「運命の人」第三巻に入り、読了しました。
外務省機密文書漏洩事件で国家公務員111条「そそのかし」罪に該当するとして起訴された毎朝新聞記者、弓成亮太は地裁で無罪判決を受けました(外務省事務官三木昭子は有罪[懲役6カ月、執行猶予1年])。事件発生から1年10カ月、初公判から1年3カ月の異例のスピード審理でした。法廷では民主国家における国家機密とは何か、知る権利はどのように実現されるかが争われました。
しかし、この裁判は原告が上告し、高裁で再度争われ、被告は逆転有罪の判決を受けることになります。
本篇は地裁から高裁、さらに最高裁で上告棄却を受けるまでの模様が主要なストーリー展開になっています。
この間、週刊誌が三木元事務官を取材し、それが週刊誌上で赤裸々な記事にされ、弓成亮太の家族は離婚問題を含めて困難に直面。亮太の実家(北九州)では父が亡くなり青果業経営の屋台骨が崩れ、競争相手に併呑されます。
生家の経営に足を突っ込んだ亮太は、記者としての過去の威信がくずれていくなかで、賭けごと(競馬)に手をだしなど無為の生活をすごします。大手新聞で辣腕をふるった記者が権力を相手に闘いをいどむも、ふとしたことで陥穽にはまり、上昇の階段からすべりおち、自身の親族、家族をも巻き込んで不幸の呪縛にからめとられていく過程が痛ましいです。