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不昧公との縁/花ひらく茶と庭園文化(荏原畠山美術館)

2025-06-14 22:38:08 | 行ったもの(美術館・見仏)

荏原畠山美術館 開館記念展III(急)『花ひらく茶と庭園文化-即翁と、二万坪松平不昧 夢の茶苑』(2025年4月12日~6月15日)

 リニューアル開館記念展の第3部は、畠山即翁をはじめ、近代茶人の憧れの存在だった大名茶人・松平不昧の茶の湯と庭園づくりに着目する。

 第1展示室、この日は曇り空で室内が暗かったので、天井の金の波模様が目立って美しかった。『古瀬戸肩衝茶入(銘:円乗坊)』は、不昧にも評価された大名物。円筒形の無骨な姿だが、本能寺の変で被災したという由緒に心惹かれる。即翁の茶道具コレクションは、全体にシンプルで自然志向で好き。特に模様も色変わりもない『備前八角水差』や無文で筒形の『東陽坊釜』(辻与次郎作)も気に入った。不昧公遺愛の品だという『唐物籐組茶籠』は、女性持ちの巾着袋くらいの小さなバスケットで、ちょっとひしゃげているのが使い込まれた感じだった。小ぶりな茶碗が2つ、茶杓、棗など一式を収める。茶筅は陶器の筒に収めて持ち運ぶのだな。絵画は梁楷の『猪頭蜆子図』が愉快。ブタの頭にかじりつく猪頭和尚と、小さなエビをぶらさげた蜆子和尚の、乞食坊主二人の対幅である。

 新館展示室へ。昭和12年(1937)即翁が大師会の席持ちデビューを果たした護国寺圓成庵席の道具組などを参考に、えりすぐりの名品を展示。茶の湯好きの見どころは『井戸茶碗(銘:細川)』や『唐物肩衝茶入(銘:油屋)』(仕覆など付属品多数)なんだろうけど、私は藤原佐理の『離洛帖』に見入ってしまった。久しぶりい! 去年の大河ドラマ『光る君へ』は途中離脱してしまったが、渡辺大知さんが演じていたのだな。大宰府赴任の途中、出発の際に摂政道隆に挨拶を忘れたことについて、甥の誠信にとりなしを求めた書状である。もちろん全文漢文なんだけど、日本人が書いていると思えないスピード感が心地よい。「避逃」のしんにょう二つが特に好き。

 地下の展示室は、また近代絵画かな?と思ったら、全然違った。はじめに町絵図や茶室間取図の大きなパネルが掲げられていた。説明によれば、松平不昧は、品川大崎の松江藩下屋敷に11の茶室が点在する大茶苑を造営したが、黒船来航の際に品川沖警備の軍用地となり、取り壊されてしまった。ただし、不昧の没後、松平定信が谷文晁に庭園の様子を描かせており、明治の模本が今日に伝わっている。あと、大崎茶苑の茶室を担当した畳師の記録がいろいろ出ていて面白かった(港区立郷土歴史館、あなどれない)。昭和になって、即翁が土地を入手した同美術館の現在地は、不昧の大崎茶苑の近隣に位置しているという。即翁は歴史を知っていてこの地を選んだのかな。

 最後に昭和39年(1964)に撮影された『畠山記念館開く』という無音の記録映像を見ることができ、私は畠山即翁が動いている(挨拶をし、お茶を立てている)映像を初めて見た。政界、財界の有名人らしい顔が何人も映っていたのだが、はっきり分かったのは佐藤栄作くらいだった。解説を付けてほしい。


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