「半落ち」の佐々部清監督がメガホンをとり、10年ぶりに帰郷したミュージシャン
志望の青年が故郷の人々との交流を通して自分自身と向きあう姿を描いた青春
ドラマです。
10年前、ミュージシャンを夢見て故郷の群馬を飛び出した真山佳幸(桐山漣)は、
東京で地道な音楽活動を続けています。
そんなある日、絶縁状態だった父からある報せが届きます。複雑な思いを抱え
て故郷に戻ってきた佳幸は、そこで以前と変わらず陽気な母(宮崎美子)や高校
生になった妹、病のためかつて厳格さをなくした父(升毅)、小学校の音楽教師に
なった同級生の唯香杉野希妃)らと久々の再会を果たします。
生まれ育った街で、真山は自分を支えてくれていた人々や自分自身と真剣に向
きあって行こうとします・・・。
地方自治体・群馬県太田市がバックアップし、地元有志の協力で製作された作
品です。監督からは撮影期間が八日間だったことを聞いていますが、恐らく製作
費も低予算で仕上げられたものと思われます。
監督も脚本にも加わり色々と工夫されたと思いますが、正攻法の演出で良く纏
まった作品に仕上がっていて、見た後も爽やかな気分になりましたし、私は特に
前半が好きです。
後半は8日間が影響したか、各挿話が駆け足になったのが少々残念です。若い
俳優たちも抜擢に応えて好演です。決して上手いとは言えませんが、佐々部監
督作品で見出され、大きく育っていった俳優も多いので、将来を楽しみにしてい
ます。
佐々部監督の次作は「種まく旅人」シリーズと伺っていますが、この監督にはも
っと腰を据えた本格的な作品を撮って貰いたいとの強い希望があります。