どこからともなく集団で現れるのかの理由がここにある。
が、機密扱いなので公表は控えさせて頂く。
素を持ち出すと、それを車に積んだ。
「こっちにはテロ・ロボット軍団を使役できるロイドが2体もいます。今度こそ、大成功させましょう!」
「そうですね」
再び車に乗り込んだ敷島達。
のぞみケ丘を出発し、まずは国道4号線を目指す。
「少し、急いだ方がいいかもよ」
と、シンディ。
「何でだ?」
「大雨・洪水警報は元より、土砂災害警報も受信したから」
「シンディ、お前の情報だとキールはそんな山奥には行ってないんだろう?」
「まあね。でも移動はしているから、あまりのんびりしていると、そこへ逃げ込まれる恐れはあるね」
「なるほどな」
実際、車のワイパーは規則正しく動いている。
ハイブリットカーなので、巡航速度で走る分には静かだ。
溜めた電気はロイド達への充電にもなる。
国道の下り線に入った敷島達だったが、道路情報ではそろそろ通行止めの情報が出るようになっていた。
「現場まで辿り着けるかなぁ……?」
「ま、行くしかないですね」
シンディはわざとエミリーの横で、右手をライフルに変形させた。
そして、そこでリロード(弾込め)をした。
更に今度はマシンガンに変えて、これもリロードする。
「アンタも弾の準備をしたら?ショットガンの弾、足元にあるでしょ?」
シンディはエミリーを見ながら言った。
「……心配ない。ショットガンも・マグナムも・全て・弾は・入っている」
「フン……」
「ああ、作戦の方はいいか。シンディには、バージョン3.0軍団を任せる」
と、敷島。
「ちっ、旧型の方か……」
「エミリーは4.0だ」
「かしこまり・ました」
「平賀先生は反対でしたが、いくつか個体をパクって保管していたのが役に立ちましたな」
敷島は横でハンドルを握る平賀に得意げに言った。
「全く。敷島さんには負けますよ……」
平賀は呆れながら、アクセルを吹かした。
大雨降る中、バスは約50分遅れで終点の仙台駅東口バスプールに到着した。
この悪天候の中、50分遅れで済んだのは奇跡としか言いようが無い。
バスを降りると、荷物室に預けた大きな荷物を受け取る。
それは力持ちのシンディが持つ。
「凄い雨だ。早く駅の中に入ろう!」
敷島が促した。
但し、凄い雨といっても、この時点ではまだ傘を差せば何とかなる程度だった。
[同日20:30.東北工科大学・南里志郎記念館 上記メンバーにプラス、平賀太一&1号機のエミリー]
再会した鋼鉄姉妹がどのような反応をお互い取ったか、ご想像にお任せする。
「敷島さんの作戦がオシャカになったので、自爆装置は全て取り外しましたよ?」
と、平賀が肩を竦めて言った。
「すいませんねぇ、ご面倒をおかけして……」
「で、キールの居場所は分かったんですか?」
「何とかね」
シンディが右手を腰にやりながら、平賀に答えた。
「幸い途中で、キールの同型機と会うことができたの。で、そいつのネットワークを使わせてもらって検索した結果、ヤツは宮城県内にいる」
「そうか。やはり首都圏にはいなかったか」
「そこまで逃亡する余裕は無かったってことですか」
「恐らくは……」
「さすがにそこはロイドだ。俺なら外国へ逃げることも考えるけども、ロイドともなると、予めインストールされた地理情報の範囲内でしか逃走しないか」
「アタシは違うよ」
シンディは敷島を見て言った。
「マルチタイプはな。だから怖い」
「フッ……」
「あ、あの……!」
アリスに手を貸してもらって起こされたエミリーが、よろよろと立ち上がりながら申し出た。
「私にも・協力・させて・ください」
「はあ?アンタ何言ってんの?どうせキールの前じゃモジモジしてるくせに!」
シンディはエミリーを睨みつけた。
「もう・平気。これ以上・迷惑は・掛けられない」
「迷惑掛けたくないんだったら、しばらくの間、シャットダウンしたら?アタシがヤツの首だけ手土産に持って返ってやるからさ!」
「私が・責任取る。私に・やらせて」
「この口だけ番長!」
「おい、シンディ。それくらいにしておけ」
と、敷島。
「実は、エミリーを使った作戦を考えてるんだ。お前の作戦とコラボしよう」
「大丈夫なの?ここを吹っ飛ばす作戦、見事に失敗してるけど……」
「キールがどうして県北にいるかは定かではないが、エミリーがシンディと同様、マルチタイプであることがミソなんだ。取りあえず、行ってみよう」
「?」
[同日21:15.宮城県仙台市泉区のぞみケ丘ニュータウン(架空の町) 敷島、アリス、シンディ、エミリー、平賀]
敷島達は平賀に車を出してもらって行動していたが、キールが潜んでいると思われる場所に行くより先に、仙台市内の、ある場所に立ち寄った。
それは旧・南里ロボット研究所。
元々はのぞみケ丘ニュータウンが造成された際、地域の診療所として建設されたものだが、元から隣の地区に病院があり、集客率が悪かった為、閉鎖された。
それを日本国内における研究の拠点として手に入れたのが南里志郎。
改築して居宅兼研究所として始動した。
その南里が死去した後、今度はアリスがその研究所を使うことにしたが、程なくして閉鎖され、アリスはアメリカ資本の企業に主任研究員として迎えられることになる。
その後は買い手が付かず、放置されたままになっていた。
一応、敷島と平賀が倉庫として借りてはいるのだが、そこに置いてあるものと言ったら……。
「平賀先生、これ、学会で発表できないんですか?ノーベル賞ものじゃないですか?」
「ここにいるマルチタイプが量産できるようになったら、ノーベル賞がもらえ……ないでしょうな。少なくとも、平和賞からは程遠い存在なんで。イグノーベル賞は狙えるかもしれません」
「なるほど……」
その倉庫にあったのは、バージョン・シリーズの素であった。
何故、ヤツらが突然、どこからともなく集団で現れるのかの理由がここにある。
が、機密扱いなので公表は控えさせて頂く。
素を持ち出すと、それを車に積んだ。
「こっちにはテロ・ロボット軍団を使役できるロイドが2体もいます。今度こそ、大成功させましょう!」
「そうですね」
再び車に乗り込んだ敷島達。
のぞみケ丘を出発し、まずは国道4号線を目指す。
「少し、急いだ方がいいかもよ」
と、シンディ。
「何でだ?」
「大雨・洪水警報は元より、土砂災害警報も受信したから」
「シンディ、お前の情報だとキールはそんな山奥には行ってないんだろう?」
「まあね。でも移動はしているから、あまりのんびりしていると、そこへ逃げ込まれる恐れはあるね」
「なるほどな」
実際、車のワイパーは規則正しく動いている。
ハイブリットカーなので、巡航速度で走る分には静かだ。
溜めた電気はロイド達への充電にもなる。
国道の下り線に入った敷島達だったが、道路情報ではそろそろ通行止めの情報が出るようになっていた。
「現場まで辿り着けるかなぁ……?」
「ま、行くしかないですね」
シンディはわざとエミリーの横で、右手をライフルに変形させた。
そして、そこでリロード(弾込め)をした。
更に今度はマシンガンに変えて、これもリロードする。
「アンタも弾の準備をしたら?ショットガンの弾、足元にあるでしょ?」
シンディはエミリーを見ながら言った。
「……心配ない。ショットガンも・マグナムも・全て・弾は・入っている」
「フン……」
「ああ、作戦の方はいいか。シンディには、バージョン3.0軍団を任せる」
と、敷島。
「ちっ、旧型の方か……」
「エミリーは4.0だ」
「かしこまり・ました」
「平賀先生は反対でしたが、いくつか個体をパクって保管していたのが役に立ちましたな」
敷島は横でハンドルを握る平賀に得意げに言った。
「全く。敷島さんには負けますよ……」
平賀は呆れながら、アクセルを吹かした。