見もの・読みもの日記

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鹿、鹿、鹿/美しきアジアの玉手箱(サントリー美術館)

2009-07-31 21:07:23 | 行ったもの(美術館・見仏)
サントリー美術館 『美しきアジアの玉手箱―シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展』(2009年7月25日~9月6日)

 シアトル美術館が所蔵する日本および東洋美術コレクションの優品約100件による展覧会。同美術館は、地質学者にして美術コレクターであったリチャード・E・フラー博士(1897-1976)のコレクションを基礎に設立されたという。この人物、知らないなあ。

 第1室・日本美術で最初に注目したのは、鎌倉時代の行道面(八部衆、龍面)。「力強い造形は肥後定慶に近い」という解説に膝を打った。確かに、この造形は”運慶流”だ。解説に「東寺の七面と一具(セット)」とあったので、東寺の七面って、どんなのだっけ?と思ったら、2009年春期特別公開のページに、夜叉・阿修羅・迦楼羅の写真が載っていた(東寺の公式サイトは、いつリニューアルされたんだろう)。

 この展覧会は、作品の「出所」がよく調べられていることに感心した。めずらしい線刻馬頭観音塼(レンガ)の図様が、空海将来品の最古の転写本『高尾曼荼羅』(神護寺所蔵)と「細部に至るまで一致する」なんていうのも興味深い。『駿牛図』は「名牛の似絵」で、黒牛が1頭だけ描かれているが、もとは何頭かを並べて描いた長巻だったろうという。今年の正月に東博で見た『駿牛図巻断簡』も黒牛だった。美しさに息を呑んだのは石山切の断簡。苦笑したのは『出山釈迦図』。13世紀後半(早い!)の「水墨画」って、大真面目に解説してあったけど、確かにモチーフはそうなんだけど、これは悪戯描きじゃないのか…。

 さて、階段を下りたところに、本展の見もの、本阿弥光悦書・俵屋宗達画の『鹿下絵和歌巻』が広げられている。サントリー、山種、五島など、各地の美術館と個人が所蔵する断簡も併せて展示し、切断前の姿を偲ぼうという意図だ。たいへんありがたい企画だと思う。展示箇所は、どうやら「秋の夕暮れ」を結句とする三首の和歌で始まっていた。「心なき身にもあはれは知られけり 鴫立つ沢の秋の夕暮れ (西行)」「見わたせば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮れ(定家)」「たへてやは思ひありともいかがせん むぐらの宿の秋の夕暮れ(雅経)」。いわゆる三夕の歌かと思ったら、最後の雅経の歌は違うんだな。こっちを「三夕」とする異説はなかったのかしら?(→参考

 ずらり並んだ鹿、鹿、鹿は、意外と1頭ずつ個性があってかわいい。よく見ると、現実にはありえないようなポーズをしているのもいる。この長巻を見ながら、私の頭の中では、ドラマ『鹿男あおによし』の、テンポのいいテーマソングが鳴りっぱなしだった。誰か同じことを考えた人はいないだろうか。

 第2室は、中国・朝鮮・東南アジアの美術。ただし、元・楊筆『墨梅図』には、田安徳川家の旧蔵印が押されていたりしたので、中国・朝鮮美術といっても、どこで収集したものかは分からない。一押しは、唐時代の団華文五花形皿。金銀の両遣いが贅沢で、こんなもの見たことない!と書こうとしたら、ネットで画像を見つけてしまった。

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