CLASS3103 三十三組

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【読書】天路の旅人

2023-06-12 21:02:15 | 読書感想文とか読み物レビウー
天路の旅人  著:沢木耕太郎

相当面白い冒険譚だった
二次大戦の頃、世界中にこういう人がいっぱいいたんだろうか、
スパイという概念から、そもそも考えさせられる内容だったんだが、
大変面白い内容にぐいぐい引き込まれて読んだのでありました

モンゴルから、チベット、インドにまで、10年近く潜伏していた日本人のお話、
実在の人物で、スパイ活動をしていたということなんだが、
どうやら公式の記録としては残されていないようで、
そのあたりの展開も面白い読み応えなんだけども、
誰かの配下といった感じではなく、使命感から、潜伏して事情を日本に送っていた
ただそれだけのようでもあり、また、そのようにして得た情報というものが、
本当に戦争上必要だったのか、そういうところが不思議というか
わからないとすら思ってしまったんだが、でも、実際こういった人が何人もいたようだし、
場合によっては、正規ルートともいえるような軍属もいたのは確かなようで、
いや、軍属と書いてしまうと、この主人公ともいうべき西川一三さんは、軍属ではないから
なんといったらいいのか、これまた、扱いに困る人物だなと思ったのだけども、
ともかく、モンゴルに潜伏して、ラマ僧に偽装し、チベットからインドまで、
まるで西遊記のように経典を求めてさまよう僧侶の姿をしていたと
そういう冒険のお話でありました

これが戦時で、そして、スパイという名目があっての行程なんだが、
読んでいると、もはや、冒険に取りつかれているだけの人ではないかと
そんなことを思ってしまうんだが、それとスパイであるということは並立するといったらいいか、
どこにも矛盾はないのだなと思い知らされるようでもあり、
国のためという志は間違いなくあって、その通りに行動していると
見てとれるんだが、はためで見ると、それは自分の冒険心のためではないかとも思ったり
なんというか、このあたりがすごく面白いのでありました

物凄い冒険の日々といっていいと思うんだが、
長く険しい旅の道々も面白いけども、様々なところで出会う人々や、
ラマ僧として修業を積んでいく様とかが、次第に、本職というべきか
生きる中での重要度を増していく姿みたいなのが、
いっそ神々しいとすら思ってしまうところが面白くて
頭もよい人だったろうし、何よりも清廉というか、真面目な人なんだなというところが
世界共通で強いもの、ある種の徳となるんだなと思わされて
なんというか、いいもの読んだとしみじみ思ったのでありました

これをまとめるのにすさまじい年月を費やした、沢木耕太郎さんもすごいと思ったけど
こういう冒険というものへの憧れというか、強い魅力というのが伝わってくる
この経験がすごく尊いものだと思えてならないと
若いうちに読んでいたら、大変なことになっていたかもしれないと
自身を危ぶむほど面白かったと思えた一冊でありました


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