島崎藤村 「破戒」
出身者に対する差別意識がまだ色濃く残っている時代
丑松は父親からの戒めにより、出身ということをひたすら隠して教師として生活していた。
一方で差別と闘う先輩への尊敬の念を捨てきれず、嘘の生活を続ける自分自身に嫌悪感を抱くようになる・・・
さすがに名著です!
丑松の心の葛藤が見事に描かれていて、ぐいぐいと引き込まれました。
バットエンドじゃなくて良かったです!!
田山花袋 「蒲団」・「田舎教師」
こちらも名作ですが、「破戒」とはその内容が180度も違います。
妻子持ちの中年作家が女学校を出たばかりの弟子を持つ事になる。
しだいに、その弟子に対して恋心を抱き葛藤する話です。
中年男の赤裸々な内面感情が描かれています。
現代でも良くある話ですが、当時の倫理観が伝わってきます。
最後に題名の「蒲団」の意味が判りますが・・・
ちょっと女々しいな~!!
恋や文学、将来を語り合った学生時代。
やがて友人たちはそれぞれの夢を叶える為に進学の道を歩みだす。
一方、自分は貧しい家を支える為に、やむなく片田舎へ教師として赴任する事に。
学生時代に抱いていた理想と現実のギャップに悩む日々が続く・・・
美しい田園風景の描写とともに主人公・清三の心の葛藤、焦燥感、寂寥感がひしひしと伝わってきます。
埼玉県の羽生、行田、弥勒が舞台ですが、当時はかなりの田舎だったんでしょうね。
この物語の最後は切なかった!!
坂口安吾 堕落論
「堕落」こそが、日本人自らの本質をかえりみるためには必要だと説いた評論作品です。
戦後間もない時代に書かれた作品とは到底思えません。
当時としてはかなり過激な考えだったんでしょうね。
若い頃は自堕落な生活にあこがれた事も多少なりともありましたが・・・
Hさん、根が真面目ですから!!
泉鏡花 「高野聖」・「夜叉ヶ池」
こちらは、泉鏡花の妖しの世界を堪能です!!
Hさん、暇に任せて漫画を読んでいますが、古典と言われる小説も並行して読んでいます。
最近読み終わったのが、小林多喜二の「独房」
「蟹工船」に続いて読みました。
獄中死した小林多喜二ですから、暗く重苦しい話かな?と思いましたが・・・
意に反して独房でのエピソードがユーモラスに描かれています。
壁を隔てた向こう側にいる同志たちとの連絡手段が咳やくしゃみならまだしも、おならを使うなんてまったく笑えます。
そんなユーモアの中にも自己の信念を曲げない気概が感じられる一冊でした。
そして、芥川龍之介「蜘蛛の糸」、「羅生門」、「杜子春」、「地獄変」、「鼻」、「河童」です。
短編が多いのでサクサク読了しました。
殆どの作品は遠い昔に読んだ記憶がありますが、改めて読んでも人生訓が詰まっていて深いです。
徳富蘆花 「不如帰」
これは題名はもちろん知っていましたが、読んだ記憶がないです。
読んでみると、いやはや完全に昼メロの世界でした!
日清戦争(明治27,28年)の戦火が近づく頃、海軍士官・川島武男と片岡陸軍中将の娘・浪子が結婚して、伊香保で幸せなひとときを過ごす。
しかし、幸せは長くは続かない。
浪子は肺病にかかり、武男が軍務で不在中に、「家」を気にする義母の手で離縁されてしまう・・・。
明治時代の悲恋物語ですが、読んでいるうちに見事にハマってしまいました・・・
ラストは通勤電車の中で不覚にもじんわりと涙が・・・
歳を取ると涙もろくなるな~!!
続いて、同じ 徳富蘆花の「熊の足跡」。
熊とくれば北海道でしょう!と思って読み始めたら、その通り北海道の話でした。
しかし、熊との闘いではなく、単なる北海道旅行記でした。
昔の北海道はこんな感じだったんだろうな~と想像ながら、サクッと読了です!
古典・名作シリーズはこれからも読み続ける予定です。
老眼が進み文庫本の小さな活字を追いかけるのが辛いHさん。
最近はiーpatで無料漫画ばかり読んでいました。
漫画も飽きてきたので、たまには小説も読んでみるかと云う事でe -bookで無料小説を検索。
そういえば、最近、太宰治の小説が若手俳優主演で映画化されていたな〜。
まずはそれを読んでみよう!
「人間失格」
この小説は遠い昔、学生時代に読んだ記憶がありますが、その時には何が面白いのかさっぱり分からなかった・・・。
歳を取って改めて読み返してみると、主人公の大庭葉蔵の気持ちが解らなくは無いですね。
しかし、こんな生き方には全く共感は出来ない・・・ちゃんと働けよ!
ただ、昔も今も、こんな男が何故か女性にモテるんだよな〜!
”人間失格”かどうかを決めるのは、やっぱり自分自身です。
続いて、 「斜陽」
貴族の凋落の物語・・・
あまりにも寂し過ぎますね~。
貴族の家に生まれなくて良かったな~!?
結末に少しビックリ!
さらに、小林多喜二の「蟹工船」。
こちらも高校生の時に読んだかも?
読み返してみると、北海道開拓時代の遠洋漁業の悲惨さが痛い程伝わってきました。
現在でもブラック企業が良く話題になります。
いつの時代も搾取する側とされる側の構図は変わりませんね。
希望が感じられるラストが救いです。
誉田哲也 著 「硝子の太陽R-ルージュ」を読みました。
祖師谷で起きた一家惨殺事件。
深い闇の中に、血の色の悪意が仄見えた。
捜査一課殺人班十一係姫川班。
警部補に昇任した菊田が同じ班に入り、姫川を高く評価する林が統括主任として見守る。
個性豊かな新班員たちとも、少しずつ打ち解けてきた。
謎の多い凄惨な事件を前に、捜査は難航するが、闘志はみなぎっている―
そのはずだった・・・。
久しぶりに姫川シリーズです。
ストロベリーナイト、シンメトリー、ブルーマーダー が面白かったので期待して読みました。
相変わらず殺人描写がグロいですね~!
ここまで書くか!!と思うぐらいです。
今回の物語は警察内部の人間関係に重きがおかれていて、捜査そのものがなかなか進まないのが少し興ざめでした。
しかし、最後にまさかの展開が待っていて・・・
やっぱり、期待を裏切らなかった!
山崎豊子 著 「約束の海」を読みました。
海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と釣り船が衝突、多数の犠牲者が出る惨事に。
マスコミの批判、遺族対応、海難審判…
若き乗組員・花巻朔太郎二尉は苛酷な試練に直面する。
真珠湾攻撃時に米軍の捕虜第一号となった旧帝国海軍少尉を父に持つ花巻。
時代に翻弄され、抗う父子百年の物語が幕を開ける。
自衛隊とは、平和とは、戦争とは。
山崎豊子さんの未完の遺作とは知らずに読み始めました。
1988年7月23日横須賀港沖で海上自衛隊潜水艦なだしおと、民間の遊漁船第一冨士丸が衝突し乗客30名が死亡した。
この事故を題材に主人公・朔太郎が旧海軍士官の父の足跡などを通して、防衛のあり方や戦争と平和を考える・・・。
3部作の内の1部です。
何かと自衛権が問題となっている昨今、著者はこの物語を通して何を語りかけたかったのか・・・
本来なら2部、3部と続く所を読めずに本当に残念です。
ご冥福をお祈り致します。
北川 恵海 著 「ちょっと今から仕事やめてくる」を読みました。
ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうとしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。
同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。
なぜ赤の他人をここまで気にかけてくれるのか?
気になった隆は、彼の名前で個人情報をネット検索するが、出てきたのは、三年前に激務で鬱になり自殺した男のニュースだった――。
映画が公開されると云う事で読んでみました。
内容的にはほぼ予想通りでしたがラストのオチがチョット驚き。
軽いタッチで書かれているのですぐに読み終わります。
こういうライトノベルが受ける時代なんですよね~!
人間到る処青山あり!です。
無理していやな職場にしがみ付いている必要は無い訳で、若くて選択肢が沢山ある内に転職を考えるのは悪い事ではありません。
勤続20年を過ぎても転職を考えている人は山ほどいますから・・・。
要は自分の目標をどこに持つかがそこで頑張れるかどうかの分かれ目ですね。
日々の生活に流されてちゃいかんな~!とおじさんも思いました!
貫井 徳郎 著 「愚行録」を読みました。
幸せを絵に描いたような家族に、突如として訪れた悲劇。
池袋からほんの数駅の、閑静な住宅街にあるその家に忍び込んだ何者かによって、深夜一家が惨殺された。
数多のエピソードを通して浮かび上がる人間たちの愚行とは・・・。
映画化されたと云う事で読んでみました。
一家惨殺事件をめぐって、様々な関係者がインタビューに答える形で物語は進みます。
一見幸せに見える家族の裏側の姿が徐々に明らかにされてきます。
果たして犯人は? その動機は?
ストーリーが在り来たりので中だるみ・・・
結末にも意外性が無く、まったくの期待外れでした!
映像で観た方が面白いのかも?
葉室麟 著 「峠しぐれ」を読みました。
岡野藩領内で隣国との境にある峠の茶店。
小柄で寡黙な半平という亭主と、「峠の弁天様」と旅人に親しまれる志乃という女房が十年ほど前から老夫婦より引き継ぎ、慎ましく暮らしていた。
ところが、ある年の夏、半平と志乃を討つために隣国の結城藩から屈強な七人組の侍が訪ねてきた。
ふたりの過去に何があったのか。
なぜ斬られなければならないのか。
話は十五年前の夏に遡る―。
久しぶりの時代小説。 葉室麟さんの作品を読むのも久しぶりです。
相変わらず読みやすいですね~!
まるで映画を観ているように次々と映像が頭に浮かび、すいすい読み進めました。
そして、泣かせます!
登場人物それぞれに事情がありますが、やがて溢れだす夫婦愛、親子愛・・・
一体彼らの過去に何があったのか・・・
あっと云う間に読了しました。
深緑野分 著 「戦場のコックたち」を読みました。
1944年6月、ノルマンディー上陸作戦が僕らの初陣だった。
特技兵(コック)でも銃は持つが、主な武器はナイフとフライパンだ。
新兵ティムは、冷静沈着なリーダーのエド、お調子者のディエゴ、調達の名人ライナスらとともに、度々戦場や基地で奇妙な事件に遭遇する。
題名と表紙から、てっきり料理人の戦場ならではの苦労話かなと思って読み始めましたが・・・
まず、開けてビックリ! 文章が1ページに上下2段になって書かれています。
昔の名作もこんな風に書かれていたな~!
これは読み終わるまでにかなり時間がかかりそうだ~! 面白いのかな~?
で、その内容はと云うと・・・これまたビックリ!
ノルマンディー上陸作戦、オランダ戦線、ユダヤ人強制収容所の解放など
第二次大戦の戦場を舞台にした米軍特技兵たちのミステリー風小説でした。
読み進める内に戦場の悲惨な様子が先に頭に浮かんで、肝心の謎解きの方はどうでも良くなってきた・・・
何故に日本人の若い女流作家が、このような舞台を背景にしたミステリー小説を書こうと思ったのでしょう?
最後まで作者の意図とはかみ合わず、中途半端な印象が抜けないままに読み終えました。
残念ながら自分的にはハズレでした!
住野よる 著 「君の膵臓をたべたい」を読みました。
ある日、高校生の僕は病院で1冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。
それは、クラスメイトである山内桜良が密かに綴っていた日記帳だった。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていた・・・。
強烈なタイトルに惹かれて読んでみました。
タイトルだけだとホラー小説か何かと思われますが、その中身は高校生の少年と後1年余りの寿命と言われた少女との切ない恋物語でした。
今流行りの典型的なお涙頂戴系の青春小説ですが、登場人物達の会話のやりとりが軽快でなかなか面白かった!
だいたいの展開は読めましたが、ラストは流石に判らなかったな~!
そう来たか! 確かに何があるか判らないのが世の中です!
日々を大切に生きよう!!
なんて・・・人生残り少なくなったおじさんも思った次第です!