『アテルイ』
の表記に興味津々になりつつも、
『火怨』
というファンタジーなタイトルに多分に躊躇しながら購入してみたところ、
期待を裏切って、
実におもしろい。
間違いなく傑作といえる。
歴史の教科書年表で、
「初代征夷大将軍 坂上田村麻呂がアテルイの乱を制圧」
という一行でしか接点のなかった人物なのだが、
まぁ今まで知らなかったのが恥ずかしくなるほど魅力的な人物像がうきあがる。
難をいうのであれば、
東北の地理がわからないと、
蝦夷の戦略の半分も理解できないということだ。
次回改訂の際には是非、
地図をつけて頂きたい。
余談ながら、
あまりに得体のしれない地名が多すぎたため、
ネットで調べようとしたところ、
アテルイの乱のオチにヒットしてしまい、
愕然とする悲劇に見舞われた。
そういう意味でもやはり地図は添付してもらいたい。
とはいえアテルイに関する資料はあまりにも少ないとされており、
どこまで史実にのっとったものかは疑問。
したがって分野的には冒険小説となってしまうのだろうか。
しかしながら物語のおもしろさは間違いのないところ。
ページをめくる手が止まらず、
しかも最後のページが涙でかすむ本は、
久しくお目にかかった記憶がない。
2008年度俺の文学賞早くも決定か。