黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『45°』長野まゆみ(講談社)

2013-04-18 | 読了本(小説、エッセイ等)
待ち合わせの為に訪れたカフェで、偶然見かけた男は、かつての同級生・川上一彦だった。
やがて、私(南谷真尋)が待ち合わせの約束していたクレハチ(呉服小帆)が一時間も早く登場。彼女が会っていたのは川上だった。
彼は、中学三年の頃、私のところに盗撮のフィルムをまぎれこませた首謀者だった……“11:55(ジュウイチジゴジュウゴフン)”、
雨宮は、後ろのテーブルで話す二人…ステンカラー人と名付けた浜田と、カタロギという人物…の会話を耳にする。
三十年前の夏のある出来事を知っている人物を探しているというカタロギ。浜田は当時大学時代のアルバイトでアドバルーンの浮揚員をしていた。トーゴビルという五階建てのビルの三階から転落したカタロギは、一命をとりとめたもののその事故により記憶を亡くしたという……“45°(ヨンジュウゴド)”、
今ではケアホームに暮らす、かつて鳥類の研究者だった志津先生。老いて認知症を患う彼女の貯蓄の在り処をさぐるべく、わたしは彼女の話に耳を傾ける。
そんな先生の口からたびたび出るのは、三つ又の橋の話だった……“/Y(スラッシュワイ)”、
学校帰りらしい二人のの小学生を見かけた守一。どうやらホシノソラとコガユウスケという名前であるらしい。記憶をたどりながら、ひょっとしたらホシノソラとつながりがあるかも知れない人物のことを思い浮かべる。
それはホシノフルサトという中学時代の同級生。親が自己破産するまでは豪邸に住んでいたという噂のフルサトと親しくなった守一。その豪邸に忍び込んだ折、フルサトはそこに骨が埋まっているという……“●(クロボシ)”、
同じマンションに暮らしていた日奈田とぼくと、近所のクリーニング店の娘・カコ。十代のころ、悪ふざけをするときは、たいてい三人一緒だった。やがて別の大学を目指していたぼくは、そこからはずれるようになったが、時折、日奈田を見かけるとカコに似ていくように思った……“+-(加減)”、
トイレへの欲求に悩まされるようになった妙子は、あてどなくトイレを探す夢を見る。
かつて私立の女子高に通っていた妙子。そのクラスメートの真紀江は要領がよく、目端の利く生徒だった。
同窓会で再会し……“W.C.(ダブリュシー)”、
なにがなんでも持ち家に住みたかったリサ。夫の遼一と二世帯住宅を建て、いっぽうに住み、いっぽうを賃貸住宅として貸し出すことにした。
谷山六実という人物が借りることになったのだが……“2°(フォリオ)”、
記憶をなくした彼は、一川春雪という名で、何故かタキシード姿だった。その会社の社長・額賀と結婚。セレモニープロデュース会社で働きはじめたのは、一年前。
そんなある日、これから電車に飛び込む自分の葬儀について相談にきた女。見積もりのため彼女の部屋を訪れたが……“×(閉じる)”、
突然、義兄が行方不明に。海に転落したようにも思われたが死体も目撃者もない。
姿を消す少し前、奇妙な話をしていた義兄。十代のころ、親戚の家の雪下ろしをしていた彼は死に瀕し、このまま死ぬのと悪事を働くのとどちらがいいかと選択を迫られたという。後者を選んだ彼の代わりに、自分の部屋で別の人間が死んでいたという……“P.(ピードット)”の9編収録。

表紙のルビンの壺(っぽい絵)に象徴されるかのような、見方が変わると違う真相が…、というお話いろいろ。
いつもの長野作品とはまた違う系統の作品集でした。
まさに新境地。

<13/4/17,18>