見もの・読みもの日記

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墨色の美学/空海からのおくりもの(印刷博物館)

2011-04-23 23:48:57 | 行ったもの(美術館・見仏)
印刷博物館 企画展示『空海からのおくりもの 高野山の書庫の扉をひらく』(2011年4月23日~2011年7月18日)

 刷りもの・書きもの好きには堪らない展覧会が始まったので、さっそく見てきた。展示室の入口は「高」「野」「山」の文字を掲げた真っ赤なゲート。高野山の大門を模しているのだな、と気づく。本展は、高野山にある6つの寺院(金剛峯寺、宝寿院、正智院、西禅院、無量光院、金剛三昧院)から秘宝計79点をお借りし、公開するもの。数点をのぞき、高野山を「下山」するのは、今回がはじめての資料ばかりだという。

 冒頭には無量光院所蔵の『弘法大師像』(絹本着色、鎌倉)。展示ケースが薄くて、かなり寄って見られるので、茶色で隈取られた瞳とか、木目までリアルに再現した椅子、靴の中敷きの市松模様(ダミエ柄みたい)など、図録の写真では分からない細部までよく分かる。唐代の『板彫両界曼荼羅』(前期は胎蔵界)にはびっくりした。解説によれば「唐時代の唯一の現存両界曼荼羅』だという。そうだろうなあ。

 そして、おもむろに宋版の大般若波羅密多経が登場。次も宋版の大智度論。次も次も…という感じで、半ば呆れる。でも同じ宋版の経典でも、紙も活字も版型も、ずいぶんいろいろなんだな、と思う。高麗版の一切経は、対馬の宗貞盛、成職親子が某八幡宮に奉納したもの(奥書あり)を石田三成が入手し、高野山奥の院に奉納したものだという。

 あとは日本で刊行された春日版、西大寺版、五山版などが続き、さらに夥しい数の高野版が紹介されている。美しいものもあれば、磨滅が激しいものも(角が取れて、丸字っぽくなっていて可愛い)。春日版(興福寺を中心とした奈良の寺院で印刷・出版された仏書・漢籍)の黒々した墨色、きれいだなあ。高野版の版面は、少し春日版に似ていると思う。正智院には、高野版の開版に関する評定記録が写本で伝わっている。料紙の単価、製本手間賃などが詳細に記録されていて、興味深い。展示品には「二番目に古い高野版」(建長6年=1254)とか「四番目に古い高野版」(建長8年=1256)という解説も記されていて、かなり研究が進んでいることが分かった。当時(13世紀、弘安年間)の版木が、数百枚現存していることにも驚いた。韓国・海印寺の高麗大蔵経と同時代ではないか(数は及ばないけど)。

 続くセクションでは「刷られた」絵画資料を紹介する。小さな摺仏、印仏だけではない。近世初期には『高野大師行状図画』(弘法大師絵巻)が木版でつくられた。挿絵部分に彩色を加えれば、紙本着色絵巻のできあがり。この間、見てきたグランヴィルの挿絵本と同じシステムである。縦が1メートルを超す精緻な十二天図、版木3枚を横につなげ、戸板ほどに仕立てた、巨大な都率曼荼羅もあった。

 近世初期には高野版にも古活字版が登場。西禅院には、その木活字セットも遺されている。印刷博物館所蔵の伏見版や駿河版の活字と並べてみると、彫りの特徴がよく分かる。

 最後にVRシアターで「曼荼羅復元・再生プロジェクト『両界大曼荼羅の宇宙』」を見ていく。極彩色の姿を取り戻した曼荼羅の諸仏が等身大の大きさで迫ってくる迫力あるプログラムで、面白かった。なお、図録はさすが凸版印刷。展示では見られなかった箇所の写真も豊富に取り入れ、黒一色(墨の美学!)の表紙、開きやすい造本にも大満足。

※参考:6寺院紹介(※印は、高野山霊宝館「よもやま記」から)
金剛峯寺宝寿院(※)正智院(※)西禅院(※)無量光院(※)金剛三昧院

※参考:東京国立博物館『空海と密教美術』展の公式サイト公開(2011/3/9)
…しかし、どうしようもなくショボい。どうした?

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