日中は相変わらずの酷暑が続いていますが、少しずつ日が短くなってきたり、夜が涼しくなってきたりと、秋の足音がわずかながら遠くで聞こえてきているのを感じています。ブログがだいぶご無沙汰になってしまいましたが、とりあえず暑さのせいということにしておきたいと思います(汗)。
さて、69回目の終戦記念日を迎えた先週、日本とその周辺で私には腑に落ちない政治上の動きが2つほどありました。
1つは、安倍首相が靖国神社を参拝しなかったことです。このように書くと、「日本の総理大臣が靖国を参拝するのは当然!」という右寄りな方々の主張と同じように聞こえますが、そうではありません。少なくとも、私が今回感じた違和感は、日本国首相が靖国神社を訪れるべきか否かという問題とは別のところにあります。
安倍首相は昨年12月26日、電撃的に靖国神社を参拝しました。「参院選にも勝利し、支持率が安定してきたので昨年中に1度参拝しておきたかった」という漠然とした動機以外に、今もなぜその日を選んだのかの理由がまったくわからない突然の参拝について、私はこちらの記事で疑問を呈しました。私はこのタイミングで参拝を敢行するのは愚挙であったと考えていますが、その理由は100%外交上のものです。突然の靖国参拝は、対日強硬姿勢が行き詰まって袋小路に陥っていた韓国の朴槿恵大統領に活路を、南シナ海での権益拡大を狙う中国には中韓接近という形でつけ入る隙を与える結果となってしまいました。したがって、昨年末の靖国参拝は、その日に行かなければならなかったという特段の事情がない限りは、外交上の大きなミスであると私は考えています。
それならば、終戦記念日に靖国神社を参拝しなかったことに違和感を覚えるのは変だと思われるかもしれません。私が腑に落ちないとしているのは、今回安倍首相が靖国へ行かなかった理由が「外交上の配慮」とされていることにあります。つまり、昨年末は外交上の配慮をしないで参拝したにもかかわらず、今回は配慮するので参拝しませんとは、何たる矛盾というより無節操だろうと感じるのです。外交上問題があるから参拝しないというのであれば、昨年末の時点でするべきではなかったし、今回配慮するとした外交上の問題は、昨年末の参拝が大きな要因となって惹き起こされたものなのですから。
国内に目を向けてみても、肝心の終戦記念日に参拝しなかったことで、右寄りの人たちからも失望を買ったのではないでしょうか。結局外交上の理由で膝を折ってしまうということになれば、昨年の参拝はただのパフォーマンスだったのかという批判にもつながりかねません。韓国が折れる寸前まで追い込んだところで、靖国参拝で敵に塩を送り、今回の不参拝でこちらが反対に譲歩しただなんて、敵失サヨナラ負けに近いのではないでしょうか。
さらにいえば、安倍首相は靖国に参拝したいのなら、先週まであと半年待てばよかったのです。終戦記念日には少なくとも閣僚の何人かが必ず参拝するわけですし、そこへ首相が加わったとしても、中韓からみれば「今年は行くのかな?行かないのかな?…っあ~~、行きやがったか~」くらいで、諦観混じりの対応となったはずです。8月15日に日本の首相が靖国に行くかもしれないことは織り込み済みであり、もちろん抗議はしますが、半ばルーチンワークのようになっています。ところが、まったく関係のない師走に突如として参拝したものだから、隣国の激情に余分に油を注いだり、「こいつをどう利用してやろうか」などと悪巧みを練られてしまったりするのです。靖国参拝は、それ自体の是非と関係なく、するのなら8月15日を基軸としなければならないし、8月15日にしないのであれば、他の日にもすべきではないと考えています。
2つ目の出来事は、先週火曜日に行われたとされる、クリル諸島でのロシアの軍事演習です。クリル諸島とはロシア側の呼称ですが、このなかには日本の北方領土が含まれており、実際に北方領土内でも演習が行われたとされています。
この報道に触れて私が疑問に感じたのは、ロシアの目的です。わざわざ日本側の抗議を無視してまで行われたのですから、日本に対する何らかの重大なメッセージがあるとみるべきなのでしょうが、どうもそれがよく分かりません。ストレートに考えれば、ウクライナ情勢を受けての欧米各国の対露制裁に日本が加わったことへの報復とみるべきでしょう。
ですが、北方領土はウクライナと違い、ロシアが実効支配している土地です。ですから、半分残念なことに、北方領土で軍事演習をされたからといって、日本には実害(とくに経済的な)がほとんどありません。もちろん、既成事実化が進展してしまうとか、ロシアが領土交渉に応じる可能性が低くなるといった問題はありますが、少なくとも制裁に対する報復という目的とはそぐわないように思われます。それどころか、ロシアは武力で国境を変更・確定しようとする不誠実な国であると明言しているようなものです。
かといって、プーチン大統領は日本の総理大臣と違って実益を犠牲にしてパフォーマンスに走るような人には見えないので、何か目的があるはずではあるのです。それがどうにも見えてこないのが、とにかく腑に落ちません。
かなり穿って考えて、1つ思いついたのが、今秋に予定されているとされるプーチン大統領の公式訪日です。今回の演習を受けて、プーチン氏来日に黄信号が灯り始めたとされています。ふと国際情勢を俯瞰してみると、現状で日本はプーチン氏に来てほしいと思っていても、プーチン氏は行きたくないと考えている可能性が高いといえます。そこで、今回の演習によって、できれば日本側からの抗議によって「プーチン氏は行きたいのに行けない」という状況を醸成しようとしているのではないかな、という筋書きがふと浮かんできました。それならば、①領土で譲歩しないイメージをアピールし②強いプーチン像再びで国内での支持を高め③日本で会いたくない欧米側の記者団などの前に出なくて良くなるという、一石三鳥くらいは狙っているのかな~っと、邪推がはたらきます。
ウクライナ、ガザ、イラクのテロ国家と、武力衝突がらみだけでも今年だけで新しい問題がいくつも出てきています。そのようななかで、日本周辺でも不可解な動きが散見される状況というのは、なんとも不気味です。発足以来、政策については拙速な感の否めない安倍政権ですが、難しい国際情勢下での国の舵取りだけは、慎重に過たないようにお願いしたいところです。