報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「終わりの始まり」

2015-10-02 19:51:27 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月11日02:00.宮城県仙台市泉区のぞみケ丘 旧・南里研究所 敷島孝夫、アリス・シキシマ、1号機のエミリー、3号機のシンディ、平賀太一]

 キールとの戦いに勝利し、鉄砲水からも逃れた敷島達。
「ここを残しておいて良かったですよ」
「ホントにねぇ……」
 机などの什器はほとんど無くなってはいるが、まだ長椅子などは残っている上、電気や水道も通っている。
「朝になれば豪雨も過ぎるでしょうから、それまでここで休んでいましょう」
「ええ」
「私、シャワー使ってくる」
 アリスは奥の浴室へ向かった。
「お前達も……」
 敷島はバッテリー残量が少なくなったせいか、壁を背に座り込む鋼鉄姉妹に話し掛けた。
「ボカロ用に増設したシャワールームがあるから、それで体の汚れを落として、充電しておけ」
「……だってさ、姉さん」
 シンディは隣に座る姉のエミリーの肩を叩いた。
(俺も少し休もう……)
 敷島は事務所だった部屋にあった長椅子を引っ張り出し、それに横になった。

 東向きの部屋だから、朝になれば朝日で目が覚めるだろう……。

[9月11日04:00.同場所・中庭 エミリー、シンディ、敷島]

「!!!」
 敷島は外から聞こえて来た銃声の音で目が覚めた。
 慌てて飛び起き、窓の外を覗いてみると、そこにいたのはエミリーと……。
「キール!?い、生きてやがったのか、アイツ……!」
 敷島は急いで、部屋の外に飛び出した。

 外では……。
「エミリー、これで終わりだ!もうこれで遠慮することはない!ボク達と一緒に逃げよう!」
 あちこち体の随所に損傷が見受けられる中、どうやってやってきたのだろうか?
 それでもキールはエミリーの元へやってきた。
 エミリーの両手を握る。
 エミリーは、このまままた悪堕ちしてしまうのだろうか。
 だがエミリーは、その手を払い除けた。
「触ら・ないで。あなたは・もう・嫌い」
「そういうこと」
 シンディが後ろからキールに、右手を変形させたライフルの銃口を突き付ける。
「姉さんはねぇ、『執事』のアンタに惚れたんであって、『テロリスト』は嫌いなワケ。分かる?分かるわけないっか!」
「や、やめ……!」
「おい、シンディ!頭部は撃つな!!」

 ゴッ!(シンディ、残った左手で思いっ切りキールの頭を殴りつける)

「ぶっ……!」
 そして、頭ではなく、背中から人間の心臓がある辺りを撃ち抜いた。
「御心配無く。命令には従いますから(^_-)-☆」
 シンディは振り向くと、敷島に軽くウインクした。
「お前、これ、従ったって言えねーだろ」
 マルチタイプの物凄い馬力で殴られたキールの頭部はメチャクチャに壊れ、原型が分からないほどだった。
「目的はメモリーの確保でしょう?頭頂部にゲンコツすると、ちょうどスイカ割りのスイカみたいに、キレイに割れるわけ。で、メモリーチップもこの通り無事」
「まあ……狙ってやったんならいいけどさ。あー、エミリー。いい判断をした。トドメを刺したのはシンディだが、けしてシンディを恨むなよ?」
「平気・です。平気……」
 エミリーは俯いた。
 見ると、右の目から一筋の涙が……。
「こうしてる・場合では・ありません」
 しかしすぐに顔を上げて、涙を拭く。
「キールの・話では・『バージョン1000を起動した』・だから・終わりだ・との・ことです」
「バージョン1000?」
「400以降の形式は聞いたことが無いが……」
 いつの間にかやってきた平賀が首を傾げた。
「アリスは何か知ってるのか?」
「聞いたことないわねぇ……。キールの口から出まかせじゃないの?」
 バージョン400はバージョン・シリーズの大型版。
 自動操縦は元より、コクピットに乗り込んで、まるで特撮モノのロボットのように操縦することも可能。
 但し、製造するのに物凄く時間と費用が掛かるため、数個体しか製造されていないし、殆どが敷島達の活躍や個体の自爆により鉄塊と化している。
 だからテロ組織では、量産しやすい4.0を量産してテロ活動することが多い。
 それに400は図体がデカいので、警察などの治安組織や敵対組織に発見されやすく、隠密行動を必要とするテロ活動に向かないというのもある。
「とにかく、キールのメモリーがカギとなるはずだ。明るくなったら、大学に行って解析しよう」
「その前に、警察に引き渡してもらいましょうかな?」
「って、うおっ!?村中課長!?」
「困りますなぁ。避難するのは当然ですが、避難先はちゃんと教えて頂かないと」
「はは……すっかり忘れてました。てへてへ」
 敷島は得意の誤魔化し作戦を決行した。
「村中課長、自分の大学で解析した方がいいと思いますが?」
 平賀が反対意見を出す。
「警視庁にも専門の部署がある。メモリーの解析くらい、こちらでできる」
「いや、しかしですね……」

 パクッ、ゴクリ!

「ああっ、シンディ!」
 何とシンディ、メモリーチップを飲み込んでしまった。
「あ、アタシも平賀先生に一票かな。クソの役に立たないケーサツに渡すくらいなら、研究機関が解析した方がマシって判断したワケ」
「ほお。では、公務執行妨害の現行犯で逮捕せざるを得んな」
「ふ、フン!アタシは人間じゃないからね、逮捕の法的根拠なんて無いよ!」
「では所有者責任で、平賀教授を逮捕することにしよう」
「ええっ!?」
「シンディ・吐き出せ!」

 ドンッ!(エミリーがシンディの背中を叩く)

「うえっ……!」
 シンディはメモリーチップを吐き出した。
「では、これは証拠物件として押収する」
「くそっ!」

 警察が立ち去った後で、敷島は逆にシンディの行動に感心していた。
(いざとなりゃ、ロイドの腹の中に隠すっていう手もあるんだなぁ……)
 と。
 もしかしたら、キールの体内には他にも何か隠されていたのかもしれない。
 だが警察は、キールのボディも全て持ち去ってしまった。
「いやあ、シンディ。ナイス判断だよ。今後もし何かそういうことがあったら、隠しよろしく!」
「今のは咄嗟に判断したからね。そういえば、もう1つ隠し場所があった」
「なに、どこだ?」
「ここ」
 シンディは自分の股間を指さした。
「人間の女性で言う子宮に当たる部分。だから、マルチタイプは女性型が割合多く作られたの」
「……実際、今何か入ってるんじゃないだろうな?」
「まさか」
「ま、そうだよな」
「!」
 エミリーは敷島達に背中を向けると、ゴソゴソと自分のロングスカートの深いスリットに手を入れ、更にビキニショーツに手をツッコんだ。
「何やってんの、姉さん?」
「俺が作った時、そんな所に何も仕掛けなかったぞ?」
「いえ・違います」
 ショーツを脱いでノーパン状態になり、子宮口から出て来たのは……。
「メモリーチップ!?」
「キールに・抱かれた時・入れられた・ものです。もう・キールは・壊れて・しまい・ました。約束は・無効です。きっと」
「お前、そんな所にそんなもん仕掛けられて黙ってたのか」
「……申し訳・ありません」
「まあいい。これはエミリーの中から出て来たんだから、自分達の物だな」
「いざとなりゃ、弁護士呼びますよ」
「あと……」
「ん?」
 ショーツをはき直しながら、エミリーが言った。
「私の・前の・ボディにも・入って・いますので」
「なっにー!?」
「朝になったら、記念館に行きますよ、敷島さん!」
「てか、今行きません!?」
「アタシ、まだ眠いから明るくなってからにしようよ……」
 アリスは大きな欠伸をした。
「全く……」
コメント (2)
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“新アンドロイドマスター” 「鉄砲洲」

2015-10-02 10:32:58 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月11日00:00.天候:豪雨 宮城県北部某所 敷島孝夫、アリス・シキシマ、1号機のエミリー、3号機のシンディ、平賀太一]

「あくまでも表向きは、鉄砲水を警戒しての封鎖ということにしてある。だが、この天候だ。本当に鉄砲水が来る恐れがあるから、そこだけは注意してくれ」
 封鎖された県道の入口にいたのは村中課長。
 実際はロイド達がドンパチするが故の封鎖である。
 深夜0時を以って作戦を決行するには理由があった。
 それはソフトウェアの更新の時間。
 多くのロイド達が日付の変わる0時に合わせている為、更新中はフリーズしたり、動きが遅くなる(PCが重くなるのと同じ現象)。
 そこを狙った。
 シンディ達にあっては、今回だけ臨時に更新を先送りにした。
 手動設定もできるのだが、財団があった頃に、手動設定であってもまた自動で自動更新に戻すシステムに強制構築されている。
「短期決戦でよろしく。アタシ達も途中で動けなくなる恐れがあるから」
「了解。まさか、本当にこいつらを使うことになるとはな……」
 背後にずらりと並んでいるのは、バージョン3.0とバージョン4.0。
 まるで今にも、敷島達に襲ってきそうな感じである。
 バージョン3.0の武器は比較的貧弱で、中には銃装備をしていない個体もあったが、今回連れて来た個体達にあってはハンドガン程度の武器は装備してある。

 ピンポンパンポン♪
 ピンポンパンポン♪
 ピンポンパンポン♪

「だーっ、るっせ!」
 スマホから緊急警報と称して、豪雨の警戒について警報が鳴りまくっている。
 緊急地震速報も気持ちの悪いアラームだが、集中豪雨の方も聴いてて不快だ。
 もっとも、のんきなオルゴールにするわけにもいかないのは分かっている。
「こっちも短期決戦にしてもらわないと、マジでヤバそうだ。何しろ、すぐ近くが川だからな!」
 ていうか、川の堤防の上に敷島が上がった。
「でーっ!?」
 今にも決壊しそうな勢いである。
「とんでもない所に来ちまった!てか、キールのヤツ、まさかこれが目的で……!?」
 川の向こうの対岸に、自治体の広報車が避難を呼び掛けて走っている。
 それが何故か、タイヤが爆発して電柱に激突した。
「あっ!?」
 キールが橋の上にいて、そこから光線銃を放ったようだ。
「いたぞ!作戦開始だ!」
「お前達、殺っておしまい!」
「アラホラサッサー!」
「ホラサッサー!」
 シンディの指揮で、バージョン3.0達が動き出した。
 中には喋れる個体もいるらしい。
 4.0のバリエーションは比較的少ないが、3.0が1番多く製造されたせいか、バリエーションが豊富である。

 
(大雨の降る中、バージョン3.0軍団を率いて河川敷を進むシンディ)

「エミリーも行けっ!」
{「イエス!」}
 シンディは自らバージョン軍団を率いて向かっていったが、エミリーは最後部にいて4.0達をけしかけるだけである。
「シンディの言う通り、いくら口で言っても、そう簡単に惚れた男に自ら銃は向けられんだろう。だったら、他のロボットに攻撃させる作戦だ。4.0は3.0より強いし、エミリーだけでなくシンディの言うことも聞くからな」
 人間達は、車とその前に設置した臨時の作戦本部にいる。
「橋の上にいるということは、好都合だ。両側から挟み撃ち作戦だ」
{「敷島さん、キールは捜査の為に、せめてメモリーとかは残しておいてくれよ?」}
 通信機から村中の声が聞こえる。
「分かってますよ。生け捕りはさすがにムリですが、頭だけは持ち帰りますから」
 敷島はそう答えた。
 と、その時、橋の方で大きな爆発音が聞こえた。
「は!?」
「えっ!?」
「What!?」
 橋が崩れ落ち、そこに乗り掛かっていたバージョン達が悉く増水した川に落ちて行った。

「離れて!川に落ちる!」
 そういうシンディも、川に落ちかけた1人。
 何とか後ろから、配下のバージョン3.0に抱き抱えられて転落は免れた。
「くそっ!元・執事のくせに!」
 シンディは右手をライフルを変えて、逃げ回るキールに発砲したが、照準が定まっていないため、当たらない。
「姉さん!そっちに行ったから捕まえて!」
{「OK!」}
 返事はしっかりしていたが、本当に上手くやれるか不安で仕方が無い。
「アタシも……って、いつまでも掴んでんじゃないよっ!」
 シンディは自分を掴んでいる3.0に肘鉄を食らわせ、橋の残骸の上を飛びながら、対岸へ向かった。
「お前達!人家に向かって撃つな!!」
 キールに向かって発砲しようとするあまり、住宅街の方に銃口を向けている4.0達に注意を飛ばす。
「あいつに向かって撃つんだよっ!」
 シンディの命令にどよめく4.0達。
 何故なら、そこにはエミリーしかいないからだ。
「デ、デスガ……」
「アタシに今壊されたいか、後でエミリーに壊されたいか選びな!!」
「エエーッ!?」

「あっ、そうか!」
 作戦本部ではシンディの言動に首を傾げたが、敷島だけその意図が分かった。
「シンディも冷たいな」
「何がですか、敷島さん?」
「まあ、見ててください。もし仮にキールに“心”があって、エミリーが好きなままであるのなら、その作戦に引っ掛かります。俺でも考え付かなかった」
 PCの画面越しに、バージョン4.0がエミリーにマシンガンを発砲するのが分かった。

「何をするんだ!?」
 キールがエミリーの前に立って、マシンガンの弾を受け止める。
「って、あれ!?」
 マシンガンは実弾ではなく、模擬弾であった。
「キール!もう逃げないで……!」
 エミリーがキールに後ろから抱きついた。
「騙したのか!?」
「バーカ!アンタが姉さんにしたことに比べりゃ、かわいいもんでしょうよ!ああっ!?」
 そして、銃を構えてシンディはキールに近づく。
「頭吹っ飛ばすのだけはカンベンしてやるからよ!!」
 シンディは両目をギラッと光らせて、キールの胸にライフルの照準を合わせた。
「!!!」
 キールは後ろからエミリーの鼻っ端に頭突きを食らわせた。
 昏倒しかかったエミリーは、それでキールを放してしまう。
「ああっ!てめっ!」
 シンディは後を追った。
「もう許さないからな!!頭吹っ飛ばしてやる!!」

 キールとシンディが走り回る堤防の外側に亀裂が入る。
 そこから、水が噴き出し……。

{「エミリー!シンディ!すんごいマズいことになった!よりにもよって、堤防の決壊する場所がここだって!!やっぱりキールのヤツ、何か狙ってたみたいだ!作戦は中止だ!引き上げるぞ!撤収!撤収!」}
 敷島の叫び声が通信機から聞こえた。
{「おい、シンディ!聞いてるのか!?おい!応答しろ!」}
「……!」
 今、正にシンディの目の前で川の堤防が決壊し、先を走っていたキールがそれに巻き込まれた。
「社長、こっちも堤防が決壊したわ。キールがそれに巻き込まれた」
{「何っ!?」}
「回収は後ででいい?」
{「何でもいい!とにかくお前も離脱しろ!」}
「了解」
 シンディは緊急離脱用の超小型ジェットエンジンを吹かして、その場から離脱した。
(頭吹っ飛ばしてやれなかったのが残念だけどねぇ……。まあ、いい罰の現証だよ)
 敷島達の車が川から離れて行くのが見えた。
「ほらっ、姉さん!いつまでも泣いてんじゃないよ!行くよ!」
 シンディはエミリーを抱えて、再びジェットエンジンを吹かし、敷島達の後を追った。
コメント (4)
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