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見もの・読みもの日記

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染織コレクションを見る/文様のちから(根津美術館)

2022-01-29 23:27:45 | 行ったもの(美術館・見仏)

根津美術館 企画展『文様のちから 技法に託す』(2022年1月8日~2月13日)

 工芸品の文様表現と技法に着目する展覧会。陶磁器・漆器・金工など、多様な工芸品が取り上げられているが、展示室1は着物と裂を中心に扱う。同館が染織品を主要なテーマとした展覧会を開催するのは2010年以来のことだという。いま調べたら、新創記念特別展・第6部『能面の心・装束の華 物語をうつす姿』のことかな? 私は染織品にあまり興味がないので、新創記念特別展・第1~8部のうち、この第6部だけ見ていない(笑)。なので、同館の染織品コレクションを見るのは初めてで、とても面白かった。

 主に江戸時代・18~19世紀の着物(小袖・法被・直垂など)が20件近く展示されていた。「繰り返し」は織り文様の基本だが、複雑で重厚感のある「唐織」が可能になったのは、16世紀に西陣で「空引機(そらびきばた)」が発明されて以降だという。ネットで画像検索すると、櫓のような織機の上と下に織り手が座っている写真が出てくる。このタイプ、どこかの博物館で実演を見た記憶があるのだが、日本だったか中国だったか…。

 この織機で織り出された『紫浅葱縹朱段秋草模様唐織』は、よく見ると繰り返しらしいが、基本パターンが複雑な上に、どのパターンでも糸の配色を変えているため、全く繰り返しに見えない。ものすごくゴージャスである。次に刺繍は織りよりも手間がかかるが、文様の自由度が上がる。本展のポスターにもなっている『茶地立涌雪持松模様縫箔』は、松の配置、雪の乗せ方に繊細な変化があり、ゆらゆらした躍動感があって愛らしい。

 さらに複雑なデザインを本展では「絵画的な文様」と名づける。感動したのは『紫絽地御簾に猫草花模様単』で、腰から上は平家物語の小督をイメージして秋草・几帳・筝を配し、腰から下は源氏物語の女三の宮をイメージして桜・御簾・猫を配す。裾近くに猫が二匹!三毛猫なんだ!『縮緬地せせらぎあやめ模様友禅小袖』も超ゴージャスだったが、どういう女性が、どういう場面で着たのだろう? 服飾文化に疎いので全くイメージできないのが残念。『薄浅葱地槍梅鶴亀模様直垂』は、水色の地に大きな白梅が描かれ、鶴と亀が仲良く並んでいる。亀も空を飛んでいるみたいで可愛かった。三番叟などで着用された可能性があるとのこと。この柄、ちょっと着てみたい。

 また「描かれた着物」として『誰が袖図屏風』が出ており、実際に衣桁に江戸時代の着物を掛けた展示もあって楽しかった。『草花扇面模様裂』など桃山時代の裂も4件展示。茶・緑・紫など、独特の渋い色合いが好きだ。展示室2は「彫る」「貼る・嵌める」「描く」に分類した陶磁器・漆工・金工など。

 展示室5は『百椿図』とともに初公開の『邸内遊楽図』(江戸時代・17世紀、三十六歌仙短冊貼交屏風と一具)が展示されていた。邸内遊楽図は50件あまりが知られるが、若衆茶屋を描いたものは本作を含め7件だという。しかし描かれている誰が若衆で誰が客なのか、いまいち判別がつかない。若衆髷(前髪を残して中剃りをする)は茶屋の若衆(ホスト)なのかな? 中剃りがないように見えるのは? 坊主は客に違いないのだが、平曲語りらしい琵琶法師もいる。琵琶法師、庭先などでなく、ちゃんと座敷に上がって語るのだな。あと、尼そぎ(おかっぱ)スタイルは女の子だろう。若衆茶屋に使われる女の子もいたのかな。

 展示室6は「茶の湯始-新年を祝う-」で、『朱漆手桶水指』など、一部の目立つ色彩を除いて、シックな道具が多かった。『唐銅三具』(明時代)は、利休旧蔵と伝え、今日庵に伝来したもの。『南蛮海老耳水指』(ベトナム)は、ほんとに海老のかたちの把手(?)が付いている。「海老手」と呼ばれる類例があるようだ。『古染付猫形向付』は、丸くなったネコのかたちをした器。表は、藍と茶でサバトラっぽい猫が描かれており、裏を返すと立体的な白猫になる。おもしろい。


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