kotoba日記                     小久保圭介

言葉 音 歌 空 青 道 草 木 花 陽 地 息 天 歩 石 海 風 波 魚 緑 明 声 鳥 光 心 思

棘や猫たち

2009年10月10日 | 生活
たぶん、近くにあるデザイン学校の生徒さんでしょう、
全部で五台の車椅子に乗って、体験学習をしていました。
もう一人がそれぞれの横に沿って歩いて、
ノートに、車椅子に乗っている学生の発言を、
記録していました。
一応に、みんな初めての体験なのでしょう、
真面目な気分と楽しい気分が混ざった表情で、
降り注ぐ太陽の下、
横断歩道を注意深く渡り、
東に列隊は向かいました。

青い空、
聡怩オていると、
硬い緑の葉っぱが落ちていたので、
胸に挿して歩きました。

どこでどうしたことか、
指に棘が刺さっていて、
オジにピンセットを持っていないか、
と訊くと、
「こんなもんはな!」
と言って、
安全ピンでえぐろうとするので、
「判ったから、自分でやるけん」、
と僕は安全ピンで、
棘を取りました。
そして、バンドエイドをオジはくれて、
「この後処理が大事なんだ、オレは棘なんかいつも刺さってる」
と、オジは豪語しました。
うーん、確かに、オジは、
素手でいろんなものをつかんだり、とったりしているので、
そりゃあ、棘も喜んで、
「あ、やっと刺されるぞ」
と喜んでいるのかもしれません。
でも、オジは、
道があれば進むだけ、
棘が刺されば、ピンで抜くだけ、
という人。
棘はまた刺す誰かを見つけなければいけません。
棘を抜くと、風で飛んでしまうぐらい、
本当に細くて小さいです。
だのに、
指に刺さると、
刺殺的な存在感でもって、
僕らを狼狽させます。
それが面白いなー、と思います。

ガリバー旅行記を書いたアンデルセンは、
大きな体だったらしいけれど、
指に棘が刺さってわずかな血が出ただけでも、
失神したとかしないとか。
「体の大きいわりには、
それほどにも繊細であった」、
と、アンデルセンに自分を投影した、
稲垣足穂が、書いていました。

足穂のタイトルで、
「生活に夢を持っていない人々のための童話」
というがあります。
その緑色の本の題を図書館で見るたびに、
僕は何か、当時は、救われた気分になっていました。


今日も夜は、自転車を押して、
歩いて帰りました。
家の近くの道路で、
白い猫と目が合い、
白い猫と、もう一匹の白い猫が、
僕についてきました。
猫が笑うというのが、
本当かどうかは判らないけれど、
あれはどう見ても、笑っている顔です。
僕は猫が好きですけれど、
驚いたことに、白い猫たちが、
追ってこないところまで来ると、
今度はトラ猫がついてきました。
僕はマタタビでも、不意に、
もしかしたらリュックに入れているのかもしれない、
と本気で思いました。
早足でついてくるトラ猫をふり返ると、
トラ猫はそこで止まります。
一定の距離を猫は保ちます。
座って、毛を舐めてみたり、
彼らは見え透いたことを、
やります。
こっちも、座って、
「おいで」と言っても、
トラ猫は笑うばかり。
馬鹿らしくなって、
また歩くと、
早足でついてきます。
なんて楽しい夜なんだ、
「私は猫ストーカー(だったかな?)」という映画を、
見たくなったり、
すこぶるうれしい気分で、
ハンバートを聴きながら、
猫と遊びながら、
やっと家に帰りました。

帰って弁当箱を洗っていると、
友人が遊びにきました。
僕は彼から数年前に、
お古、といっても、数回しか着ていないジャージ上下をもらったことがあって、
それを愛用しています。
「あんなに大事に着てもらって」
と友人は言い、
また新しいジャージをくれました。ありがとう。
これでまた冬がひとつ、楽になります。
それから、アメリカのロックの映像を、
夜遅くまで見て、あーだ、こーだ、
と僕らは言って、馬鹿話をして、
夜は更けてゆきました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする