第2部 エスペランテート各論
(3)基本品詞⑤
Ⅶ 前置詞・相関詞
エスペランテートは、おおくの前置詞をそなえた前置詞型言語である。
この点では日本語のように名詞のあとに付加する助詞で単語をつなぐ後置詞型言語とはおおきくことなり、祖語であるエスペラント語の性質を継承している。
代表的な前置詞として、ar(~に/へ)、de(~の、~から)、er(~なかから)、sur(~のうえに)、sub(~のしたに)などがある。
一般に前置詞は種類がおおく、意味も多義的であるため、学習者はしばしばその選択にまようが、エスペランテートには特定の意味をもたない融通前置詞jeがあり、便利である。たとえば、Tiu chi romano meriti ye bremio.(この小説は賞にあたいする。)のようにもちいられる。これも、祖語エスペラント語からの継承である。
ちなみに、エスペラント語では名詞の目的格-nを転用して、「・・・へ」という方向をあらわしたり、上記の融通前置詞jeに代替させたりする後置詞的用法もある。これはこれで便利な用法ではあるが、エスペランテートの名詞は一切の格変化をしないのであったから、このような便法も存在しない。
エスペランテートには、相関詞とよばれる一群の品詞がある。
相関詞とは指示(この:ti-/あの:di-)、疑問(なに:ki-)、不定(ある:i-)、普遍(すべての:chi-)、否定(なにも~ない:neni-)をあらわす限定詞の総称であり、遠称指示詞diをのぞけば、これらも基本的にエスペラント語からの継承である。
相関詞は実質的には指示詞、疑問詞、不特定詞、普遍詞、否定詞として独立の意義をになうが、上掲の共通語幹を基本に統一的な語形変化をするため、文法上はひとくくりにされる。
相関詞の語形変化の法則は、指示詞ti-で代表させれば、tio(そのもの/こと)、tiu(そのひと)、tia(そのような)、ties(そのひとの)、 tie(そこに)、 tier(そのように)、tiar(それだから)、 tiam(そのとき)、 tiom(それほど)のように展開される。
なお、エスペランテート語には冠詞が存在しないため、指示相関詞tiu(その)/diu(あの)や近称詞chiをくみあわせたtiu chi(この)といった指示表現で定冠詞の機能を代替させることができる。