「特区立」の通信制高校-1

19日の朝日新聞は、通信制高校、特に特区立の高校についての文科省の問題指摘を大きく取り上げた。
「構造改革特区法に基づく『株式会社立』の通信制高校の7割が、同法が禁じている特区外での教育活動をしているとして、文部科学省は規制に乗り出す方針を固めた。『サポート校』と呼ばれる無認可施設を全国展開し、事実上の授業や試験をしている点を問題視した。教育内容についても『不適切な状態』があるとして、質の改善を促す」。

少々この記事に関連する事項を説明したい。一般に、学校設立は国か地方自治体か学校法人の三者しか認められていなかった。しかし、小泉内閣の時に、構造改革特区制がつくられ、教育部分に関してもいくつかの規制緩和策が生まれた。例えば、学校を新設すること、教育内容を学習指導要領にもとづかなくともよいこと、などである。もちろん教育分野だけでなく経済的な分野その他でも「特定の地域」の事情によっては、その地域内でという条件付きではあるが、この規制の例外(緩和)を認めるという施策が展開された。現在まで全国で24校(?)の通信制高校が誕生した。
しかし、特区立の学校には、「私学助成」は適用されない。「希望する学校は認可するがカネは出せないよ」といった原則である。

私たちは、長年「新しい学校をつくりたい」との希望や目標をもって取り組んできたのだが、先の「学校法人」をつくりためには、主として土地・建物の取得に要する数億円の費用がかかることや地域での私学団体からの拒否などが大きな壁となり、事実上は困難だった。
しかし上記特区制度を適確に活用すれば可能性が開かれるということが分かった。

この点で重要なことは、ある自治体と提携できるか、ということと、特別な事情・要求をどう確立できるか、また設立主体をどうするか、ということだった。
第一の点について、いくつかの自治体との連携の話があったが、最も積極的だったのは、わが故郷の和寒町だった。第二の要件は、1993年来進めてきている不登校の児童生徒の進路を保障するというテーマであった。この二つを把握するにはなんら問題はなかった。(なお現在ある特区立高校のほとんどは不登校の子どもをサポートするという趣旨をもっている)。
第三の問題点である学校設立と運営の主体を、当初「特定非営利活動法人(NPO法人」にしたい、これはフリースクールの運営と直結できると考えたのだが、政府筋から否定的な見解が示された。「前例がない」「NPOは持続的経営という点で信頼性に乏しい」と。つまり特区立学校を運営できるのは事実上株式会社だけという結論である。そこで私たちはいわばやむを得ず(株)会社組織を活用してこの条件をクリアすることになった。

2009年4月、念願の新しい高校を開くことができた。札幌自由が丘学園三和高等学校である。特区立であったとしても、学校教育法第一条が定めるレッキとして正規の高校である。ここにいたるまで多くのサポーター、卒業生や父母たちの支援があったのはいうまでもない。

(株)学校が問題ありという朝日の記事はきわめて一面的である。学校法人立の通信制高校はたくさんある。その多くが「サポート校」というあいまいな施設を運営している。だから、サポート校をもっている特区立高校が問題だ、というとすればこの指摘は通信制高校全体にひろげていうべきである。大規模な通信制高校ははるかに法人立の(普通の)私立高校が多い。

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