飛騨の自然と巨木に親しむブログ

飛騨をうろうろぐるぐる歩き、飛騨高山の自然と巨木をご紹介します。あと、宮笠、登山、トレランのネタなども登場します。

宮笠講座、第2回(12.16)

2013-12-16 23:09:28 | 宮笠の製作
 今日は、第2回の宮笠講座がありました。

 雪が積もる中、受講生の方が集まり、熱心に学ばれました。


 
 今日は、笠の本体を編み始める工程の「いかだ作り」という作業をしていただきました。桧やイチイの笠ヒデを縦横に編み、文字どうりいかだのような長方形の形にします。
 編む過程で、編み目をひとつづつずらすところなどが、初めての方はわかりにくかったようですが、問坂さんの指導により、皆さん順調に編めるようになりました。



 終盤には、次回受講者が取り掛かる「辻つくり」の工程を見学。平面のいかだが、見る見るうちに円錐になる不思議を目にしていただきました。
 皆さん驚いていましたが、次回は皆さんが自分の手で作るんですよ!

 次回講座は年明けになりますが、受講者の方にはお年玉代わりの宿題(?)となったようです。


日本各地の笠・佐治の板笠(鳥取県)・その2

2013-12-16 00:32:44 | 笠の資料
 さて、宮笠との比較を交えて、佐治の板笠をじっくり見てみましょう。



 前回も掲載した全体の写真です。まず目を引くのが、円錐形をしていない(中心部は円錐形ですが周りは平面)ことと、六角形の外周です。

 宮笠など多くの笠は、円錐形をしています。これは、かぶりやすさもあると思いますが、ひとつには強度を出すために立体構造にしているのかなとも思います。
 板笠は頭に乗る部分以外は平面になっていますが、材料にカエデの仲間(ウリカエデかウリハダカエデなど)を使っていて、ヒデ自体にある程度強度があるため、平面にしてもしっかりしたつくりとなっています。

 六角形の外周も、他にはない特徴です。普通は竹を輪にして編みつけ、強度を出しているので、必然的に丸い形になりますが、先述したように板笠のヒデは強度があるため、竹で補強しなくてもある程度の強度があります。



 ふちはこのように折り返してとめているだけです。桧のヒデでは、おそらく強度が足りず、何かに当たると痛んでしまいそうですが、カエデのヒデは丈夫そうです。



 中心部は、宮笠に似ています。カンバ(ヤマザクラの皮)で補強するところも、(2本か3本かの違いはありますが)似ています。端をカールさせているのは、デザイン的に愛嬌がある感じを受けますが、何か意味があるのかもしれません。
 よく見ると、ちょうど円錐部分はベースの笠に被せ笠が乗っていて、2重構造になっています。強度のあるヒデを二重にしているので、円錐部分はかなり丈夫です。



 中心部を裏返すと、ツルが円形に編みつけてあり、頭に固定するための紐を結ぶようです。宮笠でいう「緒たて竹」ですね。
 それと、見てわかるように宮笠には放射状にある骨が、板笠にはありません。それでもヒデの強度のおかげで、しっかりした笠になっています。(そのため、宮笠に比べると多少重くなっています)
 板笠に関する記述で、休憩時に尻に敷くこともあったとのことですが、この強度があれば納得です。

 

 編み目は、基本は宮笠と同じで「3枚綾」。直行するヒデを3枚くぐって3枚上を通る、と繰り返す形式です。

 ですが、よく見ると六角形の外周のうち長めの3辺のふち近くは、2枚飛ばしの「2枚綾」になっています。宮笠でも、セミ笠の外周部分は2枚綾になるのですが、問坂さんの話では、2枚綾は編み目がしっかりするので緩みにくいとのことなので、板笠でも緩みにくくしっかり編むために2枚綾にしているのかもしれません。


 ヒデは、一本一本裂いて作るため太さが多少異なっていますが、厚みはそろっています。裂くときに力加減に気を配らないと、こうはいかないでしょう。宮笠のヒデも昔は手作業で作っていたとのことなので、どんなヒデになるのか興味があります。


 今回は、実物を目にして気がついたことなどを書き綴りましたが、シンプルな造りや今でもほぼ手作業だけで笠が作られているなど、とても興味深い笠だと思いました。各地の笠の原型に近いような感じもします。

 どのようにして板笠が作られるようになったのか、また他の地域の笠とのつながり、材料のとり方や加工など、気になる点がたくさんあります。佐治町では、製作技術をまとめた資料を作成中とのことなので、それが完成したらぜひ見てみたいものです。
 あと、できたら現地の製作者をたずねて、お話を聞いたり製作風景を見学できたら、と思いました!


日本各地の笠・佐治の板笠(鳥取県)

2013-12-15 00:59:15 | 笠の資料
 宮笠の製作技術学んでいると、完成した笠を見る時のポイントが、以前と明らかに変わってきます。

編み目がどのようになっているか、骨はどのようにさしてあるか、ふちはどのように処理しているか、頭にどのように被るか、などなど。

 それは、宮笠以外の笠を見るときも同じで、日本各地に残る笠、安売りしてある外国製らしき竹の笠など、宮笠との比較で、造りを見てしまいます。

 ネットで「桧笠」と入れて検索すると、各地の笠が出てきます。一番情報が多いのは、お隣長野県木曽地域の笠、その他には、和歌山県の「皆地笠」、石川県の「白山桧笠」、兵庫県「道谷笠」、高知県本山町の桧笠などが紹介されています。それぞれ画像で見るだけですが、宮笠と同じようなところ、また異なるところがあり、興味深く思います。

 それら他の笠の中でもちょっと変わった笠が「佐治の板笠」です。鳥取県佐治町に伝わる笠で、2010年に国の文化財指定を受けている、由緒正しい笠。変わっているのは材料。ヒノキやイチイなどではなく、カエデの仲間(ウリカエデ、ウリハダカエデなどと思われる)を材料にして、一本一本の編む材料を、手作業でつくっているとのこと。

 カエデの仲間は、目にそってきれいに裂けやすいので、籠の材料にするのは知っていましたが、さらに薄く細く裂いて、笠の材料にするのです。もっとも、宮笠も大正時代に笠ひでを製造する機械(ロータリーレーサー)が導入されるまでは、湯につけて柔らかくしたヒノキを裂いて、笠ひでを作っていたそうなので、むしろ原型に近いのかもしれません。(と言うか、いつかは手で裂いて笠ひでを作り、笠を編んでみたい、と思っていますが・・・)

 手で材料を作る・・・と聞いて、どうしても実物を手に入れたくなりました。居ても立ってもいられなくなり、役場を通じて製作者の方と連絡を取り、今は一般に販売をしていないところでしたが、お手元にある笠を譲っていただきました。

 それがこの笠です。



 普通の笠とは、一見して違います。これまでに見たことのない形です。「エーこんな笠あるの!?」と言う感じですね。(細部の紹介は次回に・・・)


宮笠講座・第一回(2013.12.2)

2013-12-02 23:46:46 | 宮笠の製作
 久々の更新、なんとなく燃え尽き感に蝕まれ・・・。

 さて、気を取り直して、3年目を迎えた宮笠講座、今年度の講座が今日第一回を迎えました。

 講師は今回も、高山市の無形文化財『宮笠』の継承者である、『問坂義一さん』です。

 過去の受講生は中級講座の「紅白」を作成、初めての方は初級講座の「桧笠」を、それぞれ2枚ずつ作っていただきます。2枚同時に作っていただくことで、経験の厚みを増して覚えやすくしようという目論見です。

 受講生は過去の受講生に新規が加わり、25名となっています。これだけになると、全体に目が行き届きません・・・。ちゃんと理解されているか、材料はいきわたっているか、進み具合はどうかなどなど。

 ただ、過去の受講生が、先輩として新人さんの面倒を見ていただけるので助かる面があります。

 毎月2回で3月まで、計8回の講座。今日は前半オリエンテーション、後半は竹の部材(さし骨、輪竹、おたて竹)の加工と、最後に縫い付ける縁の編み方を学んだいただきました。


 いずれも今日だけで作業が終わらないので、作り方を覚えて帰って、次回までに一工程を仕上げてきていただく形をとっています。


 さてさて皆様、次回からはいよいよ笠本体の編み方を学んでいただきます。がんばって!