見もの・読みもの日記

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結界を張る服/魔除け(文化学園服飾博物館)

2016-01-24 22:27:12 | 行ったもの(美術館・見仏)
文化学園服飾博物館 『魔除け~身にまとう祈るこころ~』(2015年12月17日~2016年2月17日)

 アジア・アフリカ地域を中心に、各民族の服飾に見られる多様な魔除けの役割を紹介する。ポスターに英語で「AMULETS」と入っていて、アミュレットって魔除け・お守りの意味だったのかと初めて知った。装飾品(アクセサリー)と同等くらいの意味に考えていたので。

 展示は地域別に分かれていて、はじめは日本。筒形の懸守りや背守りは鎌倉時代の絵巻に例があるそうだ。麻の葉繋ぎ、籠目、矢絣(破魔矢に通じる)などの文様にも魔除けの意味が込められている。コントラストの強い斜めストライプは手綱模様というのだと知った。

 中国では、人に害をなす五毒(サソリ、ムカデ、クモ、ヒキガエル、ヘビ)から子供を守るため、子供の靴や帽子に虎のデザインを用いる。うん、田舎の町で見たことがある。一方で「毒をもって毒を制す」思想から、五毒そのものの姿を用いることもあるそうだ。五毒をアップリケにしたベストは、可愛いんだか何だか。少数民族の衣装はどれも美しいが、侗(トン)族の「百鳥衣」は裾などに白い鳥の羽根をたくさんつけたもの。中国の歴史や伝説には「鳥の羽根をまとう」って、ときどき出てきたように思う。調べたら、RecordChina「180万円の値がついたミャオ族の豪華衣装-貴州省貴陽市」(2006/9/21)など、ネットにいくつか写真があるが、会場で見たのは白一色に近い落ち着いたものだった。

 東南アジアでは動物の尖った牙を使った装身具が多い。タイのヤオ族の子供用の帽子は、赤いポンポンがたくさんついていて可愛かった。悪霊の嫌う朝をもたらすニワトリのトサカを模している。現代人は忘れがちだが、ニワトリって強い魔除けの鳥なんだなあ。南インドでは、目、耳、鼻などの身体の孔、あるいは服の袖口、裾、襟元などの境界から悪霊が入ってくるのを防ぐため、装身具(光をはねかえす金属)や色(赤は悪霊が嫌う)、文様などで、注意深く結界を張る。アンチモニーという染料で目のまわりを黒くするにも結界の一種。背中にもお守りを忘れない。牛や馬の背飾り、面飾りにも魔除けの意味が込められている。

 西アジアでは邪視をはねかえすため、目を意味する三角形や菱形モチーフ、金属片、揺れるもの、コントラストの強い色彩などが好まれた。あとはアフリカ、ヨーロッパ(主に東欧)も少々。いちばん気に入ったのは、パキスタンの女性用の服で、黒と濃ピンクの二色使いが可愛かった。それからウズベキスタンの絣。色のコントラストが大胆で祭りの半纏みたい。

 展覧会の趣旨にも書いてあったけれど、衣服や化粧には、物理的に身体を守るだけでなく、目に見えないものから命を守る「護符」の役割もあったのだな。いつも(魔に対して)スキだらけで暮らしている自分を少し反省した。

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