平成22年には、ユーカリ栽培の地元川辺西小の児童がコアラと対面も
大阪市立天王寺動物園で飼育されている最後のコアラが、イギリスの動物園に貸与されることになり、日高川町の紀中森林組合(旧川辺町森林組合)と33年続いてきたエサとなる「ユーカリ」の提供が途絶える。同組合は、昭和61年からユーカリを栽培し、同動物園が必要とするユーカリの約3分の1を提供してきたが、皮肉にもエサ代の負担から同園ではコアラの飼育断念の方針を決めていた。
日高川町のユーカリは、旧川辺町時代から矢田地区を中心に最盛期は約1万本を栽培。現在は、千津川、土生、小熊地内など10カ所の園地を借りて約8000本を栽培しており、周年で年間5000本の切り枝を生産している。旧川辺町森林組合が昭和61年から天王寺動物園に出荷。コアラの飼育数が7頭以上ある時期などは多くのユーカリが出荷されていたが、飼育数が減少し、現在は1頭だけの飼育で出荷量は減少。その一方で、平成22年にはユーカリの葉を提供する縁をきっかけに、川辺地区の児童が天王寺動物園を訪れて贈呈したことなどもあった。
同園ではコアラ1頭に年間約3000万円以上のエサ代が必要で、全動物のエサ代の約3割を占めるほどの高額だという。このため園を管理する大阪市が4年前にコアラの飼育から撤退を決断。日高川町からも一時は7頭のコアラに提供していたが、現在では1頭になり、同園向けのユーカリの出荷量も毎週2回、2~3箱(1箱15本入り、約5キロ)まで減少した。
その一方で、同動物園などを通じて東京の多摩動物公園へサンプル出荷などを重ねて提供を働きかけ、3年前から正式に出荷が始まった。多摩動物公園では3頭のコアラが飼育されており、現在は週2回、3箱程度のユーカリを提供。10年契約で提供することが決まっている。
また3年前には、天王寺動物園から香港のアミューズメント施設「オーシャンパーク」にコアラが貸与されたのをきっかけに、現地のユーカリに慣れるまでの契約で、初の海外出荷が行われ、川辺産のユーカリが海を越えて香港に届けられた。
約30年間、旧川辺町森林組合が生産してきたユーカリは、天王寺動物園だけに提供されていたため、同動物園の飼育数減少でユーカリ栽培の継続も危ぐされていたが、多摩動物公園という新たな提供先を確保。同公園ではコアラの赤ちゃんの誕生も期待されているほか、国内の他の動物園に出荷先を模索しており、今後も積極的にユーカリ栽培に取り組んでいく。
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