飛騨の自然と巨木に親しむブログ

飛騨をうろうろぐるぐる歩き、飛騨高山の自然と巨木をご紹介します。あと、宮笠、登山、トレランのネタなども登場します。

一年ぶりの北岳

2011-10-09 23:59:17 | 山岳会
 10月1・2日は、北岳へ行ってきました。

 昨年10月10日に北岳バットレスで起きた大規模な岩盤崩落。そのとき、落石事故で大切な山の仲間を亡くしました。今回はその追悼登山でした。

 早朝4時に集まった山岳会のメンバーは、飛騨を出発。芦安駐車場からジャンボタクシーに乗り、北岳登山口となる広河原には8時半過ぎに到着。標高2000mあたりから上はガスに包まれ、晴れていれば見える北岳もガスの中。当初は大樺沢沿いのルートで遭難現場が見えるあたりまで行こう、と話していましたが、先の台風で沢を渡る橋が壊れ通行止めに。白根御池小屋~二俣経由でとも考えましたが、メンバーの体調・体力を考え、広河原で(ガスの奥にある北岳を心の目で見つつ)追悼式を開くことに。

 河原に降り、山頂が見えそうなあたりに小さなケルンを積み、在りし日の写真、ナイフ、お供え物を並べました。線香を手向け、焼酎を供え、会歌を歌い、黙祷。


 追悼式の後、他のメンバーは(翌日のスポーツフェスティバルのためなど)都合により帰途に。私は事故対応でお世話になった小屋の方への挨拶まわりのため、まずは白根御池小屋へ。小屋まではほどほどの急登。小屋泊りのため荷物は少ないので、あえぎながらも速いペースで登る。途中休憩ベンチで言葉を交わした方は偶然白根御池小屋のスタッフで、去年も小屋にみえたとのこと。縁を感じつつ小屋到着。



管理人さんと受付のスタッフは去年お世話になった方で、ただ救助に出ていただいた方はおられないとのことでした。今年は落石の危険があるため、ほとんどバットレスに行く人はいないらしい。小屋で、遭難したMさんが好きで最後の晩にも飲んだカップ酒を購入。お礼を述べ、北岳肩の小屋を目指します。

 草すべりの登りもほどほどの急登。でも荷物が軽いのはありがたく、高度を稼いでいきました。小太郎尾根に出るとガスから抜け、東(信州)側は快晴。甲斐駒、仙丈もよく見えました。風が強く体が冷えてきたので、昼食もそこそこに肩の小屋へ急ぎました。



 北岳肩の小屋到着。小屋のご主人さんと、(事故対応でお世話になった)息子さんにお礼と挨拶。息子さんは今年、状況確認で2度バットレスに行ったとのこと。お話を伺うと、岩はほぼ安定しているが、いつか崩れそうなクラックがあり、予断を許さないとのことでした。
 ツェルト泊も考えましたが、せっかくなので(かなり冷え込みそうなこともあり)小屋に泊まることに。受付だけ済ますと、山頂方向に。山頂に行くのは10年ぶりくらいになります。山頂には数名の登山者が滞在していました。御池小屋で買ったワンカップを、山頂の標識に供えました。バットレスのほうを覗き込んだり、遠くの山を眺めたりしてしばし滞在。小屋の夕食時間が迫ったので下山。ワンカップは栓を開けずに、そのまま命日に実家の仏壇に供えることにしました。

 

 夕方になると、北岳稜線の東側に湧くガスに、夕方の太陽光が作用して「ブロッケン現象」が見られました。(写真ではわかりにくいですが・・・) 今ではその発生メカニズムが解明されていますが、これを阿弥陀如来と見た、播隆和尚など昔の宗教登山の面から見ると、遭難した人の魂を救うありがたい姿にも見えます。


 この日は夕日もきれいで、西に広がる雲海が赤く染まり、その後は太陽柱(たいようちゅう。別名サンピラー)というちょっと珍しい気象現象も目にすることができました。




 ●1日の行程 広河原発(10:00)-白根御池小屋着(11:40)-発(12:00)-小太郎尾根(13:15)-北岳肩の小屋(13:50) 




 翌2日は、程よく冷えこみました。朝食後5:20に出発。昨日行った山頂を目指します。途中、ハイマツや草紅葉にびっしりついた霜や、岩についたエビノシッポと呼ばれる氷を目にしました。


 昨日もでしたが、三角点には触れず(いつかバットレスを越えて登ったときまでお預けとして)八本歯の頭へ。途中、バットレスをのぞこうと何箇所かトライしましたが、やはり八本歯の頭が全体を見るのには適しています。


 八本歯のコルに戻り、大樺沢へ下降。途中、左に道をはずれ、バットレス基部へ。昨年見た岩が、木々がそこにありました。落石にあってはいけないので、早々に小さなケルンを積んで、昨日他のメンバーから預かったビールを仲間にして飲みました。この風景は、消して忘れないと思います。

 登山道に戻り大樺沢を下って二俣到着。ここにはバイオトイレがあります。行動食を食べていると、どこからか名前を呼ぶ声がしました。振り向くと今は名古屋に住む山仲間が、花束を背負って立っていました。急に来れるようになったので追悼に来たとのこと。せっかくなので(ちょっとだけ疲れていたど)、遭難現場が見えるところまで同行することに。沢の分岐まで行き、そこで別れて下山。白根御池小屋で早めの昼食(豚丼800円)をとり、ゆっくり休んでから下山。

 広河原に到着すると、昨日はぜんぜんだった視界がひらけ、北岳もよく見えました。



 ●2日の行程 肩の小屋発(5:20)-(八本歯の頭往復)-八本歯のコル(6:50)-(バットレス基部)-二俣(8:10)-(バットレス分岐往復)-二俣発(9:20)-白根御池小屋着(9:40)-小屋発(10:10)-広河原(11:15) 




 学生のころ、高山植物の写真を撮りに毎夏通った思い出深い北岳ですが、これからは違った意味で毎年通うことになります。いつかMさんの思いを携えて、バットレスを越え、山頂の三角点に触れたいものです。そのためには、たくさんの課題をクリアし、経験を積む必要があります。来年の今頃には、山頂の三角点に触れることができるようになっているでしょうか。

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