「莉の対」のKV(キービジュアル)
御坊市名田町上野出身で俳優の田中稔彦さん(40)=東京都=が初監督・脚本手掛けた長編映画「莉の対」(れいのつい)が、オランダの第53回ロッテルダム国際映画祭のメインコンペであるタイガーコンペティション部門にノミネートされた。同部門に邦画で正式出品されるのは非常にまれ。同映画祭は来年1月25日から2月4日まで開催され、全世界から集まった作品がグランプリを目指して戦う。
田中さんは、日高高校卒、滋賀大学経済学部に在学中、米国ミシガン大学に留学、卒業後は三井住友銀行に就職。その後、俳優に転身し、舞台を中心にしながら、映画やテレビなどマルチに活動し、100を超える作品に出演。2022年5月に(株)NoSaint.&Bloomを設立し、代表取締役社長に就任。初年度の業務で、上映時間3時間10分の長編映画「莉の対」(れいのつい)を自身で脚本、監督、出演、編集を手掛け、制作した。
「莉の対」は自然の美しさと対比されるように人間模様を描いた作品。自分の存在の希薄さを感じながら生きている光莉。ふとしたきっかけで1枚の写真に心を惹かれ、その写真を取った真斗に自分のポートレイト写真を撮ってくれないかとメールで依頼。失聴者であることを伝える真斗の返信。光莉と真斗、それぞれを取り巻く人間関係が少しずつ影響を与え合い、そしてもろく崩れていく。
田中さんは、舞台俳優でありながら、コロナ禍で劇場が閉鎖されるなど変化を余儀なくされていた時代に「待っていたらだめだ。周りと同じことやっていてもらちがあかん!」と決意。メインキャストは全員オーディションで決定し、サブキャストに至るまでスポットライトが当たる内容にした。
田中さんは「スタッフもプロではなく、新しいことにチャレンジしてみたい!畑違いだけど映画をやってみたい!と名乗り出てくれる人たちで構成しました。関わってくれたキャストやスタッフの人生を切り開くための一助になれば」と。
「莉の対」は商業的な映画にするつもりはなく、アート作品にも偏らず、どこにでも居るような問題を抱えている人たちに焦点をあてた。田中さんは「人間の葛藤、もろく汚く生きる人間の弱さ、それと対比するように自然の美しさ、厳しさ、暖かさを描きたかった」と話している。
同映画祭は1872年に始まり、毎年12日間の会期中に約600作品が上映され、来場者数は30万人を記録するほど。近年では世界三大映画祭に次ぐ重要な映画祭の一つとされる。毎年、世界各国から数千以上の応募がある中、今年の同部門では14作品が正式出品。邦画でみると、この10年間で2本しかノミネートされていないという。「莉の対」は来春から国内でも上映予定となっている。
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