CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

巨匠とマルガリータ

2006-03-07 08:54:51 | 読書感想文とか読み物レビウー
やっとこのレビウを書ける
読み終えたのは、相当前なのでありますが
なんか毎日違うことを書いてしまってたので
全然レビウできなかったのでありますが
とうとう読みました
以前にコメント頂いたときおすすめとして紹介されました

巨匠とマルガリータ
作:ミヒャエル・ブルガーコフ
訳:法木綾子

これは面白い
もともとおすすめされていたことで、面白いんだろうなと
期待して読んだせいもあるのですが、実際面白かった
というか驚きました
これが書かれたのが、ブルガーコフ晩年なので
1950年前後かしらというところでありますが
そんな2次大戦の紛争やまぬ時期に、これだけ優れた
なんというかな、ファンタジー小説が描かれていたというのが
驚愕に値するのでありました

わたくしファンタジーにとんと無縁で、素養がない上に
少々なめていたところがあったのですが
巨匠とブルガーコフを読んで改めました
ああ、すげぇ、本気のファンタジーはマジですげぇ
またこのジャンルで、名作として世界の名著のひとつに
数えられるほどになるんだから、世の中の本読み達の
鋭い感性にも喫驚するばかりでありました

能書きはさておき、この社会主義体勢の下で
もだえ苦しみながらブルガーコフが己の信じる愛と
せつないまでの訴えを描いたすげぇ作品について

全体的な説明をすると
究極の愛の物語でいいんじゃねぇかと
思ってしまくらい、ラブ度もたかく、それでいて
切なくていとおしい作品であります
何言ってるかさっぱりわかりませんが、
ともかくそんな具合

巨匠と呼ばれるある小説家が
キリストについての小説を書いたのでありますが
どうもその当時のロシア文壇においてはタブーだったらしく
そんなものを書いた巨匠を
社会的に、また、文壇的に追い込んでいき
彼は精神を患って、病院行きとなってしまう

その傍ら、巨匠を精神病院に追いこんだ
様々な文壇関係者が、次々と不思議な事件に巻き込まれて
死んだりいなくなったり、首がもげたり、電車にひかれたり
消えていく、その陰にいるのが
Wで名が始まる外国人の教授と呼ばれる男
ヴォラントと呼ばれる彼は、実は悪魔なのである

と、まぁそんなところから(だいぶ違う)
悪魔の彼がモスクワなどで文壇の偽善者というか
うそつき達を次々と血祭りにあげつつ、モスクワの愚民を
面白おかしく踊らされていく
それが前編にわたって書かれておるのでありました
なお、主軸となるのは、巨匠が書いたキリストの小説ですが
彼の妄想ともいうべきその小説は
かつて悪魔が見てきた、キリストの最後と合致する
悪魔はその才能に惚れるではなく、目を見張り喜ぶ
そんな具合であります

その小説の内容であるキリストの最後の時代と
現代(当時のね)の不可解な事件とをいったりきたりしながら
物語は進んでいくのでありますが、
後編になって、いよいよモスクワが世界に誇るラブが発揮される

マルガリータという女性がとうとつに現れる
彼女はいいとこのお嬢さんで、もう歳はいくつか経てしまっているが
未だ清純な心と、切ない胸のうちを秘めて
何一つ不自由することのない生活を約束された
ステキな旦那様と暮らしている

ところが、彼女はかつて、その生活に身を置きながら
巨匠と出会ってしまう
恋に落ちてしまう
初めて恋愛をしてしまう

そのあたりが切な過ぎて半端ないのでありますが
彼女のそのひたむきな一生懸命さと
巨匠の描いた小説を読んで、それがどれほどすばらしいかを
文壇、世界は全て否定したその小説を
彼女だけがすばらしいと誉めるのだ
ああ、愛だ、愛、愛以外のものでもない

巨匠もそれに励まされつつがんばっていたのだが
冒頭の通り精神病になってしまい、マルガリータとは
離れ離れに、このくだりも、絶妙というか
壮絶に切ないのでたまらんのでありますが
そんなうれうべき毎日を過ごしていた目の前に
悪魔が現れる

そしてマルガリータは魔女になり
その悪魔とある契約をかわし
悪魔との仕事をこなす、このあたりも
相当面白いのだが、何がいいって純粋無垢な女という
このなんともいえないステキな人物が
悪魔に魂を売るとはどういうことかとは決して言わないけども
そういうことをしていく様がああ、すげぇ

そして悪魔の力で復讐をするのだが
その復讐自体は些細なことで、彼女の真の願いは
巨匠と本当の愛の生活をこれからも続けること

悪魔はその後、神の使いと出会い
巨匠について言葉をかわす
「彼は光を得ず、安らぎを得た」

神がそばに巨匠を置いてもかまわない
それほどの作品を作ったが神は巨匠を悪魔にまかせた
それを使いは言うのだが、上記の言葉
光の世界にて真実と肉薄する小説を書くよりも
悪魔の力によってでも、愛するマルガリータと二人で
永遠になることがよかろうと
そういうことなんだろうか

そんな具合で終幕をむかえるのですが
文壇の唯一といっていい生き残り
詩人と呼ばれる男がいるのですが
彼も紆余曲折というか悪魔のせいで精神病院に入ってしまうのだが
その精神病院先で巨匠と出会っており
その最後、どうなったかを彼は知る
ただ彼は「精神病」なのでその言葉は
誰にも届かない、そんな具合でありました

長くなりすぎてわけわからんちんなので
このくらいにしておきますが、
途中の描写も相当面白くて
この詩人が精神病になっていくというか、そんな描写が
見たことはないけど、すげぇリアルだと思わせるような
ステキすぎるそれ、何かを説明しようとすれば
それを説明する言葉を説明しないといけないとか
ぐるぐる文章を追っていくのだが、そのあまりにも必死なのにこっけいなところが
病気だなと思わせるのでありました

ともあれ、すげぇ面白かったし
ロシア文学ってのは難しいが面白いと結論づけて
わたくし、これからもステキに生きていこうと
思ったのでありました

名前が長いのとやたらあだ名というか
別名が出てくるのが難しいが、それだけクリアできれば
ロシア文学はすこぶる面白いのでありました
チェーホフの時とも同じ空気があるなと
思ったのですが、これがロシア風の文体なんだろうと
訳者の人をさしおいて思うのでした

良作、読むべし