○森美術館『中国★美の十字路展:後漢から盛唐へ』
http://www.mori.art.museum/html/jp/index.html
森美術館で、この夏、中国美術展をやっていると気づいたのは、つい最近のことだ。だいたい国立や公立の美術館に行くと、同種の施設のポスターやチラシがあるものだが、森美術館の情報には、全く接することがなかった。たぶん全く違う方面に、広告戦略を広げているのだろう。連休初日、友人を誘って、おのぼりさん気分で六本木ヒルズにある森美術館を訪ねた。
結論から言えば、見応え十分。会場入り口に掲げられた巻頭言を読んだ友人が、この場に及んで「200点以上も出てるのか!」と驚いていたが、普通に見ると2時間はかかる。質も高い。美術品と考古遺品では比べられないところもあるけれど、個人的な評価では、江戸博の『シルクロード展』(これもよかったけど)に優り、昨年の『中国国宝展』並みだと思う。
中国の14の省・市・自治区、43ヶ所の機関から出品されているとのことだが、甘粛省の武威、新疆ウイグル自治区からの出品が目立ち、中国固有の(漢民族)文化よりも、東西文化の交流軸(シルクロード)が強調されているように思った。それから、内蒙古、寧夏、山西省の出品も多くて、北方騎馬民族・遊牧民族文化の影響を重視した構成である。
見どころのひとつは、近年、急速に研究が進んでいるというソグド人に関する文物。山西省太原市出土の棺槨は、赤みを帯びた白大理石に、ゾロアスター教の祭祀など、ソグド人の風俗を彫り付けた興味深いものだった。
古代ガラスの切子杯、ギリシャ神話の一場面を描いた銀の水差などは、シルクロードを渡って運ばれ、東西両世界で珍重された美の粋である。金に白玉や宝石を配した盛唐の宝飾品は、今でも十分に通用する趣味のよさを備えていて、「美の十字路」の名を裏切らない。
一方、なんだかよく分からない不思議な文物も混じっていた。STAR WARSのアミダラ女王みたいな女子俑とか、ノコギリ(?)を構えた巫師俑とか。内蒙古など、辺境地域の俑は、人物も動物もかなり異形である。人間に比べて異様に大きく造られた駱駝の俑は、以前にも見たことがあったが「西域から富を運んでくる駱駝は、豊かさの象徴であった」という解説を読んで、初めて、そうか!と膝を打った。
それから、甘粛省出土の木製の一角獣、新疆出土の木製の鎮墓獣、木製の天王俑。中国も初めから青銅器文化だったわけではなくて、古い木製品は(砂漠地帯を除くと)あまり残っていないということか。
仏像も、『中国国宝展』でおなじみになった、山東省青州市龍興寺の出土品をはじめ、多数来ている。壁画あり、織布・刺繍あり、玉製品あり、拓本あり。とにかく、何でもあり。中国美術に何の興味もない人でも、たぶん1つくらいは「これ、かわいい!」というお気に入りを見つけることができるだろう。
同じチケットで、併設展『フォロー・ミー!:新しい世紀の中国現代美術』も見ることができる。会場を出たときは、既に日もとっぷり暮れており、展望台で東京の夜景を楽しんで帰った。(22:00まで開館というのは嬉しい。国公立の美術館も、もうちょっとがんばれ!)
http://www.mori.art.museum/html/jp/index.html
森美術館で、この夏、中国美術展をやっていると気づいたのは、つい最近のことだ。だいたい国立や公立の美術館に行くと、同種の施設のポスターやチラシがあるものだが、森美術館の情報には、全く接することがなかった。たぶん全く違う方面に、広告戦略を広げているのだろう。連休初日、友人を誘って、おのぼりさん気分で六本木ヒルズにある森美術館を訪ねた。
結論から言えば、見応え十分。会場入り口に掲げられた巻頭言を読んだ友人が、この場に及んで「200点以上も出てるのか!」と驚いていたが、普通に見ると2時間はかかる。質も高い。美術品と考古遺品では比べられないところもあるけれど、個人的な評価では、江戸博の『シルクロード展』(これもよかったけど)に優り、昨年の『中国国宝展』並みだと思う。
中国の14の省・市・自治区、43ヶ所の機関から出品されているとのことだが、甘粛省の武威、新疆ウイグル自治区からの出品が目立ち、中国固有の(漢民族)文化よりも、東西文化の交流軸(シルクロード)が強調されているように思った。それから、内蒙古、寧夏、山西省の出品も多くて、北方騎馬民族・遊牧民族文化の影響を重視した構成である。
見どころのひとつは、近年、急速に研究が進んでいるというソグド人に関する文物。山西省太原市出土の棺槨は、赤みを帯びた白大理石に、ゾロアスター教の祭祀など、ソグド人の風俗を彫り付けた興味深いものだった。
古代ガラスの切子杯、ギリシャ神話の一場面を描いた銀の水差などは、シルクロードを渡って運ばれ、東西両世界で珍重された美の粋である。金に白玉や宝石を配した盛唐の宝飾品は、今でも十分に通用する趣味のよさを備えていて、「美の十字路」の名を裏切らない。
一方、なんだかよく分からない不思議な文物も混じっていた。STAR WARSのアミダラ女王みたいな女子俑とか、ノコギリ(?)を構えた巫師俑とか。内蒙古など、辺境地域の俑は、人物も動物もかなり異形である。人間に比べて異様に大きく造られた駱駝の俑は、以前にも見たことがあったが「西域から富を運んでくる駱駝は、豊かさの象徴であった」という解説を読んで、初めて、そうか!と膝を打った。
それから、甘粛省出土の木製の一角獣、新疆出土の木製の鎮墓獣、木製の天王俑。中国も初めから青銅器文化だったわけではなくて、古い木製品は(砂漠地帯を除くと)あまり残っていないということか。
仏像も、『中国国宝展』でおなじみになった、山東省青州市龍興寺の出土品をはじめ、多数来ている。壁画あり、織布・刺繍あり、玉製品あり、拓本あり。とにかく、何でもあり。中国美術に何の興味もない人でも、たぶん1つくらいは「これ、かわいい!」というお気に入りを見つけることができるだろう。
同じチケットで、併設展『フォロー・ミー!:新しい世紀の中国現代美術』も見ることができる。会場を出たときは、既に日もとっぷり暮れており、展望台で東京の夜景を楽しんで帰った。(22:00まで開館というのは嬉しい。国公立の美術館も、もうちょっとがんばれ!)