Jerry Emma Laura Piano

Mina, Dalida, Barbara, Laura, Lara....美人大好き! あっ、Mihoが一番好き

やっぱり写真はアルバムで整理しないといけない

2015年10月23日 | 毎日の話

ポジフイルムとは違い、デジタル写真は気楽に撮影出来るから、適当に撮影してハードディスクに入れて後から整理しようなんて思っていると、どこで撮影したのか訳が分からなくなる。昨日の夕飯は何を食べたのかも忘れるくらいだ。ちゃんと、整理しておこう。まぁ無理だと思う。ズボラは絶対にダメだ。

ベルンの旧市街地のメイン通り。

これは、チェコのクトナーホラだったかな。

ここはどこ、私は誰、状態です。

これは日本だ。このくらいはわかる。

あれ、奥様だったかなぁ。

 


明日は同窓会。50年ぶりの再会

2015年10月23日 | 毎日の話

明日の夜は久々に同窓生に会える。源太郎は今日創立記念特別休暇でお休みだった。そこで、古いアルバムを引っ張り出し、中学時代の集合写真を探し出し、スキャンしてプリントアウトしようと奮闘。

アルバムから写真が剥がれない。そこで油絵のナイフを取り出し一枚ずつ丁寧にはがす。全部白黒なのが時代を感じます。スキャンしたデータはハードディスクにとりあえず保管。すると、そこには未整理の写真がいっぱい。撮った場所がわからないものもある。これは90式戦車にMihoちゃんと乗った時。まだ第二東名は未完成。

これは松本城だよね。

ここは、スイスのベルンの肉屋さん。

これは北海道の洞爺湖だったかな。

これはEmmaちゃん。Lauraが来る前だからまったり。

ここはどこ。

ここはバーゼルだったかな。


続続々源太郎(11)

2015年10月22日 | 腰折れ文
今朝は、ミレイマチューを聞きながら出勤ですね。浮気者と言われそうですが、彼女の巻き舌もいいものですよ。

十一 再びVienna

智子は美味しいラインワインを飲みながら楽しめるViennaの郊外にあるグリンチングという愉快な居酒屋街に行こうと言い出した。少し彼女は疲れているようだったので、今日は近場でと言ったが、行きたいというので、それに従った。今思えば、どうしても源太郎にその場所を教えておきたかったのだろうと思う。母親との思い出を味わいたかったのだろうとも思った。

オーストリアの酔っ払いをブアンバイザーと言ったと思うと智子は道すがら源太郎に話した。「どう言う意味だい」「ワインを歯で噛む。って意味なの。それ以上わからない。お蕎麦や餅は飲むというわよね、ワインを噛むってどんな意味なのかしら」

智子はドライバーにその意味を尋ねた。「お客様、簡単なことですよ。随分昔の事になりますが、葡萄の害虫にフィロキセラっていう虫が大発生してこの周辺の葡萄が全滅したんです。虫に食い荒らされたんですね。だから、飲兵衛が集まるとワインがなくなる。害虫みたいに噛んで飲んでしまうということなんです」「ありがとう。そう意味だったの」智子は長年の疑問が晴れて納得している。

居酒屋街は新鮮だった。庭木に灯りを灯し、日本で言えば赤提灯だ。そして店の中には陽気な飲兵衛が集まり民族楽器で歌ったり踊っている。テーブルにはワインは勿論のこと、ウインナ・シュニッツエルというカツレツにレモンをかけてみな手を伸ばしている。お客をかき分け席を確保すると、智子の隣の親父が、サッとグラスとはこばせ、まずい酒だが美人がいれば美酒だと言って数人が乾杯の仕草をすると、「姫君に」と言って彼らは盛り上がった。見ると智子は完全に彼らの姫君になっている。英語もドイツ語もまともに話せない源太郎は人間観察に徹した。それにしても、あの楽しそうな智子の笑顔は今でも忘れない。

飲兵衛達は、決まった順などなく、得意な歌を歌い始める。店の楽団はすぐに傍に来て伴奏する。ワンフレーズが終わる頃、大合唱になるから不思議だ。そして初老の親父が「姫君が歌うぞ」と言った瞬間、店中が静まり帰った。智子は恥じらいもなく立ち上がり、バンドに曲名を伝え歌い始めた。彼女の歌を聴くのは久しぶりだ。「E penso a te」国境を背にしたイタリアの名曲だ。何時でも君を思う、何処にいても、何をしていても君を思う、と歌い始めると彼らはグラスを少し掲げ、聴き入っている。透き通った智子の声は、店中を満たし、彼らを満たした。大合唱など始まらない。リサイタルのようだ。

源太郎はフイルムの残りを確認して、何枚かパンフォーカスで撮影した。広角のビヨゴンのレンズはしっかりと店内の雰囲気とスター誕生の瞬間を切り取った。その写真は源太郎の執務室の机の左端の電話機の横で微笑んでいる。

絵理香は、この居酒屋街に来る事に難色を示していた。それは単におしゃれしてレストランに行きたかったと言っていたが、これ以上、源太郎の奥様との思い出に立ち入りたくない女心がそうしていた。源太郎は、そう言ってもあの雰囲気に今一度触れたかった。もう一度来れる保証などない。「明日は希望を叶えるから、今日は付き合ってくれないか」珍しく源太郎は絵理香にお願いした。しばらく考えていた絵理香は「わかったわ。明日は埋め合わせしてもらいますからね。覚悟しておいてね。ねえ、服装はどうすればいいの」「そうだな。ラフでいいけど、シックなスカートがいい」「ええ。ホテルのお店に気に入りそうなスカートがあったわ」「ちゃっかりしているな。いいよ、わかった」絵理香の悪戯顔が笑える。

居酒屋街は、時が経ったが変わらない。智子との店も何一つ変わっていない。オーナーは世代が変わったのか、息子が後を継いだということは後で知る。あの時と違って絵理香が店に入ると客をかき分けることもなくサッと席が空いた。絵理香は彼らは近寄りがたいのか、智子のようにいきなり仲間とはいかなかった。

店のオーナーは、絵理香に片言のフランス語で「Vous avez choisi? 」と聞いた。絵理香はすぐに、「Quelle est votre suggestion du jour? 」と切り返した。「ここは居酒屋だよ。今日のおすすめなんてないさ」キョトンととしているオーナーに、源太郎はカツレツとハウスワインを頼むと告げ、事なきを得た。隣のオヤジは絵理香に興味を示しているが、話しかけてはこない。

奥のテーブルの紳士が歌を歌い始めた。そして歌に包まれた。絵理香は少し酔い、隣のオヤジと話し始めた。彼はフランス語はわからない。仕方なく、英語で会話を始め、源太郎と智子の話しを告げた。すると、周りがざわめいた。奥の初老の英語が堪能なオヤジが、「伝説の姫様だよ」と言った。そして、「あなたは、娘か?、彼女は元気か」と矢継ぎ早に絵理香に問いかけてきた。
「あの歌声は、ここの店では伝説なのさ。俺ら酔っ払いがあの時だけは静かになった。そうか、亡くなったのか。残念だなぁ」とさいだいげの賛辞を送った。源太郎は頭を下げ、胸の財布から、あの時の写真を取り出した。オヤジは、絵理香の隣の男に席を替れと告げ、グラスを持って移動した。写真に見入り、オーナーを呼び、彼女に献杯するから、店中の皆にワインを注ぐように言った。オーナーは早口のドイツ語でその趣旨を客に伝え、一同は立ち上がり、智子が歌ったあのうを歌い始めた。源太郎は、耐えきれず涙を流した。絵理香は何が起こったのかわからなかった。
そして歌い終わると、皆が杯をあげ、十字を切る男もいた。源太郎は幾度も頭を下げた。その肩をオヤジは幾度もたたいている。

時間が過ぎた頃、突然、絵理香が私も歌うと言い出した。源太郎は、そんな絵理香を止めた。絵理香は私も学生時代に合唱団にいたと初めて源太郎に言った。それでも源太郎はやめるように諭した。その雰囲気を察したオヤジは、彼女が歌うと隣に告げると、すぐに店中にその話しが伝わった。源太郎は、心配したが、結果として心配は無用だった事が彼女が歌い始めてすぐにわかった。
彼女の選曲も智子と同じイタリアの名曲を選択した。源太郎が良く聞く、Donati Tiziana Toscaが歌っていた「Serenata De Paradiso」だった。彼女の声もこの酒場を満たした。誰もが聞き惚れている。そしてオヤジは「あなたは幸せものだ。そして姫様をまたここに連れてきた。二人もの姫様を持つとは、羨ましい」と言った。歌い終わると、店中は拍手で満たされた。智子が絵理香に乗り移ったと思えた瞬間だった。

やっぱり、ミルバは最高。

2015年10月21日 | 音楽の話
ミルバとピアソラの日本公演のプログラムには、ミルバのコメントが掲載されている。1939年生まれの彼女だから、48歳になる歳にこのジョイントコンサートが開かれた。

このショーは1984年の秋、パリのブッフ・デユ・ノール劇場で初めて作られ、それからヨーロッパ中で上演されたものです。それ以来数年間私たちはずっと上演し続けてきました。それにアストル・ピアソラと彼の素晴らしいクインテットと再びステージで共演することはたまらない誘惑です。皆様もそれに気づかれことでしょう。ピアソラのタンゴは彼の国のポピュラー音楽に根付いていますが、それはジャズや20世紀の教養豊かな音楽とも結ばれています。このように彼のタンゴはもうアルゼンチン・タンゴではなくアストル・ピアソラのタンゴなのです。
まさにアメリカ的でまた中央ヨーロッパ的なキャラクターゆえにアストルは自分の音楽に声を与えるため私を選び、私は自分の声に音楽を与えるため彼を選びました。そして、私たちは一緒にこの喜ばしい贈り物の相手として皆様を選びました。

こんなコメント。ミルバだから様になる。

このコンサートは中野サンプラザホールで公演された。ピアソラの録音は幻が多い、この録音もう例にもれず、そうらしいが、藤沢嵐子の録音もうそうだったことは前に紹介した。今では、ピアソラといえば誰もが知ってるタンゴの奏者だが、アルゼンチンではそれほど、というよりもラインから外れていた。ミルバや藤沢嵐子さんの力を借りて、やっと母国でも認知された。

今は、アメリカナイズされた音楽ばかりがもてはやされている。源太郎はあえて言いたい。音楽業界の方々はもう少し欧州も見て欲しい。大好きなLaura Pausiniを是非呼んで欲しい。

いや、呼ばない方がいいかもしれない。(矛盾)、どうせ、「にわかファン」に囲まれるだけだから、その方が彼女のためかもしれない。ラクビーしかり、すぐに燃え上がり、冷めやすい日本人には彼女のようなスターは紹介しないほうがいいかも。と思ったりする。

続続々源太郎(10)

2015年10月21日 | 腰折れ文
Mihoちゃんから、2000文字以内にしなさいと前から言われている。1時間で書ける量なので、それで纏める。これが結構辛い。今回は100文字ほどオーバーした。前振りが長すぎた。反省。

十 メコン川

源太郎は憧れのメコン川に思いを馳せ飛行機の席に座っている。まだ飛行機は数名の搭乗客を待っているので、電話をしている者もいるし、一生懸命メールを打っている者いる。絵理香は時計型の端末で、素早くメッセージを確認して運ばれてきたシャンパングラスを右手に持って、窓の外を眺めていた。

「ねえ。よく休みが取れたわね」話すことがないのか、源太郎に向かっていつものように嫌味を投げた。
「ああ、お前に合わせんだよ。帰ったら仕事は山積みだよ」
「あらそう。私と旅をしたかったて、素直に言えばいいのに」
「はいはい。旅の始まりから、その調子かよ」源太郎は、飲みきったグラスを肘掛のスペースに置いた。CAは、何気なく近寄り、おかわりはいかがと話しかけて来たが、源太郎は丁寧にいらないと答え、CAはグラスを下げ、ナプキンで肘掛を拭き戻って行った。

搭乗口のドアが施錠され、CA達は施錠の相互確認をしている。

巡航高度を一路タンソンニュット国際空港に進路をとり飛行している。絵理香は機内食にはあまり手を付けず、飲み物だけを飲んでいる。「少しは食べたら」と声を掛けたが、「ええ」と答えるだけで、雲海を眺めていた。源太郎は程なく食事を終え、テーブルを片付け、リクエストした映画を見始めた。暫くすると、隣で寝息を立てる絵理香に気づき、CAに彼女の食事をさげてもらい、右手のグラスは、肘掛に戻した。

「寝てしまったわ」
「ああ、間も無く着陸態勢にはいるよ」
「ごめなさい、化粧室に行ってくるわ」と絵理香は席を立ち前方の化粧室に行った。

源太郎は、初めて絵理香の寝顔を見たが、いつもの毒舌を放つ彼女とは別人で子供のような寝顔だったと思い出していた。化粧室から出ると、絵理香はCAと立ち話して席に戻った。すると、CAがシャンパングラスを持って、絵理香に渡した。
「まだ飲むのか」
「ええ、喉が渇いたの」
彼女は、ワインボトル一本飲んでいたと思うが、酔ってはいないので、ダメとも言わなかった。

空港に降り立ち、迎えの車に乗ると、市内の中心部にあるマジェスティックホテルに直行した。
このホテルは立派だが大きな車寄せはなく大きな通りに面していた。二人は、短い旅行のためコンパクトな荷物をそれぞれが持ちカウンターに向い、それぞれがチェックインした。
ボーイが二人に駆け寄り、案内するというが、源太郎はお断りしてエレベーターホールに向かった。絵理香は、慣れたもので、ボーイに荷物と鍵を渡し、後から同じエレベーターに乗った。
「ねえ。夕食には時間があるでしょ。お互いにゆっくりしましょうね」
「ああ、夕食は何処にする」
「今日はホテルのレストランにしましょう。いいでしょ」
「じゃ、八時に。予約は入れておくよ」
「お願い」
絵理香は3階で降りて、部屋に向かった。源太郎は4階で降りて、部屋に入ると窓の外の景色を眺め、東京のホテルと違わないと思った。それでも、部屋は広く、花が飾られ、落ち着いた雰囲気に満足した。

ホーチミンという名前に馴染みはない。この町はベトナム最大の都市で、1975年まではサイゴン Saigonと呼ばれていたはずだ。メコン川デルタの北東に続くドンナイ川デルタにある。18世紀後半からフランス勢力の拠点となり、19世紀後半~20世紀前半にはフランス領インドシナ中心地だった。源太郎が知っているベトナムは、ベトナム戦争と、メコン川、そしてアオザイぐらいだった。

明日からの散策は、メコン川のゆったりとした眺めと、アオザイをきた女性達を見る事くらいしか想像できなかった。

アオザイは、確か「Britannica Japan」と英語では表すはずだ。でも、このベトナム女性の伝統的民族服は中国の伝統服をベトナムの風土と民族性とに同化させてできたものだから、Japanという単語がなぜつくのか昔から不思議にだった。中国風の襟と前開きの丈長の上衣チョーサンと、ゆったりしたズボンのクーツーが基本だが、チョーサンは身体にぴったり合わせて仕立てられ、裾から腰にかけてスリットがある。クーツーは幅広にゆったりとして白無地のサテンが使われるが、今は少しカラフルになっていると、物の本で読んだことがある。最近は異なる場合も多くなった。この姿はまず欧米人にはにあわない。そんなことを想像しながら、使いにくい欧州的なバスルームで汗を流した。

メコン川は、東南アジア最長の川で、中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、そしてベトナムを流れる延長が4000kmを超える川で、流域面積は日本の面積の2倍もある。「メコン」はタイ語系の呼び名でカンボジアではトンレトム と呼ばれ、ベトナム人はクーロン川と呼ぶ事もある。クーロンは龍の意味があるから曲がりくねる川を龍に例えたのだろう。日本の信濃川でも呼び名がいくつもある。ましていくつもの国を流れる川だから、当たり前と言えば当たり前だ。

源太郎は、レストランの予約を入れ、絵理香にそれを伝えようと電話をしたが、電話に出ない。寝ているのだろうと想像して、源太郎も持ってきた本を読むことにした。

日も暮れて、街灯りがはっきりしてきた頃、突然電話が鳴った。
「私。予約できたの。連絡してよ」
「三時過ぎに連絡したが、寝てたんだろ」
「いいえ、ちょっと出かけてきたのよ。寝るわけないでしょ」
「そりゃそうだな。あんだけヨダレ垂らして、飛行機で寝ていたからな」
「失礼ね。わけないでしょ」と言っている絵理香の電話口の顔は想像できた。源太郎はレストランの名を告げ、まだ間があるので本を読み続けた。

レストランの前で待っていると、アオザイをきた女性が声を掛けてきた。振り返ると薄いブルーのアオザイを着た美人が立っている。それが絵理香だと気づくのに少し時間がかかった。ストレートな黒髪、そしてスレンダーな身体の線が美しい。
「いいでしょ。惚れ直した」と絵理香が茶化す。

今朝はMilvaの日本公演のCDを聞いて出勤

2015年10月21日 | 音楽の話
Milvaがピアソラと共演した東京公演のライブ録音。1988年だからまだ大阪にいた頃だ。ハリのある歌声は、バンドネオンと対等、それ以上の輝きがある。

ライブ盤は、PAが介在しているので、臨場感は伝わるが、本当の音ではない。だから、やっぱりお金を払って生の音を聴くことが如何に贅沢なことなのかわかる。

と言ってみても、よほど余裕がなければ、聴くことは出来ないので、仕方ない。それでも、聞かないより、聴くことが大事。彼女の歌声を聞きながら、何時もの席に座った。


なんでいい年して飲み屋で仕事の話

2015年10月20日 | 毎日の話
小洒落た店で、ふさわしくない上司と部下。こちらは懇親会の後だから、というよりも、仕事の話が大嫌いな二人、もう二人は仕事の話が好きな二人の四人。隣の見知らぬ二人は、所長と課長と言っている。

所長は偉く講釈を並べているが論理的でない。課長は課長で頷き、時折意見を言うが、直ぐに所長は話を被せ、意見を断ち切る。

論理的におかしい会話を聞くのは嫌ではないが、ここまで来て、意味のない会話が続き右耳が疲れる。

人間の耳は素晴らしく、ある周波数をロックオンすると鮮明に音を拾う。それが困る。支離滅裂な哲学が展開される。止めろと言いたいが、彼らも客だ。

そして、支払いになった。割り勘である。端数までしっかり割っている。課長という男もバカだ。あれだけ言いたい放題言われて割り勘かよ。所長という男は、また飲もうと誘い、課長はよろしくお願いしますと言っている。

源太郎なら、バカ言うな。同じ金を払うなら違う人と飲むという。幸い、もうこの世にいない先輩から割り勘を言われたことは一度もなかった。先輩いわく、おまえより俺の方が給料は高い。しかも俺が誘った。だから俺が払う。といつも言われた。そして、おまえが上に立ったらそれを忘れるなと教えられた。

今でもそれは実行している。さらに、先輩は、仕事の話はしなかった。それより、戦時中のことや、笑い話ばかりした。飲んでまでなぜ仕事の話をする必要があるとまで言った。一緒に行った二人は仕事の話を延々やっている。源太郎は席を中座して帰ることにした。付き合いだが、仕事の話をしに来た訳ではない。

皆、世間が狭すぎる。仕事は会社や役所でやればいい。飲み屋でするなら、時間外を払え。

ということで、無駄な飲み会だった。愚痴。

続続々源太郎(9)

2015年10月20日 | 腰折れ文
くどいようですが、架空の話ですからね。


九 再び居酒屋

「今日は神田」とだけメールした。
「了解」と愛想のない返信が返ってくる。暫くして「何時」とまたメールがあった。
どうせあいつは会議中に時計型の携帯端末で、さも人の話を聞いているふりをしながら、定型文を送っているに違いないと源太郎は予想して、返信するのを少し遅らせた。

また暫くして、「返事は」とメールがある。小学生じゃあるまいに、単語だけの会話かよと思いつつ、「7時」と返信、すると今度は応答がない。旅行中とは別人の様な彼女だが、単語だけで話が成立するのだから気楽だ。

本当は、もう少し早い時間でも良かったが、絵理香はそれなりのポジションにいるから、直ぐに退社は難しいはず、待ち合わせにはまだ時間があるので、秋葉原の部品屋を覗き、万世橋のガードをくぐり、中央線沿いに神田駅に向かった。有楽町のガード下と違い、寂れた倉庫が並んでいる。大通りを渡って路地に入ると再開発された淡路町とは違って、下町の風情が残っている古い建物が目立つ。そこでも、大丈夫かと思える古い建物の居酒屋が待ち合わせの場所だった。

縄暖簾をくぐると、店の女将が「源さん、愛人来ていますよ」と店中の客に聞こえるように源太郎の来店を告げた。この女将は、誰にもそういうので、常連は誰一人振り向かない。銀座や赤坂のように同伴する客層でもないから、そんな雰囲気の女性もいないから、驚きもしない。

ただ、初めて、絵理香をこの店に連れて来た時は話が違った。垢抜けた美人の彼女が暖簾をくぐって店に入った時、女将は言葉に詰まった。そして「お一人ですか。お待ち合わせ」と絵理香に聞き、「はい、源太郎さんが」と言うと、女将は「源さん、あちらです」と借りてきた猫のように、案内した。源太郎は女将に「へー、ちゃんと接客できるんだ」と言うと、女将は、笑いをこらえて、勘定場に戻った。

暫くの間、店中の客は絵理香に視線を送っているのがわかる。それはそうだ。場違いのようにキャリアウーマンだということは誰でもわかる。そして、髪を束ねる所作もこの辺にはいないし、美人だ。源太郎も「お前たち、この位の美人をこの様な店に連れてくるチョイワル親父になってみろよ」と得意になっていた。その時、あの女将が普段に戻って、注文を聞きに来た。ふだん聞きにも来ないのにおかしい。

「源さん。紹介してよ」
「娘です。そう答えたらいいのかしら」
「わけないよね。源さん」源太郎は黙っている。
「旅先で知り合ったんですよ。ねえ、あなた」
女将はわけわからない。絵理香の方が一枚も二枚も上手だ。
「そうね。お友達以上かしら」
「源さん。よくやるね。こんな美人隠していたの。今度、熊ちゃんが来たら教えよ」
「やめろよ。あいつに漏れると、町中にてんこ盛りの話が伝わる」源太郎はやっと口を開いた。
「女将さん。彼と同じ飲み物をお願いします。それと柳川鍋もお願いします」
「お嬢さん。泥鰌は大丈夫」
「ええ。大丈夫だと思います。彼が、ここの泥鰌は最高だと言っていたので」
「あいよ。嬉しいじゃないの。源さんはいつも私の顔を見て、美味いものもまずいというんだから。じゃ、あなたを愛人ということで覚えておきますよ」
「ありがとうございます。彼が浮気していたら教えてね。女将さん」
「直ぐに教えますよ」と言って戻って言った。注文なんて口実、ちょっとの会話であの女将は、客の関係を素早く見極める。そうでなければ、この老舗の店が繁盛するはずがない。女将から絵理香は明らかに上位の評価をもらった。

それから、何回か彼女は一人でこの店に来て、女将の友達とかしていた。そして熊沢とも飲むこともあった。だから、神田というだけで、絵理香はこの店とわかっていた。

席に着くと珍しく、枡酒を絵理香が飲んでいる。「もう、日本酒か」
「ええ、飲みたかったの。遅いんだから」
「バカ言え。約束より15分も早いじゃないか」
「六時半でも良かったのに。聴かないんだもの」
「お前が、返事よこさないからじゃないか」
女将は、源太郎の酒を運んできて、「あらあら、喧嘩。また源さんが浮気」と冷やかした。
「そうよ。私に隠れて、秋葉の方にいい人がいるの」
源太郎の行動が読まれている。「ああ、いるよ。かわいい子たちがね」源太郎が悔し紛れに切り返した。
「ちゃんちゃらおかしいわ。こんなじいさん誰が相手するもんですか」
「はいはい。ご馳走様。伝票つけておくから」
「つけるなら、一杯大将にやってくれ」
カウンターの中にいる大将に聞こえるよう女将に言った。「源ちゃん。いただきます」と大将が左手を上げた。女将は商売上手だ。

「ねえ。私、来月リフレッシュ休暇が一週間あるのよ。この前話したでしょ」
「ああ」
「でね。旅行に行きたいの。遠くは無理だけど、ベトナムがいいと思っているの」
「それは楽しみだね。気をつけて行ってこいよ」
「何言っているの。どうせあなた暇でしょ。付き合ってよ」
「バカ言え。俺も忙しいんだよ」
「わけないでしょ。日程はこれよ」と言って絵理香はタイプされた旅行社の行程を渡した。
「いいところだと知っているけど、急に言われてもな」
「明日、返事頂戴ね。今日は私がおごるから」
源太郎は初めての旅先だから興味はあったが、切り返した。
「明日、スケジュールを確認するけど、一人で行ってこいよ。リフレッシュなんだろ」
絵理香は、聞いていない。女将に何杯めかの酒を頼んでいる。

今日も二人とも仲良く

2015年10月20日 | 毎日の話
一応、二人は源太郎が出勤する時間になると、さも起きていたような態度を示す。いなくなると、しばらく格闘して、それぞれの寝床に分かれて寝るはず。

Lauraは、ビデオレコーダーが新しくなって寝床にしようと思っているが、今のレコーダーは奥行きが狭く、お尻が収まらないし、網網の針金スノコを敷かれたから、寄り付かなくなった。

なんやかんや、それでもかわいい娘達です。




Cafe de los Maestros

2015年10月20日 | 毎日の話
今朝は少し早く起きてしまった。Mihoさんは、風邪ぎみでちょっと辛そうです。

ベッドには、メタボのLauraが重しのように寝ているので、それも辛そう。

Emmaは、朝からスリスリして甘えてくる。まだ火曜日。少し気合いを入れるため、Cafe de los Maestrosを聞きながら出勤です。

いつも楽しみに読ませていただいているブログの猫さんが、ちょっと病気と聞き、心配です。猫さんもストレスが大敵。ただ早めの病院に行かれたようで、さすがと思います。Emmaは変化に気づくのが遅くなって、病気が悪化したのを今でも悔やんでいます。お大事に。

さて、源太郎もストレスがあるが、行ってくるか。Mihoちゃんが、頑張ってお弁当を作ってくれた。ありがとう。

続続々源太郎(8)

2015年10月19日 | 腰折れ文
八 ザルツァハ川

Salzach川は、オーストリアとドイツの国境付近を流れるイン川の支流だ。日本なら大きな川になるのだろうが、ヨーロッパでは小さな川でキッツビューラーアルペンから谷底の村々を流れ、ザルツブルクに流れ下る。落差があまりないので、水力発電はあまり盛んではない。それでも、古くから金属鉱山や岩塩鉱山があり谷筋に沿うアルプス山中の村としては裕福なところだった。

川を隔てて、旧市街と新市街地が別れて見えるが、さほど大きな町ではなく、なぜこの町が人気があるのか源太郎は不思議に思っていた。

元々、この地は、ローマの植民地に始まり、以後カトリック文化中心地となって芸術や音楽の都として発達したのは事実だが、左岸の旧市街に大司教の居館や大聖堂、尼僧院、そしてモーツァルトの生家があるものの、植民地文化の遺産だけで、建物は欧州のどこにでもある風景だった。

しかし、何処かの国と同じで、20世紀の終わりに世界遺産の文化遺産に登録されて、猫も杓子も観光客がやってくるようになったのだが、それ以前も欧米の観光客は来ていた。それは、あの映画一本のお陰で、観光地となっていた。

旧市街を見おろす丘には、11世紀に築城されたホーエンザルツブルク城があり、今は観光客がひしめき合っている。右岸の新市街にはバロック様式のミラベル宮や聖セバスティアン聖堂が見渡せる展望台には、色々な国の言葉がこれ程あるのかと思うほど、会話が飛び交っている。

源太郎はうんざりしていた。
「あの頃は、せいぜい、英語、ドイツ語、フランス語ぐらいの言葉だった。あのように、大声で話したり、喧嘩しているような会話を聞かされる場所になってしまったのは残念だよ。もっと静かに景色を見る事が出来たのに」
「でも、美しい街並みは変わらないでしょ」
「ああ、欧州の街並みはほとんど変化がない。それはそれでいいんだが、この雰囲気は最悪だ。あれじゃ、スーパーマーケット帰りのおばさん達の遠足だよ。なんで、案内荷物を持って散策しなくちゃいけないのかな」
「しょうがないでしょ。ケーブルの乗り場までお土産屋がいっぱいだし」
「見てみな。みんなモーツァルトの絵柄のチョコレートを持っている。あんな重いものを持って上がって来るかい」
「そうね。私なら嫌だわ。私ならあなたに持ってもらうわよ」
「そうきたか。お城はもういいだろ。散策路を降りて行こう。あの集団とは一緒にならないだろうから」
「分かったわ、降りましょう」
源太郎と絵理香は石畳を降り、未舗装の小径を降りて行った。数人の欧米人のカップルも同じような行動となっている。
「本当に静かだわ。昔はどうだったの」
絵理香は足元を気にしながら、昔のザルツブルクの様子をもうすこし聞こうと思った。
絵理香は、スリムなパンツ姿で、外国人にも引けを取らない。すこしスレンダーだけど、魅力は充分だ。良くこれだけの洋服をあのスーツケースに収まっていたのか驚かせられる。
「昔は、あのお城のテラスは静かだった。会話は小声で、他人の観光を邪魔をしない様に、みんな気遣っていたよ。木陰や、ベンチに腰掛けて、抱擁するカップルもいたけど、今じゃ、そんな雰囲気なんて感じられないね」
「じゃ、奥様とそんな風だったの」
「それは別だよ。あそこから見るザルツアハの流れをずっと眺めていたのさ」
「私もその頃のこの街を見てみたかった」
「二十年早く生まれていないと無理だよ。もし見ていたなら、もうおばあちゃんだよ」
「そうか、そうだわよね。その時なら、あなたと一緒にここにはいないわね」
「まあ、そうゆことだね。その方が僕は良かったよ。賭けに負ける事も無かったしね。一人で来たかったしね」
「それは、ご迷惑でしたわね」
彼女の髪は少し風に揺れ、横顔はハッとする程綺麗だ。そんな思いを打ち消す様に源太郎は言った。
「もう少し歩けるかな」絵理香は足元を気にしながら答えた。
「少し休みたいわ。お茶でもしない」
「わかった。そこのカフェに入ろう。店の中でなくテラスでどうだい」
「いいわよ」絵理香は足を早めた。

化粧室から絵理香はもどり、ストレートの髪は整えられ、薄い化粧も一段と綺麗だ。
「私は紅茶、あなたはコーヒーよね」絵理香の注文は智子と一緒だった。違うのは、英語とフランス語の違いだ。
「 thés et un café, s’il vous plaît」
すると、ボーイは「Oui,Mademoiselle」と答えた。
絵理香は、上機嫌になった。
「ねえ、聞いた。私の事をお嬢様と言ったのよ。普通ならMadameでしょ」
「聞いていなかった」と源太郎はとぼけた。
「聞くべきだったわよ。でも私はMadameの方が良かったかも」女心はわからない。
「grand-mèreが似合っているんじゃないか」
「失礼ね。聞こえていたの。どっちがあなたにとっていいと思う」
しまった。また絵理香の手中にはまった。仕方ない。
「そうだな。女性的にはMademoiselleだけど、僕ならmadameを選ぶな」
「そう」切り返しを考えているのは明らかだ。
「奥様に見えたら、そういったでしょうね。私たち他人だから、仕方ないわね。あなたは年寄りだし」
口数が減らないやつだなと思ったが、本当の事だし仕方ない。
「さて、新市街地に行くか。あの人道橋を渡って」
「いいわよ」