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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第31回)

2022-01-15 | 南アフリカ憲法照覧

州行政への国の介入

[見出しは2003年第11次憲法修正法第2条a項により修正]

第100条

1 州が憲法もしくは法律の定める行政上の義務を果たすことができず、または果たさないときは、国家行政府はその義務を果たさせるため、以下のことを含むあらゆる適切な手段を講じて介入することができる。

(a)その義務を果たしていない程度を適示し、その義務を満たすのに必要な何らかの手段を明示した州政府向けの指示を出すこと。

(b)以下のことを実施するのに必要な限度で、当該州において関連する義務を果たす責任を引き受けること。

 (ⅰ) サービスの提供のための基本的な全国基準を維持し、または確立された最
     低基準を満たすこと。  

 (ⅱ) 経済的統合を維持すること。

 (ⅲ) 国家の安全を維持すること。

 (ⅳ) 当該州が他の州または国全体の利益にとって害となる不合理な行動を採ることを抑止すること。

[第1項は2003年第11次憲法修正法第2条により修正]

2 国家行政府が第1項b号の定めるところにより、ある州に介入する場合は―

(a)その介入の開始後14日以内に、全州評議会に対して介入を通知する書面を提出しなければならない。

(b)評議会が介入開始後180日以内に介入を不承認とし、またはその期間の満了までに介入を承認しなかったときは、介入は終了しなければならない。

(c)評議会は、介入の継続中、定期的に介入を評価し、国家行政府に対して何らかの適切な提言をしなければならない。

[第2項は2003年第11次憲法修正法第2条により改正]

3 国の法律は、本条で設けられた過程を規制する。

[第100条は2003年第11次憲法修正法第2条により修正]

 本条は、連邦制を前提としつつ、連邦の行政府が一定の場合に州に介入することを認める規定である。修正前は、「監督」(supervision)という用語であったが、これをより緩和し、州の自治を尊重したものであろう。

行政決定

第101条

1 大統領による決定は、次の各場合には書面でなされなければならない。

(a)法律の定めによる場合

(b)法的な効果を持つ場合

2 大統領の書面による決定は、その決定が他の閣僚の権限に関わる場合は、他の閣僚によって副署されなければならない。

3 布告、規則及びその他の下位法の手段は、公衆が知り得るものでなければならない。

4 国の法律は、第3項で規定された手段の次の点に関する方法及び程度について具体化する。

(a)国会への上程

(b)国会による承認

 本条は、国家行政府の長たる大統領による行政決定を書面化し、かつその手段となる下位法の透明性と国会の関与について規定したものである。国会が関与しない秘密裏の行政決定を許さない趣旨である。

不信任

第102条

1 国民議会が、その議員の多数決により大統領を含む内閣に対する不信任を決議したときは、大統領は内閣を再構成しなければならない。

2 国民議会が、その議員の多数決により大統領に対する不信任を決議したときは、大統領及び内閣の他の閣僚並びにいかなる副大臣も辞職しなければならない。

 南アは大統領制ながら、大統領は議会が選出する複選制であるため、大統領は議会に対して責任を負い、議院内閣制に準じて内閣または大統領に対する不信任決議の制度が存在していることが特徴である。

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