通信制高校の説明会

ここ数年、ある広告社が主催する通信制高校説明会が一年に数回札幌のコンベンションセンターで行われている。中学生やその保護者などが多数参加して各高校の説明を聞いたり資料を持って帰ったり、相談したりする。これはそれぞれにとってきわめて貴重な体験と思う。参加する高校は今回(20日)は12校。一般の来場者は少し少なめだったが、熱心な態度で聞いたり各ブースを回ったりしていた。

実務はウチの若手が担っているが、いろいろ見聞を広げ参考資料を得たいと思い、毎回参加はしている。
通信制高校というのは、わずかではあるが学校数も生徒数も増加傾向にある。全高校生333万人中18.7万人が通信制に在籍している(公私立・2010年度)。2006年度は350万人中18.2万人。

少なくない高校の説明で気になるのは「ウチの高校は生徒さんたちの得意分野を活かす教育を進めています」という趣旨の話を強調する。この例としてネイル、ヘア、エステなどを学ぶことができるとしてこういう技術の指導を学校のメダマにしている旨の説明である。

「好きなことを無理のない形でやることが自分の将来につながる」ということもあり得るのかも知れないが、別の言葉で言い換えれば、高校時代あまり気が進まない勉強などしないで、好きなことをやることで「高卒」がとれるのだよ、ということだ。この言葉に釣られる子どもも少なくないかも知れない。

しかし、高卒資格は取れるのかも知れないが、こんなことで人生大切な時をついやしてダイジョウブか、と心配になる。また高校教育をそういう形で矮小化していいのか、という懸念である。ネイルもヘアもエステも、どんな仕事であっても一人前になるためには基礎になる知識や常に挑戦しようとする姿勢が必須であろう。国語力も科学の知識も場合によっては外国語も一定なければ、アソビの世界に終始するのならともかくとして、一人前になるためには容易ではない。高校時代こそ、さまざまな基礎力形成に必要な人間関係をつくること、勉強をすること、学び方を身につけること、多様な体験をすること、などが求められる。その上で、ネイルだろうと何だろうと、自分の好きなことにチャレンジしていって欲しい、と若者とその親たちにいいたい。

ただいい加減に「好きなことで高卒を」というような甘言にまどわされないで欲しいと願わざるを得ない。
私たちの通信制は、多少遠回りをすることになっても自分の生き方の基礎をしっかり築く学校生活を送らせたいと考える教育を進めているつもりである。「教育の本道を」が基本理念だ。
それにしても「通信制高校」もピンキリだ、と嘆かわしく思うのは私一人だろうか。

 

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