204)がん治療に役立つ食材(12):イチジク(果実と葉)

図:イチジクの果実(無花果)は、食物の消化を助け胃腸の働きを良くする。イチジクの葉(無花果葉)は肝障害を軽減する効果が報告されている。イチジクを常食している地方はがんの発生が少ないという報告がある。

204)がん治療に役立つ食材(12):イチジク(果実と葉)

【イチジクは人類最古の栽培食物】
イチジク(Ficus carica)はクワ科イチジク属の落葉高木で、花が外から見えないために「無花果」という名があります。原産地はアラビア半島や地中海沿岸地方で、6000年以上前から栽培されており、小麦よりも古く、人類最古の栽培食物だと考えられています。古代エジプトの壁画にも描かれており、旧約聖書にも数多く登場します。アダムとイブが裸を隠すのに使ったのもイチジクの葉です。
ヨーロッパからペルシャ、中国へと伝わり、日本へは江戸時代に中国から長崎に入ってきました。当初は薬用として栽培されていましたが、生産量が増えるにつれ食用として親しまれるようになりました。現在、愛知、和歌山、福岡などが主な産地になっています。品種改良されて、風味豊かな品種が出回っています。挿し木で容易に増やせるため、手間のかからない果樹として家庭の庭などにも広く植えられています。
果実は不老長寿の果物とも呼ばれており、生食するほかに乾燥イチジクとして多く流通しています。
さらに、果実や葉は薬用にも利用されています。熟した果実は無花果(ムカカ)、乾燥した葉は無花果葉(ムカカヨウ)あるいは 唐柿葉(トウシヨウ)といい生薬として用いられます。

【イチジクの成分と効能】
成熟した果実には、糖類(果糖、ブドウ糖)、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、ビタミン類、カリウム、カルシウム、食物繊維など豊富な栄養成分や薬効成分が含まれます。食物繊維は、不溶性と水溶性の両方が豊富に含まれています。果実に豊富に含まれるペクチンという食物繊維は腸の働きを活発にするので、便秘に有効です。
果肉にはフィシンという蛋白分解酵素が含まれ、消化を助けてくれるので、食後のデザートとして食べれば消化を促進してくれます。
食欲がなく、普段から胃腸虚弱な人に有効な食べ物です。
イチジクの実には炎症を抑える作用や解毒作用があり、咽の痛みや声がれにも効果があります。のどの痛みを伴う声がれのときは、細切した乾燥イチジク15g程度を水で煎じ、蜂蜜を加えて飲むと効果的です。
イチジクはカリウムを比較的多く含んでいます。カリウムは血圧を下げる効果があるので、高血圧や動脈硬化の予防にも役立ちます。
イチジク1~2個を生で食べるか、乾燥イチジクを水で煎じて服用します。便秘の人は良く熟したイチジクの果実を1日に2~3個食べると便通が良くなります。未熟な実では効果が無いばかりでなく、胃を荒らすので、注意が必要です。
干したジチジクの果実を細かく切り、半分焦げるまで炒り、適量の蜂蜜や砂糖を加え、湯に漬けてお茶の代わりに飲めば、胃の消化を助ける効果があります。(後述)
葉には、プソラレン(psoralen)、ベルガプテン(bergapten)、β-シトステロール、β-アミリン(β-amyrin)およびルペオール(lupeol)などが含まれます。
クマリン類のベルガプテンやプソラレンは血圧降下作用があります。
葉や枝を浴湯料として用いると、痔や神経痛や冷え性に効果があります。薬湯として用いるときは、生の葉と茎を刻み、木綿袋に入れて(50~100g)、水から入れてわかします。
特に、痔の妙薬として有名で、葉を煎じて座浴するとおどろくほどの効果が期待できます。
葉のエキスは肝障害を軽減する効果があります。(後述)
未熟果実や茎や葉からは白い乳液がでますが。これにはベンズアルデヒドやその誘導体が含まれ、制がん作用があると報告されています。白い乳液はイボ取りや虫さされの治療にも使われます。イチジクを常食としている地方にはがん患者が少ないという報告があります


【イチジクの蜂蜜湯】
胃腸が弱くて、すぐに消化不良を起こしたり、便秘したり下痢したりする人にはイチジクの蜂蜜湯を日頃から飲むと良く効きます。イチジクに含まれている消化酵素が食物の消化を助け、また蜂蜜は腸内のビフィズス菌を増やす働きがあるので、下痢に効果的です。さらに殺菌作用もあり、その作用は穏やかで副作用がないため、お年寄りや抗がん剤治療中の場合でも効果があります。
(作り方)イチジクの果実を日干しにして乾燥させ(あるいは市販の乾燥イチジクを使用)、細かく砕いて粉末にする。これをフライパンでいって半分焦がす。
煎った粉末大さじ1に適量の蜂蜜を加え、お湯を注いで飲む


【イチジクの葉の肝障害改善作用】
多くの薬草が肝障害の治療に使われています。例えば、漢方薬で使用される生薬のデンシチニンジン(田七人参)やサイコ(柴胡)やウコン(欝金)や、ヨーロッパで使用されているハーブのミルクシスルなどが、様々な肝障害の治療に使用されています。インド医学のアーユルヴェーダでは、イチジクの葉が肝障害の治療に使用されています。
いちじくの葉の抽出エキスの経口投与が薬剤による肝障害を軽減する事が報告されています。
例えば、ラットに抗結核薬のリファンピシンに投与して発生する肝障害を、イチジク葉の抽出エキスを経口摂取させることによって軽減できることが報告されています。
Hepatoprotective Activity of Ficus carica Leaf Extract on Rifampicin-Induced Hepatic Damage in Rats(ラットにおけるリファンピシン誘導性肝障害に対するイチジク葉エキスの肝細胞保護作用)Indian J Pharm Sci. 70(3): 364-366. 2008
抗がん剤による肝障害にも効果が期待できそうです。乾燥イチジクを1日10~15グラム程度を煎じて服用します。
ただし、葉にはfurocoumarinsを含むので、血液凝固能を低下させる薬(アスピリン、ワーファリン、抗血小板薬、非ステロイド性抗炎症剤など)やハーブ類(イチョウ葉、ニンニク、ノコギリヤシなど)と併用すると出血を起こしやすくなる可能性があるので注意が必要です。
また、イチジクの葉は血糖を下げる効果があるので、インスリンや血糖降下剤の投与を受けているときは低血糖に注意します。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 203)生野菜 ... 205)がんの食... »