【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

谷中の魅力を如実に・・・

2009-08-03 00:10:05 | 旅行/温泉
森まゆみ『谷中スケッチブック』エルコ、1985年                              
                                     谷中スケッチ・ブック
 谷中界隈は歩いたことはありますが、本書を読んでこんなに魅力的な場所とは知りませんでした。やはり物事は経験だけではダメで、対象の魅力を喚起する本の力はこういうところにあることを痛感しました。

 その谷中、まずお寺が密集しています。他のところにあったお寺がいろいろな事情でここに移動してきたこともあって、数え切れないほどのお寺があり、著者はそのひとつひとつを散歩風に、しかも慈しみながら紹介しています。谷中墓地を筆頭に、それぞれのお寺にあるお墓について書き連ねながら、そこに眠る人たちを回顧しています。

 谷中は江戸の町並みの匂いが漂い、いい風がそよぎ、寺社とともに和菓子屋さん、チョウチン屋さん、筆屋さんがある。「谷中は、歩いているといろんな快い音に出会える町である。/朝夕、遠くの地の底から響くような電車の音、なぜかあまり昼間は聞こえない。墓地の木のざわめき、カラスのアーアーという鳴き声、ウグイスの声も聞こえるが、あれはどこで鳴いているのかしら。/静かな町の横町を曲がると三味線の音、端唄や詩吟を練習する声。町内放送。夕暮れのお寺の鐘の音。静かなところにふと聞こえてくる。昔は物売も多かったが、今はやっぱり「毎度おなじみちり紙交換」とスーパーの安売りのマイクの音が谷中でも主流である。それでも「ブーブー」という豆腐売りのラッパや、時には夜泣きのそばの物悲しい節まわしも聞えてくる」(p226)。そういう地域だそうです。

 「朝倉彫塑館」「大名時計博物館」のこともそれぞれに1章を割いて詳しい記述があります。

 この本を小脇に抱えて谷中に繰り出す、この本の末尾にある地図を片手に、いい会話を楽しんで、いいお酒を飲んで、ここの空気に触れる。人生、これにしくはない。

  わたしはエルコから出た単行本で読みましたが、画像はちくま文庫です。Amazonでこの文庫を入手しました。文庫版には数多くのお寺が索引になっています。単行本にはこれがなく、索引があるといいのに、と思いながら読んでいました。そうしたら文庫版にはあり、合点です。また文庫版の写真は、単行本版よりいいものがたくさんあり、谷中の魅力はさらに増大するような内容になっています。

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