kotoba日記                     小久保圭介

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バスターミナルの椅子に座って

2018年12月29日 | 生活詩
バスターミナルの
椅子に座って
パンを食べ
お茶を飲みながら
ずっと話していた
ところかまわず

バスターミナルの
椅子に座って
いくつものバスを見送り
いくつもの服が通り過ぎていった
話すことと聞くことは
ほぼ同時におこなわれ
聞きながら
話すことを組み立て
話しながら
次に聞かされる言葉を
想像した

バスターミナルの
椅子に座って
想像した言葉は
もちろんされず
問と答えは混じって
生きることの
拡大は
加速して
充満した

バスターミナルの
椅子に座って
わたしたちの目は
バスや人
わたしたちの鼻は
排気ガスの匂いを
嗅いではいただろうけれど
そういう情報は
いっさい脳で映像化されず
無意識の領域に
払い落され
交わす言葉と
言葉のイメージ作りに
脳は電気信号を送り
映像化することに
やっきになっていた

バスターミナルの
椅子に座って
バスは間違いなく
わたしたちの前を通り過ぎ
アナウンスが聞こえ
人々が並ぶ姿を
目は捕らえていたというのに

バスターミナルの
椅子に座って
膝から寒さを感じたけれど
それも
脳は払い落した
加速する言葉
言葉にしろと
急がせる思考
わたしたち
ずっとどれだけでも
話していただろう

バスの時間が
決められていて
良かった
でないと
風邪をひく

バスターミナルの
椅子に座って
比喩で使った目がみていたもの
それは黄色い点字ブロック
その先はいったいどこに向かっているのか
そういう比喩を
かろうじて
使えたことが救い
もう一つは
矢印のマーク
これも比喩で使った
矢印の先を疑うことで
未知にすることで
わたしたちは
どこにでもゆける

バスターミナルの
椅子に座りなおして
脳で考えることと
目が見たものを結合する
それが
実感だ
実感こそが
大事

わたしたちは
言いたかったのかもしれない
実感は常に
皮膚の記憶に刻まれ
あの寒さだけは
忘れず
脳内で組み立てた
言葉の像は
消えてゆく

バスターミナルの
椅子に座って
わたしたちは
一つのことを
伝えるために
たくさんのことを
引用し
装飾した

寒さを忘れ
ろくにパンも食べずに


コメント
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