見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2022年11-12月展覧会拾遺

2023-01-01 14:07:27 | 行ったもの(美術館・見仏)

年明けは、昨年の棚卸しから。

府中市美術館 『アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』(2022年9月23日~12月4日)

 19世紀後半、産業革命による工業化の波の中で、「すべての人の生活に美を」の理想を掲げたウィリアム・モリスと賛同者たちが生み出したテキスタイルや壁紙、家具等を展示。どのデザインも美しく魅力的だったが、日に日に貧しくなりゆく日本で見ると、まぶしすぎて少しつらかった。

戸栗美術館 開館35周年記念特別展『古伊万里西方見聞録展』(2022年7月29日~11月6日)

 17世紀半ばから約1世紀の、輸出時代の古伊万里を展観。中国の輸出事業の縮小を背景に東南アジアへの輸出が始まり、次いでオランダを通じて西欧への輸出が本格化し、熱狂的な歓迎を受けるも、1684年以降、中国が輸出事業を再開すると伊万里焼の輸出量は次第に減少し、1757年にオランダ東インド会社の公式輸出記録は途絶える。いつの時代も、ブーム(流行)は終わるものなんだなあ、何かを残しつつも。

根津美術館 特別展『将軍家の襖絵』(2022年11月3日~12月4日)

 室町幕府(足利将軍邸)の会所の襖絵を再構築する試み。文献から分かる「画題」をもとに、規模と形式が近い同時代の絵画を提示し、鑑賞者の想像によって復元を促す。広島・ウッドワン美術館所蔵の伝・天章周文筆『四季山水図屏風』や個人蔵の雲谷等益筆『韃靼人狩猟図屏風』など、貴重な作品を見る機会をつくってくれたのはありがたいが、うーん、知的な要求水準が高すぎるのか、いまいち楽しめなかった。

庭園美術館 『旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる』(2022年9月23日~11月27日)

 旅をテーマにした「アンソロジー展示」。中心を占めるのは、庭園美術館の本館建築に大きな影響を与えた朝香宮夫妻の100年前の欧州旅行だが、私は2011年の展覧会『朝香宮のグランドツアー』を覚えているので、むしろそれ以外の展示、高田賢三の欧州旅行とアジアを意識したファッションデザイン、鉄道資料蒐集家・中村俊一朗のコレクションなどが印象に残った。

松岡美術館 『松岡コレクション めぐりあうものたち Vol.3』(2022年11月1日〜2023年2月5日)

 「館蔵中国明清絵画展」が気になって見に行った。張宏筆『山水画冊』(墨画淡彩)の平明な風景が気に入って眺めているうち、大和文華館で何度か見ている『越中真景図冊』の人だ!と思い出した。石濤の『墨竹図』は墨の濃淡の使い方が等伯の『松林図』を思わせた。彩色画では呂紀の『薔薇図巻』が美しかった。サザンカみたいな薔薇。

永青文庫 秋季展『永青文庫漆芸コレクション かがやきの名品』(2022年10月8日~12月11日)

 2022年は蒔絵・漆芸をテーマにした展覧会が多かったが、その掉尾を飾る展覧会。ただし16年ぶりの展示だという国宝『時雨螺鈿鞍(しぐれらでんくら)』は展示替えで見逃してしまった。しかし私の好みは、蒔絵より中国産の堆朱や堆黒。それに細川忠興所用の『瑞獣彫木彩色兜掛』(17世紀)、労働風景を描いたところが珍しい『田植蒔絵硯箱』(18世紀、農民が、メキシカンハットみたいな帽子をかぶっている)など、珍しい作品が見られたのもよかった。

アーティゾン美術館 『パリ・オペラ座-響き合う芸術の殿堂』(2022年11月5日~2023年2月5日)

 全く予備知識がなかったので、1669年にルイ14世によって設立された王立音楽アカデミーが前身であること、1875年に完成した歌劇場は設計者の名に由来しガルニエ宮(オペラ・ガルニエ)とも呼ばれること、1989年にバスティーユ歌劇場(オペラ・バスティーユ)が完成し、現在に至ることなど、全てこの展覧会で学んだ。バレエのコスチュームを身につけた「太陽王」ルイ14世の肖像画があったのにびっくりしたが、この人はバレエの発展に尽力しただけでなく、自分でも踊ったのね。オペラ(歌劇)に関する展示もあったが、重点はバレエである。ドガやマネなど、オペラ座と踊り子たちを描いた作品も多数展示されていた。バレエダンサー(男女)の肖像画には、貴族や名士の肖像画にはない親しみを感じた。

渋谷区立松濤美術館 『ビーズ-つなぐ かざる みせる:国立民族学博物館コレクション』(2022年11月15日~2023年1月15日)

 はじめに「さまざまな部材に穴を開け、複数個を糸などでつないだもの」という本展の「ビーズ」の定義が示される。したがって、団扇みたいに大きな貝殻をつないだものもビーズ。動物の骨や牙をつないだものもビーズ。花のレイもビーズの一種である。昭和生まれには懐かしい、キラキラ光るビーズ飾りのセーターやハンドバッグもある。民博の展示らしく、世界の文化の多様性と共通性を自然に学ぶことができる。なお、入館日当日に「ビーズ(さまざまな部材に穴を開け、複数個を糸などでつないだもの)を身に着けてご来館されたお客様」は2割引で入館できるそうだ。この特典も楽しい。


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