滋賀県名産、ふなずしを頂く。
司馬遼太郎初期の傑作、
「燃えよ剣」でふなずしを知り30有余年。
禁門の変で長州軍の敗色濃厚となった場面で
ふなずしの桶をかかえた沖田総司と
新選組の出番がなく功を焦る土方歳三の間で
こんな会話が交わされる。
「どうです。あがりせんか」
「なんだ」
「鮒鮨ですよ。土方さんの好物のはずだ」
「いま、いそがしい。お前、食え」
「私は食べませんよ。こんなくさいもの、
土方さんでないと食べられるもんか」
「みんなにわけてやれ」
「たれも食いつきゃしませんよ、新撰組副長以外は」
どうですか?
もう最高でしょう!
これ以上にないというくらい
魅力的にふなずしを描いています。
しかもふなずしの描写は一切用いずに!
しかしながらそれ以降「ふなずし」という単語は
同書以外で目にしたことがなく
ましてや実物なんて見たこともない
まさに幻ともいえる逸品。
縁あって20年前に滋賀を訪ねることができ
万感の思いで最初に頂いた鮒ずしは
大切にしすぎて賞味樹期限を大きく超過してしまい
熟れ鮨とはいえこれが正当な味なのか
確証をえられないまま
ただただ「腐っとる・・・」のイメージが残るものだった。
そして今日再び
鮮度ほやほやのふなずしをここに入手するに至った!
まずはそのまま・・・
おおぅ・・・。
これはやはり強烈に腐っとる!
次は米部分も一緒に・・・。
酸っぱい!
そしてお茶漬けで・・・。
これは強烈な梅干し茶漬けのよう!
さらには米を湯で溶いて吸い物に・・・。
はやり梅干しのよう!
例えていうなら
二日酔いの朝吐き戻したあと
口に残った固形物と胃液の混ざったような味わい。
腐りかけの半固形白米がそういった意味でもかなりリアル。
だがクセになる!
冷蔵庫の残りを開けるたびにつままずにはいられない!