見もの・読みもの日記

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ハンドブックに好適/館蔵 古筆切(根津美術館)

2011-07-29 03:40:06 | 読んだもの(書籍)
○角田恵理子企画・編集『館蔵 古筆切』(鑑賞シリーズ12) 根津美術館 2011.7

 根津美術館のコレクション展『古筆切 ともに楽しむために』を見たあとで、ミュージアムショップをのぞいたら、本書が目にとまった。今回の展覧会の図録というわけではないが、内容は、ほぼ合致している。むしろ、ああ、なるほど、本書を制作する過程を展覧会にしたのが、今回の展示なんだ(古筆とは何か→様々な名物切)と思うと、すごく分かりやすい。

 古筆一般の解説書ではなくて、あくまで「館蔵 古筆切」に限っているので、足りない部分はある。そもそも「継色紙」「寸松庵色紙」「升色紙」の三色紙がないじゃないか!と言われれば、そのとおり。しかし、100件近い古筆切のカラ―写真を収録し、それぞれ120字程度の解説は、簡にして要を得ている。いつ(時代)だれが(筆者/伝承筆者)なにを(作品名・全文翻刻)書いたものか、を併せて掲載する。巻末に五十音順の作品目録があって、「○○切」の名前から、筆者や伝来(○○氏寄贈、手鑑○○より改装)、掲載ページを検索できるのもうれしい。根津美術館の館蔵目録であると同時に、一般的な古筆切のハンドブックとしても使えそうな気がして、買ってしまった。

 冒頭に、松原茂氏による根津美術館の書蹟コレクションの概要紹介がある。初代・根津嘉一郎氏(青山翁)は、写経と墨蹟(禅僧の筆跡)に最も力を注ぎ、古筆には、さほど強い執着をもたなかったらしい。何しろ、一度は購入した「継色紙」(よのなかは)や「寸松庵色紙」(おもひいづる)も、他の道具を購入するためか、手放してしまったという。えええ。もったいない。この2件、今はどこにあるんだろう…探してもよく分からなかった。現在、同館が所有する「石山切」2件も、青山翁没後の寄贈品であるそうだ。
 
 そんな青山翁が好んだのは、伝・西行筆「落葉色紙」だという。ああ、ちょっと分かるかも。私は、「落葉色紙」は収まりがよすぎて、あまり好きではない。古筆切って、前後のブツ切り感(1首の和歌の途中で切れていたりする)が、かえって無限の広がりを想像させて、好きなんだけどな。

 展覧会で古筆を楽しむ際は、邪道かもしれないが、その表装にも目がとまる。特に根津美術館の古筆は、魅力的な表装が多いと思う。この「鑑賞シリーズ」に『古筆金襴・緞子』という巻もあって、しばし心ひかれた。しかし、同書は表装に限らず、袱紗や仕覆(茶入などを収める袋)も扱っていたので、ちょっと関心とズレるような気がして、購入を控えた。ソフトカバー製本にして、値段を抑えてくれたら、2冊買っていたかもしれないのに。

※画像は根津美術館のサイトからお借りしてます。Amazon.co.jpや一般書店では、取り扱いなし?

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