突然ですが、一冊本を紹介させていただきたい。
"Der Vorleser"
-Bernhard Schlink(ベルンハルト・シュリンク)-
「朗読者」と言うタイトルで日本では新潮文庫から出版されている。
著者は法学部の教授でもあり(確か)、大筋は少年が年上の女性と恋に落ちて云々・・という話なのだが、その他にこの小説は少なくとも3つの問題を提起している。
ひとつは戦後ドイツのナチスとの関わり。すなわち戦中の不名誉を如何に贖罪するのか、と言う問題。ここで面白いのは、問題の提起が法廷という場でいとも明快に行われているにも拘らず、「一体どのような残虐な行為を行ったのか」という点には殆ど触れられていないことだ。舞台は法廷であり、対象は過去の不名誉を背負った被告ではあるが、むしろその次の世代がその不名誉にどう接していくべきか、を巧みな関係像で考えさせる。
二つ目は、おそらく自分が曲がりなりにも法学部生だからだと思うが、法廷という場についてである。読めば読むほど、「この人本当に法学部教授か?」と疑いたくなるほど法廷が正義の場でないことを感じさせる。ただこれは、前述の問題を文学的精神的に解決しようとする試みがあることから、ことさら非合理性を強調する必要があったとも考えられる。
三つ目は、最も大きな伏線でもある文盲である。識字率ほぼ100%の日本においてはこの文盲という言葉は殆ど馴染みが無い(変換できなかったほど)。この本のレビューや書評を見てもこの点には殆ど触れられていない。
しかしこれに関して今日は特に述べたい。というのも、この本は舞台がドイツなのだが、ドイツでは文盲が歴とした社会問題として扱われているからだ。ドイツのような先進国でも?と思われるかもしれない。しかし、日本の平仮名カタカナ合わせて約100文字、常用漢字約2000字もありながら尚且つ「識字率ほぼ100%」という数字が驚異的なのだ。
ウィキペディアによれば、2003年度のHuman Development Reportという調査でドイツの非識字率はおよそ1%。ドイツの人口は約8000万だから、約80万人が文盲ということになる。世田谷区の人口が約80万人なので、この数字が正確ならば日本で言えば世田谷区民全員が読み書きできない、ということになろうか。
ドイツでは、時たま文盲に関する記事が新聞雑誌に組まれ、それをテーマにした小説や映画が作られ、ドイツ語のコースではしばしばディスカッションの題材に取り上げられる。日本では文盲が主題の作品を目にすることなど全くといっていいほどないし、仮に作られたとしても世に広まる可能性は少ないのではないだろうか。
ともあれ識字率ほぼ100%という、当たり前のようで当たり前でない現実を日本を離れてみて初めて意識されられた訳であります。
・・・書評って難しいですね。
どの程度まで話の筋に触れてよいものやら。。ともあれこの本は現代文学の中でお勧めできる数少ない一冊なので、是非手にとってもらえたらと思います。逆に言うと、伝統文学的な筆致なので「俺は村上春樹や重松清なんかのほうがイイ!」という人にはお勧めできませぬ。。
"Der Vorleser"
-Bernhard Schlink(ベルンハルト・シュリンク)-
「朗読者」と言うタイトルで日本では新潮文庫から出版されている。
著者は法学部の教授でもあり(確か)、大筋は少年が年上の女性と恋に落ちて云々・・という話なのだが、その他にこの小説は少なくとも3つの問題を提起している。
ひとつは戦後ドイツのナチスとの関わり。すなわち戦中の不名誉を如何に贖罪するのか、と言う問題。ここで面白いのは、問題の提起が法廷という場でいとも明快に行われているにも拘らず、「一体どのような残虐な行為を行ったのか」という点には殆ど触れられていないことだ。舞台は法廷であり、対象は過去の不名誉を背負った被告ではあるが、むしろその次の世代がその不名誉にどう接していくべきか、を巧みな関係像で考えさせる。
二つ目は、おそらく自分が曲がりなりにも法学部生だからだと思うが、法廷という場についてである。読めば読むほど、「この人本当に法学部教授か?」と疑いたくなるほど法廷が正義の場でないことを感じさせる。ただこれは、前述の問題を文学的精神的に解決しようとする試みがあることから、ことさら非合理性を強調する必要があったとも考えられる。
三つ目は、最も大きな伏線でもある文盲である。識字率ほぼ100%の日本においてはこの文盲という言葉は殆ど馴染みが無い(変換できなかったほど)。この本のレビューや書評を見てもこの点には殆ど触れられていない。
しかしこれに関して今日は特に述べたい。というのも、この本は舞台がドイツなのだが、ドイツでは文盲が歴とした社会問題として扱われているからだ。ドイツのような先進国でも?と思われるかもしれない。しかし、日本の平仮名カタカナ合わせて約100文字、常用漢字約2000字もありながら尚且つ「識字率ほぼ100%」という数字が驚異的なのだ。
ウィキペディアによれば、2003年度のHuman Development Reportという調査でドイツの非識字率はおよそ1%。ドイツの人口は約8000万だから、約80万人が文盲ということになる。世田谷区の人口が約80万人なので、この数字が正確ならば日本で言えば世田谷区民全員が読み書きできない、ということになろうか。
ドイツでは、時たま文盲に関する記事が新聞雑誌に組まれ、それをテーマにした小説や映画が作られ、ドイツ語のコースではしばしばディスカッションの題材に取り上げられる。日本では文盲が主題の作品を目にすることなど全くといっていいほどないし、仮に作られたとしても世に広まる可能性は少ないのではないだろうか。
ともあれ識字率ほぼ100%という、当たり前のようで当たり前でない現実を日本を離れてみて初めて意識されられた訳であります。
・・・書評って難しいですね。
どの程度まで話の筋に触れてよいものやら。。ともあれこの本は現代文学の中でお勧めできる数少ない一冊なので、是非手にとってもらえたらと思います。逆に言うと、伝統文学的な筆致なので「俺は村上春樹や重松清なんかのほうがイイ!」という人にはお勧めできませぬ。。
オレも法学部だし、こういう話は興味ある{スマイル}
文盲をテーマにした本なんて、なかなかお目にかかれないしね{ため息}
オレも…ってゆうかお宅のほうが専門でしょう。
我は法学は好きになれませぬ。
この本、最初の展開は我よりむしろショー氏にあってると思われるぞ。