見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

雪舟、明へ/根津美術館

2005-07-06 08:21:35 | 行ったもの(美術館・見仏)
○根津美術館 特別展『明代絵画と雪舟』

http://www.nezu-muse.or.jp/

 中国絵画といえば、宋・元代がひとつのピークである。日本の水墨画の雄たちも、つねにこの宋元画を意識してきた。雪舟も例外ではない。試しに雪舟について書かれた文献やサイトを検索してみれば、ほぼ例外なく「宋元画に学び」云々と書かれている。だから、雪舟が留学したのが明代であると、あらためて聞くと、あれっ?と戸惑ってしまう。実際に雪舟が明に渡ったのは応仁元年(1467)だから、明の建国(1368)から既に百年が経過した頃のことだ。

 この展覧会は、雪舟の作品と明代の絵画を並べてみることができる好機会である。残念ながら第1期の雪舟作品には、超級の大作はない。重文「四季花鳥図」は2期、国宝「恵可断臂図」は3期に登場する。京博の「四季山水図」(山水小巻)は全期通し。「墨画淡彩」と呼ばれるもので、なんとなく白黒だと思い込んでいたが、意外と彩色が目立つんだなあ、と再認識した。

 あまり期待してなかった明代絵画は、なかなかの佳作揃いで、すっかり認識を改める結果になった。うーむ。明代画壇、あなどり難し。出品リストを見ると、非常に「個人蔵」が多い。だから、ふだん美術館では、明代絵画の名品に触れる機会が少ないのではないか、と思う。

 群を抜くのが、文正筆「鳴鶴図」二幅。眼福である。鶴の羽毛の柔らかさがリアルに表現されている。狩野探幽、伊藤若冲、山口蓬春など、さまざまな画家が模写をしているので、「あっ、知ってる!」という既視感を覚えるが、原典を見るのは、たぶん私は初めてのはずだ(1期と3期に展示)。個人的な趣味では、人物画の「東方朔図」、身近な草木を装飾的に描いた「瓜虫図」などもいい。お気に入り。参考展示の「藻魚図」も楽しかった。

 なお、別室の特集陳列「清朝の焼きもの」も楽しい。東洋美術=老人趣味と思い込んでいる向きは信じないかもしれないが、ローズ・ピンク(紅釉)、レモン・イエロー(黄釉)、青りんごグリーン(蘋果緑釉)など、若い女性のワードローブのようなビビッド・カラーの磁器が並んでいるのだ。こうした華やかな焼きものに、台湾故宮博物院で出会ったときは、私も衝撃だったけどね。

■参考:琴詩書画巣「日本美術史ノート」→「雪舟」をたどると、山水長巻および山水小巻を動画(?)で見ることができて、面白い。
http://www.linkclub.or.jp/~qingxia/index.html
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