塵埃日記

つれづれなるままに、日々のよしなしごとなど。

芸術の秋:印象派展覧会ブーム一考

2010年11月06日 | 徒然
 
 スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋。空気の冴えわたるこの季節、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 僕の場合は、目下のところ芸術鑑賞の秋にいそしんでおります。つい今しがたも、ブリヂストン美術館の『セーヌの流れに沿って』展を見てきました。この『セーヌ』展もそうですが、最近なんだかやたらと印象派の展覧会が増えているような気がして、嬉しい反面、流行化しているのならつまらないことだという感じも受けます。

 以前記事にした三菱1号館美術館の『マネとモダン・パリ』展をはじめ、前回展覧会の『ポーラ美術館コレクション』展に続いて『ドガ』展を現在開催している横浜美術館、国立新美術館や松岡美術館などでも印象派展が開かれました。Bunkamura ザ・ミュージアムに至っては、12月から『モネとジヴェルニーの画家たち』展がはじまり、すでに終了している二度の展覧会と合わせて今年だけで三度の印象派展が催されることになります。

 印象派好きの自分としては、楽しみが続くという見方もできます。しかし、こうも猫も杓子も印象派といったようすでは、ブームを追いかけているだけで少々品がないようにも思われます。とはいっても、結局全部見に行くつもりですけどね。。

 以前、五島美術館で有名な茶碗が勢ぞろいする展覧会がありました。普通、茶道具の展覧会では、1つの道具だけ並べるということはほとんどなく、基本的にお茶会で使う一揃いの道具を何セット分か展示するのが常道です。ですが、茶道具といえば、一般的には香炉や建水などよりも、まず茶碗を思い浮かべることが普通です。ですから、有名な茶碗を一堂に集めるというのは、茶道具の展覧会としては非常にキャッチーでアピール力の強い企画であったといえます。

 自分も、普通なら1つの展覧会で1つか2つ程度しか見られない名物茶碗がずらりと並ぶとあって、胸を躍らせて出かけました。ところが、実際に訪れてみると、期待していたほど感動しませんでした。それどころか、居並ぶ有名な茶碗を見ているうちに、膨満感あるいは食傷に近い感じを覚えました。次から次と出てくる大名物に、お腹一杯でした。

 要は、過ぎたるは及ばざるがごとし、というやつです。茶道具なら様々な取り合わせの中で、絵画なら様々な主義や方向性の中で、それぞれの作品が映えてくるものなのだと思います。やたらめったら有名作品ばかり集めればよいというものではなく、展覧会としてのテーマがきちんと座っていなければ、どんなに良い作品が並んでいても何となく空虚な展示となってしまうのでしょう。

 今年に見た数ある印象派展の中でも、テーマがきちんとしていて説得力のある展覧会もあれば、コンセプトがはっきりせず、あまり感動の残らない展覧会もありました。今月も、とりあえずAPECが終わったら横浜美術館に行く予定ですが、ぜひとも前者の展覧会であることを祈るばかりです。

 
本日のおまけ:絵画つながりで。