黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ブランコ乗りのサン=テグジュペリ』紅玉いづき(角川書店)

2013-04-06 | 読了本(小説、エッセイ等)
20世紀末に突如都市部を襲った天災から数十年。震災復興のため首都湾岸地域に誘致された大規模カジノに、客寄せとして作られた少女サーカス団。そこは、曲芸学校をトップで卒業したエリートのみが演目を任される舞台。
その花形である<ブランコ乗りサン=テグジュペリ>八代目を継ぐ姉・片岡涙海が自主練習中に大怪我を負い、秘密裏に入院。密かに入れ代わり、双子の妹・愛海が舞台に立つことに。
怪我から治るまでと頼まれたものの、演じることの重圧や嫉妬渦巻く舞台で心が折れそうになる愛海。彼女の正体を知りながら支えとなる猛獣使いのカフカ、そして厳しくも優しい歌姫アンデルセンらが叱咤激励する。
ある日、サン=テグジュペリのエクストラシートを買いながら、途中で席を立った男がいた。アンソニーというカジノのディーラーだった。さらに暴言を吐く彼に憤りを感じながらも、その存在が気にかかる愛海。
そんな中、携帯電話を盗まれ、おびき出された愛海は拐かされ……“開幕、第一幕 ブランコ乗りのサン=テグジュペリⅠ、Ⅱ”、
動物とともにある仕事をしたいと、サーカス団において長らく欠番となっていた<猛獣使いのカフカ>を目指し、高校卒業後、他の子たちよりも遅い十八で曲芸学校に入学した庄戸茉鈴。
学校でのいじめに耐える中、同期の涙海と親しくなり、ふたりは共に自分の目標に向かい努力を続ける。
異例ながらも、ふたりはサーカス団に入ったが……“第二幕 猛獣使いのカフカ”、
男を次々と手玉にとり、強烈な性格の持ち主で毒婦だと噂される<歌姫アンデルセン>こと花庭つぼみ。
誰よりもサーカスを思っている彼女は、サーカスに絡んで起きている事柄の真実を知りたいと願っていた。どうやら愛海が襲われた背景にはサーカスを賭けの対象とした賭博が行われていると知る。しかもそこには団長シェイクスピアが関わっているらしい……“第三幕 歌姫アンデルセン”、
事故により、右足の太ももからの先の感覚を失ってしまった涙海は、なかなか回復しない自らに苛立ちを感じていた。
昔からサーカスに強い憧れを抱いていたが、それと共に愛海の方が自分よりも能力があると認めていた。しかし愛海はその道を涙海に譲り、普通の学校へと進学。そして夢を涙海に託していたのだった。
一方、大手製薬会社の息子が横領し、カジノに入れ込んでいた事件が発覚。そこにサーカス団が関わっていたというスキャンダルに……“閉幕 ブランコ乗りのサン=テグジュペリ Ⅲ”を収録。

少女たちだけで構成されるサーカス団を舞台に、彼女たちの生き様を描いた連作。
宝塚的でもありAKB的でもあるような、独特の世界に身を置く彼女たちの姿が、切なくも気高い感じ。本当に『少女』という生き物を描くのに長けていますね~。痛いことこの上ないです(←褒めている/笑)。

<13/4/6>