黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『百合子さんは何色 武田百合子への旅』村松友視(筑摩書房)

2013-04-12 | 読了本(小説、エッセイ等)
作家・武田泰淳の夫人であり、その死後『富士日記』を始めとする随筆で注目を浴びた、百合子。
編集者として、二人に関わっていた村松氏は、百合子の過去、泰淳夫人としての百合子、女学生時代の百合子、作品内に投影された百合子像などを踏まえつつ、さまざまな面を持った彼女の実像に迫る評伝。

泰淳氏の口述筆記によりその能力を開花させたのだという、世間の評価の見方を否定する村松氏。百合子さんが元来持っていた資質を明らかにしようと、さまざまな面からアプローチした内容になってます。
そこかしこに感じられる百合子さんらしいエピソードが満載で、とても興味深かったです。

<13/4/11,12>

『往復書簡 いま、どこですか?』小澤征良×杏(新潮社)

2013-04-10 | 読了本(小説、エッセイ等)
エッセイストである小澤征良と、女優でモデルの杏。姉妹のように仲の良いふたり。
ある時は、粉雪舞う奥志賀高原から、ある時は、仕事ででかけたニューヨークから。満点の星空で過ごしたオアフ島から、つかの間の時間旅行に浸った奈良から、そして大いなる自然と野生動物に出会えたイエローストーン国立公園から……世界中を行き交うふたりの手紙の数々。
そして2012年6月。一緒に出かけた北海道への旅の出来事を綴った一冊。

おふたりの往復書簡形式のエッセイ。
手書きのお手紙、そのままが掲載されているのが素敵♪
メールが主になった昨今ですが、昔はよく友人にお手紙を送ったりしたなぁなどとしみじみしました。

<13/4/10>

『黎明の書 巻之弐 荒れ野を越えて』篠田真由美(徳間書店)

2013-04-08 | 読了本(小説、エッセイ等)
《貴種》と呼ばれる吸血鬼たちが支配する世界。
教会の養い子であったラウルは、領主シェミハザ伯爵の嗣子イオアンの侍者となる。しかし伯爵の弟の裏切りと隣接する領主の急襲の中、落城。証となる副印を持ち出し逃げのびたふたりは、伯爵家を相続するために必要な、上王ラドゥ十三世への認可を求めるべく、都へ向けて旅をすることに。
その途中、追手の気配を察知したイオアンは、かつてシェミハザ伯の出城であった廃城に籠るが、想像以上の相手に危うい立場に立たされる。そこに助けに入ったのは、凶運のハイドリヒと呼ばれる、かつて教会に属しながらも今はある事情により《貴種》の手助けをする男と、アルビオンの《貴種》であるアイーシャとその従者シジマに助けられる。
その後、アイーシャたちとは別れ、ハイドリヒと旅することになったふたり。その途中でラウルは大怪我を負い、ハイドリヒの友人であるアアダムの元に身を寄せることになったのだが……本編の他、
アルビオン王国の商都ディスにやってきたアイーシャとシジマ。
アイーシャは、新任の大使に加わる随員のひとりとして選ばれたのだが、いくら待っても新任大使一行がやってこない。大陸の《貴種》に会うべく、上王ラドゥ十三世の住まう都へと出発したいと再三、白亜府への問い合わせてを希望するる、代官たちにはにのらりくらりと躱され、長期滞在を余儀なくされていた。
その地で知り合った、ミミズクという男から、わらべ唄に歌われているという、北の果ての不死の隠者が持つという紅い本について話を聞いたアイーシャだったが……“外伝 紅き魔書の守り手”を収録。

早くも二巻…というか三巻までは連続刊行。
城を出て都へ向かう途中で、(前巻の外伝にも登場した)アイーシャ&シジマが登場。新キャラ・ハイドリヒが加わって、水戸黄門的(←連れが増殖するの意)になるのかと思いきや、アイーシャたちとは早々に別の道に。
やはり子供達だけでは心配なので、ハイドリヒが一緒にいてくれるのが頼もしいですね~。
さて、次巻こそは都に行けるのか…?

<13/4/7,8>

『ブランコ乗りのサン=テグジュペリ』紅玉いづき(角川書店)

2013-04-06 | 読了本(小説、エッセイ等)
20世紀末に突如都市部を襲った天災から数十年。震災復興のため首都湾岸地域に誘致された大規模カジノに、客寄せとして作られた少女サーカス団。そこは、曲芸学校をトップで卒業したエリートのみが演目を任される舞台。
その花形である<ブランコ乗りサン=テグジュペリ>八代目を継ぐ姉・片岡涙海が自主練習中に大怪我を負い、秘密裏に入院。密かに入れ代わり、双子の妹・愛海が舞台に立つことに。
怪我から治るまでと頼まれたものの、演じることの重圧や嫉妬渦巻く舞台で心が折れそうになる愛海。彼女の正体を知りながら支えとなる猛獣使いのカフカ、そして厳しくも優しい歌姫アンデルセンらが叱咤激励する。
ある日、サン=テグジュペリのエクストラシートを買いながら、途中で席を立った男がいた。アンソニーというカジノのディーラーだった。さらに暴言を吐く彼に憤りを感じながらも、その存在が気にかかる愛海。
そんな中、携帯電話を盗まれ、おびき出された愛海は拐かされ……“開幕、第一幕 ブランコ乗りのサン=テグジュペリⅠ、Ⅱ”、
動物とともにある仕事をしたいと、サーカス団において長らく欠番となっていた<猛獣使いのカフカ>を目指し、高校卒業後、他の子たちよりも遅い十八で曲芸学校に入学した庄戸茉鈴。
学校でのいじめに耐える中、同期の涙海と親しくなり、ふたりは共に自分の目標に向かい努力を続ける。
異例ながらも、ふたりはサーカス団に入ったが……“第二幕 猛獣使いのカフカ”、
男を次々と手玉にとり、強烈な性格の持ち主で毒婦だと噂される<歌姫アンデルセン>こと花庭つぼみ。
誰よりもサーカスを思っている彼女は、サーカスに絡んで起きている事柄の真実を知りたいと願っていた。どうやら愛海が襲われた背景にはサーカスを賭けの対象とした賭博が行われていると知る。しかもそこには団長シェイクスピアが関わっているらしい……“第三幕 歌姫アンデルセン”、
事故により、右足の太ももからの先の感覚を失ってしまった涙海は、なかなか回復しない自らに苛立ちを感じていた。
昔からサーカスに強い憧れを抱いていたが、それと共に愛海の方が自分よりも能力があると認めていた。しかし愛海はその道を涙海に譲り、普通の学校へと進学。そして夢を涙海に託していたのだった。
一方、大手製薬会社の息子が横領し、カジノに入れ込んでいた事件が発覚。そこにサーカス団が関わっていたというスキャンダルに……“閉幕 ブランコ乗りのサン=テグジュペリ Ⅲ”を収録。

少女たちだけで構成されるサーカス団を舞台に、彼女たちの生き様を描いた連作。
宝塚的でもありAKB的でもあるような、独特の世界に身を置く彼女たちの姿が、切なくも気高い感じ。本当に『少女』という生き物を描くのに長けていますね~。痛いことこの上ないです(←褒めている/笑)。

<13/4/6>

『未来ちゃん』川島小鳥(ナナロク社)

2013-04-05 | 読了本(小説、エッセイ等)
佐渡に住むひとりの女の子の一年と四季を写した写真集。

どこか平成生まれらしからぬ野性味を感じる彼女自身もそうですが、着ているものといい住んでいる空間といい、そこはかとなく昭和テイストを感じる写真集でした。
奈良さんの描く少女にも似た目力が、魅力的♪

<13/4/5>

『かおばな憑依帖』三國青葉(新潮社)

2013-04-02 | 読了本(小説、エッセイ等)
八代将軍吉宗の時代。桜井右京は、一刀流桜井道場の跡継ぎながら放蕩三昧。厳しい母・茅野に叱られてばかりで、頭の上がらない美青年。
ある日、浅草寺で気が狂れた男に襲われそうになっている少年を助けた右京。彼は旗本三百石、田沼意行の嫡男・龍助だった。彼と田沼家に仕える青年・柾木信吾と親しくなった右京は、龍助の盲目の姉・美也の美しさに、ひとめ惚れ。
やがて美也も右京を憎からず思うようになるが、何分身分違い。ところが意行はある条件の下、彼らが一緒になることを許す。
実は吉宗配下の忍びであった田沼家。吉宗が就任にいたるまでの暗闘で、亡くなった尾張藩の円覚院(吉通)が怨霊と化しており、将軍位の剥奪をもくろんでいた。吉宗の母・浄円院は、自ら死して怨霊となりそれに対抗していた。
そんな中で、右京に若後家となった吉通の娘・信受院(千姫)を籠絡させ、吉通をおびき出そうとしていたのだった。もちろん、本当に右京と美也を一緒にさせる気などは毛頭ない。
話を聞いた上は、今更逃げるわけにもいかず、引き受けることになった右京。その矢先、小石川養生所が尾張の手による襲撃の被害に遭い、そこにいた美也が瀕死の状態に陥ってしまう。
そんな彼女の仇を討つべく、京へと旅立つ右京。
一方、信吾は植物に詳しい儒学者・青木文蔵(昆陽)と知り合うが、文蔵も実は忍び。尾張がたくらんでいる陰謀を探ることに……

第24回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞。
おとなしめな端整な色合いの表紙とうらはらに、怨霊が飛び交ったり、歴史上の人物が忍びだったり、なんでもありのトンデモな感じが、山風っぽい(だいぶライトだけど)。女性キャラが全般強めですね。
続きそうな気配もあるのですが、その場合シリーズタイトルはこれだとまずいような…(『かおばな』は朝顔で多分今回だけにしか出てこないだろうし、そもそも憑依されてるのってあのヒトくらいしかいない…)。

<13/4/1,2>