
初めて買ったクルマは、白い、中古のタウンエースでした。
町で小さな自動車整備工場を営んでいた知り合いに「荷物が沢山積めるクルマ、欲しいんですけど。でも、お金無いんで、とにかく安いのあったら、欲しいんですけれど。」って相談していたんです。
何日か経ったある日、「川村、ホントに荷物積めて、走りゃいいのか?見た目とか、気にしないか?」と連絡がありました。「ハイ、もう。僕の楽器と、あとたまにバンド仲間の機材さえ積めればいいんで。」
「なら、昨日お客さんからタウンエース一台、引き取ったから、見てみるか?でも、とにかく古いぞ。」「おー!もちろん、行きます、行きます
!」
でもね、もう、本当になんでも良かったんですよ。とにかく、走ってくれれば。目的は、当時やっていたアマチュアバンドのリハーサルに、好きなだけ自分の楽器を持っていきたかっただけなんですから。
じゃーん、そして。
・・・でました
。
古い、なんてもんじゃない(笑)。元は白いクルマだったんでしょうが、塗装は日に焼けて、クリーム色っぽくカサカサに変色していて、しかもそこらじゅう、かなり色の違ったスプレーペンキやマジックで上塗りしてました。何度もぶつけたり、擦ったりしたんでしょうね。大きなへこみやゆがみも何箇所も。タイヤのホイールやボディの端々にはかなり錆(サビ)が浮いてました。
勿論、マニュアルで、コラムシフト(ハンドルの脇にレバーが付いてるやつです)。走行距離は既に13万キロを超えていました。普通に考えれば、もう、いつ止まってもおかしくない距離を走ったクルマと言えます。多分、町の電気工事屋さんあたりで使われてたやつではないか、と思われました。
でもね、良かったんです、それで。
さてさて、気になるお値段は、と。
「まあさ、正直、もう廃車にしようと思ってたやつだから、上げちゃってもいいんだけど、一応ウチも商売だからさ、気持ちだけ貰っとくわ。」
と、5万円で譲ってもらいました。
窓には妙な青と白のストライプの、なんか手ぬぐいみたいなもので作った、薄い自作カーテンが付いてましたが、でも、「あー、機材が日に焼けなくていいかも」って思ったくらい。
でも、それからそのオンボロタウンエースは本当によく走ってくれて、次のクルマ(必要に迫られて買い換えた、一回り大きなハイエース。これもかなりの中古でしたけど、、もう、これが新車に思えたくらいでした(笑))に買い換えるまでの約二年間、一度も壊れずに、頑張ってくれました。
郊外の安いスタジオで数日間にわたる徹夜でレコーディング作業をしての帰り道、家まであと10kmのあたりで、朝の大渋滞に思いっきりハマった日のことが一番に思い出されます。
ちょうど今頃、10月終わり頃の天気のとってもいい日でした。とにかく集中力は全部使い果たしてしまってまして、ひたすら疲れてて、とにかく猛烈に眠くて、眠くて。止まっては、1メートル動いて、止まって、の繰り返しの超ノロノロ渋滞。何度も落ちかけて、後ろの車にクラクションを鳴らされて、挙句「もうだめだ」と(←そもそも危ない)、と帰宅&自分のベッドを諦め、街道沿いの二階が店舗になっているファミレスの無料駐車場にクルマを突っ込んだんです。
そしてエンジンを切るやいなや、運転席から、そのまま後ろの荷台にシートを跨いで移動して、何台かのケースに入ったキーボードを脇に積み上げ、裸で持っていっていたキーボードを包んでいた毛布を横取りして、次の瞬間には落ちていました。
目を覚ましたのは4時間ぐらいした、丁度正午頃だったと思います。締め切った車内が、モワンと熱くなっていて、寝汗をかいて目を醒ましたんです。よいしょ、っと横のスライドドアを開けると、秋の心地良く乾いた風がサァーっと入ってきて、あー、なんと気持ちよかったこと。ひょいと通りを見ると、渋滞は嘘の様に終わっていて、空いた道をスイスイとクルマ達が走り抜けていっているのが見えました。あー、目覚め、超スッキリ。伸びをして、さっきまでレコーディングしていた曲のカセットをかけて(←かなりヘタッピ(笑))、運転を再開したのでした。帰るぞ、タウンエース
!
あれからもう、18年が経ちました。何台かのクルマに乗りついでいますが、うーん、やっぱりあのタウンエースを手に入れた時が、一番、嬉しかったかも。
(↓ちなみにこれは、さっきカタログで見つけた、同じ型の新車時の写真(これは赤)です。えー、僕のその白風味のタウンエースとは、同じクルマなのですが、しかしある意味、全然違います(笑))

ではー。ぶるるー。がたごと。