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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2013秋@古径と土牛(山種美術館)

2013-12-04 23:17:22 | 行ったもの(美術館・見仏)
山種美術館 特別展 小林古径 生誕130年記念『古径と土牛』(2013年10月22日~12月23日)

 梶田半古の門下で、兄弟子・弟弟子の関係にあった二人の画家、小林古径(1883-1957)と奥村土牛(1889-1990)の画業を振り返る展覧会と聞いて、土牛が好きな私は出かけた。そうしたら、はじめは古径の作品ばかりで、あれ?と思ってしまった。「小林古径 生誕130年記念」という副題に気づいたのは途中からだ。

 いや、でも古径の絵も好きだ。歴史画、人物画のイメージが強かったので、静物や花鳥画をたくさん見ることができて新鮮だった。会場のところどころに古径の語った言葉がパネルにして飾ってあったが、師の梶田半古の思い出として「先生がよく言われたのは画品ということであって、少しでも卑しい点があると酷く先生は嫌われた」という一文が印象的だった。ああ、確かに古径の作品が持つ清々しい魅力は、「画品」と呼ぶのがふさわしいかもしれない。

 私が気に入った作品のひとつは、水平に張り出した枝に柿の実った様を描いた『秌采(しゅうさい)』。まるまるとはち切れそうな柿の実の重さが手のひらに伝わってくる。その重みに耐えてたわまない、細枝の強さ。それ以外の作品でも、嫋々とあでやかな梅や桜の花に比べて、古径の描く木の枝は、どれもピンと居住まいを正しているように見える。大野寺の弥勒磨崖仏を描いた『弥勒』も好きだ。青空の下、朗らかな緑、桜の明るい白。弥勒のやさしい視線が見つめる先を、柴をかついだ農夫が通っていく。理想郷そのものみたいな絵画である。

 後半には、土牛作品が登場。花盛りの枝垂桜を描いた『醍醐』が、私は大好きなのだ。不用意に作品に近づいたら、視界がピンクの花傘でいっぱいになって、なんだかいい匂いがするようで、若い踊り子のスカートの中にもぐりこんだような気持ちになった。むかし、私はこの桜の木を「老木」のように感じていたのだけれど、何だろう、この印象の変化は。

 そして『醍醐』ほど好きではなかったはずの『鳴門』に今回は目を見張った。すごい。水流の轟音が聞こえるような気がした。もしかしたら、私が年を取って、老眼が進んだことで、同じ作品を見ても「見えるもの」が変わったのではないか、と思った。だとすれば、老境の画家たちが本当に見ていたものが見えてくるのは、これからからも知れない。楽しみだ。

 古径と土牛の、何かしら類似点のある作品を並べてみるというのは面白い試みだと思った。菖蒲。蓮。富士山。鴨と軍鶏など。古径の『観音』(横向きの肉身の観音像)、土牛の『浄心』(中尊寺の一字金輪坐像)は、どちらも敬虔な宗教心が通っていて、敢えて近代の仏画の名品と呼びたくなる。古径の『猫』は美人さんで、土牛の『シャム猫』はひょうきんだなあ。

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