見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

世俗の仏師たち/奈良国立博物館

2005-07-02 16:06:57 | 行ったもの(美術館・見仏)
○奈良国立博物館 特別陳列『宿院仏師-戦国時代の奈良仏師-』

http://www.narahaku.go.jp/

 16世紀、初めて俗人の仏師が登場する。彼らは奈良宿院町(しゅくいんちょう)に仏像製作の工房、仏師屋(ぶっしや)を構え、奈良を中心に、3世代、80年余りの活躍を行った。宿院仏師の残した仏像の多くが、彩色を施さず、良質なヒノキ材を活かした仕上げであることは、彼らが木寄番匠(大工)の出身であることに由来するのだろう。平明率直、健康的な表現には、近世職人の先駆けのようなところがあるという。

 なるほど、実際の仏像を見ると、非常に「分かりやすい」顔立ちをしたものが多い。少し釣り上がった目尻と、はっきりした黒目によって示される明快で、意思的な表情。口を開けば、深遠な哲理ではなく、我々俗人と同じ言葉を喋り出しそうな気がする。毎日の生活の些細な不満や心配事にも、解決を示してくれそうな顔をしている。

 正直にいうと、美術品としては、身近すぎて超越的な魅力に欠ける。しかし、さらに時代が下るほどに増えていく、安易に大量生産された仏像と異なり、それなりの新鮮さを保っていることは評価できる。当時の民衆が、現実の生活を通して、寺院や僧侶の活動に求めていたものがうかがえるようで興味深い。

 上記の特別展示のほか、平常陳列で、同館蔵『地獄草紙』を初めて見ることができたのは運がよかった。画像は、奈良博の名品紹介には載っていないが「e国宝」で見ることができる。「鶏地獄」って、不思議な発想だなあ。また、興福寺の八部衆と十大弟子のうち、興福寺の国宝館でお会いできなかった方々は、全てこっちにいらっしゃっていた。満足、満足。
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