飛騨の自然と巨木に親しむブログ

飛騨をうろうろぐるぐる歩き、飛騨高山の自然と巨木をご紹介します。あと、宮笠、登山、トレランのネタなども登場します。

奥穂高岳南陵~前穂に行ってきました。 2015.7.11

2015-07-26 23:00:20 | 登山
 2015年7月11日、いつかは行ってみたい!と思っていた、奥穂高岳南陵に行ってきました。

 このコースは、2年くらい前の雑誌『岳人』の特集で紹介されていたバリエーションルートで、北アルプスを世に知らしめたウォルター・ウェストンと上条嘉門次が初めて登った事や、途中にトリコニー(もともとは、登山靴の底に取り付けたすべり止めの鋲のこと)と呼ばれる3つの岩峰があることなどを見て、行ってみたい気持ちがふくらんでいたのです。その後山岳会の先輩や仲間が行ったことを聞き、自分も、と思っていたところでした。
 梅雨の合間で仕事の都合もなんとかなりそうな一日、急きょ思い立って行くことにした次第です。こんなことは、飛騨に住んでいないとなかなかできませんね。

 ウェストンらも日帰りしたということで、私も一番のバスで上高地に入り、日帰りを目指すことに(一応防寒着とツェルトは持ちましたが)。

 朝、5:30、平湯バスターミナルから上高地行きバスに乗ります。ちょっと寝不足が気になりますが、気分が高揚してバスの中で寝ることができませんでした。
 上高地バスターミナルで登山届を出し、6:00出発。




 ちょっと朝もやのかかった上高地ですが、すでに多くの方が歩いていました。河童橋を渡り、湿原を右に見ながら木道を進み、岳沢方面の登山道に入ります。
 このあたりになると人は少なくなり、朝のひんやりした空気の中、ぼちぼちと登っていきます。
 途中、左に西穂~奥穂の稜線が見えるところがあり、そろそろまたあのルートも行きたいなーなどと思っていました。
 7:30。ほどほどに疲れたころ、岳沢ヒュッテが見えてきました。その上方にはトリコニーと奥穂高(山頂は見えていないかも?)。




 有料トイレにお金を入れ、小休止ののちいよいよ南陵に向かいます。
 まずはトリコニーをめざし、雪渓を登ります。雪渓を登るのはいいのですが、結構表面が氷化していてキックステップがなかなか効きません。もうちょっとザクザクしてると思い、アイゼンもピッケルも持って来ませんでした。ダケカンバの枝をストック代わりに、スプーンカットの窪みを拾って丁寧に歩きました。




 やがて陽射しが谷にも届くようになりました。滝沢大滝らしい岩盤が右に見えてきます。水は流れていませんが、岩肌に迫力があります。
 ここからは、もっぱら山仲間やネットから仕入れた情報を頭に置きながら、尾根の間のルンゼ(谷)を目指して進みます。雪渓と岩場の隙間が広く難儀をしたネット記事が多く出ていましたが、今回はほとんど隙間がなく、岩場に容易に取り付くことができました。
 ストック代わりのダケカンバとはここでお別れです。 




 取り付いたところには、雪解け直後ということで不安定な浮き石がけっこうあります。一歩一歩、一手一手落とさないように慎重に進みます。
 最初の岩場ですが、ホールドはまあまああり、何とか抜けます。




 その後も、ずっとこのルンゼを詰めていきます。岩場と草地が交互にあらわれ、岩や草をつかんで登ります。
 このあたりから、ぶよの大群がまとわりついてきました。沢登りでもないのに、こんな大群は初めてで、ちょっと立ち止まるとまとわりついてきます。それどころか、口で息を吸うと入ってくるほどとなり、多少息苦しくなりますがタオルで顔を覆って防ぐことに。それでも目のあたりだけは防げないので、休憩のときは顔を草むらやハイマツに突っ込んで(さすがにそこまでは飛んでこれない)休んでいました。
 やがてこのコースでは難所(直登するとですが)の一つとされるスラブ帯に。ここは右寄りから入って正面を左に斜上しようかな、と思って進みましたが、斜上するところで行き詰まり、結局左端の岩とハイマツの境目を登りました。




 ハイマツの藪漕ぎは体力を消耗します。枝が下向きに伸びているので、それを掴みつつかき分けつつ行きます。根元をよく観察すると、ふみあと(?けものみち?)らしき痕跡があるので、そこを探り当てながら進むと多少効率が良いようでした。この辺りは登山でも山仕事でも、コツは一緒ですね。




 ハイマツ帯を抜けると、草地の先にトリコニー一峰が見えてきました。とがった岩が見えるので、とリあえずそれを目指してぐいぐい登ります。




 なるべくとがったあたりをめざし、一峰に何とか到着。10:00。
 下を見ると、上高地からこちらが一望できます。風がでてきて、ハイマツの中でもがいてかいた汗を吹き飛ばしてくれます。ついでにぶよも吹き飛ばしてくれ、この先は悩まされずに済みました。




 二峰に向けて、慎重に、じっくりと進みます。
 振り返ると、一峰があまり尖がった感じなく見えていました。
 



 そこから前方に目をやると、ちょっとした岩の砦のような二峰が見えます。




 二峰は右から巻く感じであっさり登頂。左にはトリコニー三峰が見えますが、稜線からちょっと離れているためパスして、奥穂高岳山頂を目指します。
 しばらくして、トリコニー一~三峰を振り返ります。




 その先、岩場と不安定なザレが続きますが、何とか順調に進みます。一か所、忠実に稜線を行くと切れ落ちたところがありましたが、慎重にクライムダウンして最後2mはジャンプして通過。補助ロープは結局使わずに済みました。
 11:23、前穂から奥穂に向かう一般登山者の姿が近くなったと思ったら、南陵の頭に到着。
 奥穂はもう目の前です。




 11:35、奥穂高岳山頂に到着。数名の登山者がいるだけでしたが、その後続々と奥穂山荘方面から団体さんが登ってくるようでした。
 奥穂は、去年登山靴を新調し馴らしに白出から往復して以来ですが、やはり眺めは最高でした。

 西から北方の眺め。(笠ヶ岳、槍ヶ岳)



 東方の眺め。(前穂)



 南方の眺め。(ジャンダルム、焼岳)




 帰りは、吊尾根経由重太郎新道を通ります。思えばこんな岩場につけた道、鎖やはしごでサポートされているとはいえ、奥穂南陵とそんなに変わらない厳しさですよね…。下りでは、重太郎新道から登ってくる多くの登山者とすれ違いました。




 13:11。10年ぶりに前穂の山頂も一応踏み、記念写真も撮りました。今度は北尾根からここに来れるかな・・・。




 下りは、ちょっと水分・栄養不足(荷物を絞ったので、特に水分がギリギリでした)になりながら、岳沢ヒュッテに着けば!と、疲れが出始めた足で下ります。ザレ場が階段になっていたので、味気ない思いもありつつ、ありがたかったです。
 下りながら、南陵のルートを目で追って反芻しながら焼き付けました。
 


 
 岳沢ヒュッテで、水分、糖分、炭酸を注入。生き返りました。




 帰りのバスの時間を16時に予定していましたが、下りの足が元気なく、間に合うか?という感じに。まあ、最終までには余裕があるので、ぼちぼち行こう、と下りました。
 最終的には、16時3分過ぎにバスターミナルに着いたのですが、ほぼ満席で出発に手間取っていたため滑り込みで乗車でき、平湯まで戻れました。

 ウェストンと嘉門次一行は、荒天の中、上高地から奥穂南陵を10時間40分で日帰りしたとのことです。天気が良く、途中の道も整備されていた今回の山行の約10時間、やはり昔の方、特にガイド役の嘉門次さんはすごいなぁと思いました。
 今も昔も、山仕事で甲斐性のある方はすごいものです。
 そんな人を目指しつつ、次は前穂北尾根かなー。


沢登り研修に行ってきましたー飛騨川水系大坊谷 2015.7.5

2015-07-12 11:27:13 | 沢登り
 7月5日(日)、地元山岳会の沢登り研修で大坊谷に行ってきました。
 ちょっと天気がいまいちの予報でしたが、雨は何とかもちそうです。ただ、気温が上がらないと沢登りは楽しくない(ジャンジャン水に入ろう!という気分が乗らないので・・・)

 沢沿いの林道の奥に車をデポして、10時ころ入渓。

 この先は、時系列で写真を並べてみます。いい大人が水遊び&川遊び&山遊びする様子をご覧ください。

 谷が狭まっているところは水があつまり、水流も激しくなっています。岩の様子を足先で探りながら、慎重に進みます。



 大きな淵の先に2段の滝、一人が偵察に泳いでいき、登り口を探ります。泳いでいるうちは水につかっているので急速に体力が消耗します。あまり長く浸かっていると、低体温症のような症状が出て、体が動かなくなってきます。


 どのコースで登るかは、その人ぞれぞれの判断。山登り(クライミング)の経験と技術と好み(あえて難しいコースを登りたい人もいるので)で自由に進みます。ちなみに、黄色いロープはフローティングロープという水に浮く(けれど強度もある)ロープです。水辺のレスキューでは必需品ですね。


 突破できない滝は、高巻きといって脇の樹林帯をよじ登ります。登ったら降りるのですが、急なところではロープも出動させます。


 夏なら中央突破する滝も、寒くて水量が多い今日は脇を抜けることに。間近を通るときは、かなりの迫力でした。


 本日最後の、大物の滝。私は左岸から越えました。


 水辺にたつ巨木。サワグルミを中心に、ケヤキなど数種類が寄り集まって立っていました。大雨の増水時には根元もきっと水没して洗われるようなところですが、岩を抱きかかえてがっしり立っていました。
 沢登りをすると、こんな人知れず生きてきた巨木たちに出会えるのも楽しみの一つです。


 
 大坊谷は、かつて奥に集落があり、飛騨高山の郷土工芸品(であり現役の生活用具でもある)有道杓子(うとうしゃくし)の生産地でもありました。沢沿いには、おそらくかつてつかわれた道の跡らしき石垣や橋が架かっていたであろう台座などがありました。おそらくはほとんど人力でこれらのものを積み上げた昔の方の労苦を思うと、巨木に向かい合ったときと同じように、深い感慨を覚えました。沢登りの楽しみ(興味深いところ)は、そんなところにもあります。


 夏に向け、今年はどんな沢を登ろうかなー!