見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2020年8月関西旅行:五劫院、東大寺、奈良国立博物館など

2020-08-16 10:33:14 | 行ったもの(美術館・見仏)

思惟山 五劫院(奈良市北御門町)

 大和文華館でゆっくりしたので、近鉄奈良駅に着いたのは正午頃。東大寺の北側に位置する五劫院で五劫思惟阿弥陀仏坐像が公開中(毎年8月1日~12日)と聞いたので拝観に行く。佐保川のほとりの今在家というバス停で下りて、スマホの地図をたよりに静かな住宅街の細い道を入っていく。

 奈良のお寺らしい(と私が勝手に思っている)開放的な境内。風通しのいい本堂では、お寺の方々が盆供養の準備をされていた。本尊は外陣からの参拝になるが、わりと高いところに安置されていて見やすかった。長い長い修行の間に髪が伸びて螺髪のボリュームが増し、四角いアフロヘア状態になっている。変わったお姿だが、意外と違和感がない。むしろ両手を膝の上で袖の中に隠しているのが珍しいと思った。肩が細くて撫で肩なので、全身が三角おむすびみたいで可愛い。

 拝観後は住宅街を南に下って東大寺へ向かう。東大寺の西側は、奈良公園と一体化していて、どこから境内かよく分からないのだが、北側は高いフェンスできっちり仕切られていることを初めて知った。正倉院の西側から境内に入る。

■東大寺二月堂

 この日(8月9日)は全国的に(全世界的に?)観音さまの大功徳日と言われている。東京では「四万六千日」と呼ぶことが多いが、関西では「千日まいり」が一般的だ。秘仏・十一面観音を本尊とする二月堂では「功徳日(およく・およく日)」と呼んでおり、福引・法要・万燈明などの行事が行われる。今年は新型コロナの影響で、行事の一部は中止・縮小されたが、この日限定の「およく餅」の販売はあるというので、行ってみた。

 強烈な日差しとマスクに籠る熱気でへとへとになりながら、裏参道の長い石段を上がると、北側の茶店の前にテントが出ていて「二月堂およく餅」の幟が揺れていた。しかし長机の上の小さな籠はカラっぽ。おじさんに「もう売り切れです、また来年いらっしゃい」と慰められた。実は、直前のお客さんが籠の中の最後のお菓子(およく餅ではなかったかも)を買っていくのを見ていたので、タッチの差だったかもしれない。残念。まだ午後1時頃だったが、おじさんたちは、そさくさとテントをたたみ始めた。

 私は二月堂といえば、修二会しか来たことがなかったのだが、この「およく」だけでなく、9月17日の「十七夜」など、地域に根づいた庶民の楽しみ的な行事も行われてることを初めて知った。来年は無理かもしれないが、機会があったらまた来てみたい。

東大寺ミュージアム 『特別公開・戒壇堂四天王立像』(2020年7月23日~およそ3年間)

 戒壇院戒壇堂が6月末からおよそ3年間、耐震対策と保存修理に伴う工事のため閉堂となり、四天王立像が同館に来ているというので見に行った。千手観音菩薩立像(もと四月堂)を挟んで天平の塑像、日光・月光菩薩立像(もと三月堂)が並ぶ展示ケースの反対側に、露出展示(!)の四天王像が並んでいる。まあ戒壇院でも「露出」だったわけだが、日光・月光菩薩みたいに、ミュージアムではガラスケース入りになるのだろうと思っていたので、ちょっと意外だった。

 素晴らしいのは照明。私が戒壇院の四天王像を好きになったきっかけは、たぶん土門拳の写真である。しかし実際の戒壇院では、イメージどおりの四天王像に会えることもあれば、なにか違うと思うこともあった。天候や光線の具合によっては、平板で迫力が足りない印象になるのだ。それが、ここでは「私の見たかった四天王像」が目の前にあって、すごいなあと思った。

奈良国立博物館 御大典記念特別展『よみがえる正倉院宝物-再現模造にみる天平の技-』(2020年7月4日~9月6日)

 明治以来、これまでに製作された数百点におよぶ正倉院宝物の再現模造作品の中から、選りすぐりの逸品を公開。昨年の東博の特別展『正倉院の世界』や毎年の正倉院展で参考展示として見たものが多かったが、明治時代につくられた墨や筆、刀剣や武具の模造品が目新しくて面白かった。

■奈良県立美術館 特別展『みやびの色と意匠 公家服飾から見る日本美』( 2020年7月25日~9月22日)

 東博の『きもの』展を見に行ったら、思いがけず奈良県立美術館からの出品が多かったので気になっていた。画家の吉川観方旧蔵コレクションが中心になっているらしい。展示品は江戸後期~近代ものだが、古代の令制以来の服飾の変遷がよく分かった。黒田西塘『即位図』と原在明『新嘗祭図』(どちらも江戸時代・19世紀)に描かれた服飾の解説はとても面白かった。新嘗祭で用いられる小忌衣(おみごろも)(男性が着用)とか、青海波文の唐衣(女官が着用)とか、独特である。東豎子(あずまわらわ)という男装の女官が日本にあったことも初めて知った。


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