見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2023東京国際映画祭で『ゴールド・ボーイ』『満江紅』を見る

2023-11-03 22:04:40 | 見たもの(Webサイト・TV)

■金子修介監督『ゴールド・ボーイ』(10月29日、ヒューリックホール東京)

 東京国際映画祭で気になる映画が上映されるのを知って見てきた。『ゴールド・ボーイ』の原作は、中国・紫金陳のベストセラー小説『壊小孩』。2020年に『隠秘的角落』(バッド・キッズ)のタイトルでドラマ化され、日本にもたくさんファンのいる作品である。これを日本人監督が、どのように換骨奪胎して映像化するのか、とても興味があった。「ガラ・セレクション」で1回限りの上映だったが、運よく抽選に当たって見に行けた。

 舞台は沖縄に設定されており、ドラマ(中国南方)の雰囲気によく似ていた。登場人物の名前も原作を参考にしているのが面白かった。ドラマで秦昊が演じた陰険な殺人犯・張東昇役は岡田将生。いつカツラを外すのかと思って見ていたが(笑)こちらは最後まで美意識を崩さない役柄だった。主人公・朝陽(あさひ)を羽村仁成、普普にあたる夏月を星乃あんな、厳良にあたる浩を前出燿志。オーディションで選ばれたということだが、3人とも巧かった。夏月は、ドラマの普普に似せつつ、普普よりも重要な役柄になっている。逆に浩は、ドラマの厳良ほど深い描かれ方をしていないのが残念だったが、尺の関係で、朝陽の物語に絞らなければならないのは仕方のないところだと思う。

 映画は、途中からドラマとは異なる展開に向かうが、これはこれで面白かった。最後まで緊張感が途切れず、楽しめたと思う。ドラマで好きだった葉おじさん(蘆芳生)にあたる警官を演じたのは江口洋介。ドラマとは違うかたちでだが、ある意味、朝陽を救う役割だったと思う。

■張藝謀(チャン・イーモウ)監督『満江紅(マンジャンホン)』(10月31日、シネスイッチ銀座2)

 本作も「ガラ・セレクション」だが、週末のチケットを取り損ねて、火曜の夕方、定時で在宅勤務を終えてダッシュで見に行った。中国では今年の春節映画として大ヒットした作品である。南宋の紹興年間、岳飛の死から4年後、岳飛の政敵であった宰相・秦檜は、宿営地で金国の使者と会談に臨もうとしていた。その前夜、金国の使者が殺害され、密書が失われてしまう。宰相府の総管・何大人は、二人の兵士、張大と孫均に捜査を命じる。密書には、秦檜が金国と通じている証拠が書かれているのではないかと思われた。

 ここからが、謀略・かけひきの連続。敵の多い秦檜には、忠義な部下と見せかけて、実は秦檜の失脚を狙い、命を狙う者が多数しのんでいたのである。(途中省略して)ついに秦檜にまみえた孫均は、秦檜の命を奪うことはせず、代わりに岳飛の辞世の詩(詞)を暗唱することを強要する。岳飛が牢獄の壁に書き残した詩を知るのは秦檜だけだったのだ。楼上で秦檜が吟ずる「満江紅」は兵士たちの隊列に伝えられ、彼らは声を揃えてこれを復誦した。こうして岳飛の絶唱「満江紅」が今に伝わったわけだが、映画の中では、さらに一ひねりした展開が加わっている。

 ネタバレは控えるが、剣で脅された秦檜が、しぶしぶ「満江紅」の暗唱を始めると、次第にその詞に酔って愛国の情が激していくのが面白かった。雷佳音は、こういう情けない小者を演じるときが大好き。中国の歴史ドラマ・映画を見ていると、最大の見せ場が文学作品の名作(主に韻文)と結びついていることが多いのが、とてもうらやましい。日本の文学(韻文)は、こういう述志・述懐の伝統が弱いと感じる。

 登場人物はどんどん死ぬが、機知に富んだセリフや演技の応酬で笑えるシーンも多い。いや、客席からは笑いが絶えなかったように思う。何大人(張訳)と武大人(岳雲鵬)はずっとお笑い担当。張大(沈騰)も真面目にやっているのに笑える。どう見ても年下の孫均(易烊千玺)を「三舅」と呼ぶ関係なのも面白い。ドラマでおなじみ、郭京飛、余皑磊が出演していたのも嬉しかった。易烊千玺くんは22歳か~すっかり大人の男性を演じられるようになっていて刮目した。

 日本語、英語に加えて中国語字幕があったのはありがたかった。見せ場の「満江紅」、やっぱり原文の文字を追いたかったので。


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 少年たちの運命/中華ドラマ... | トップ | 鎌倉・宝物風入れ2023(円覚... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

見たもの(Webサイト・TV)」カテゴリの最新記事