■東京国立博物館・表慶館 特別展『アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝』(2018年1月23日~5月13日)
先史時代の石器から近現代まで、サウジアラビア王国の至宝を日本で初めて公開。展示品のほとんどはサウジアラビア国立博物館の所蔵品である。しかし私は中東について、歴史も現在の社会状況もほとんど知らない。あらためて世界地図を見て、サウジアラビアという国がアラビア半島の大部分を占めていることを確認したくらい。まあでも、せっかくの機会なので見に行った。冒頭は、東博というより科博の展示のようで、旧石器時代(100万年以上前)の石器や動物の骨など。新石器時代に入ると、矢尻や器、動物のかたちをした石器など、人間の存在をうかがわせる遺物が登場する。さらに時代が進むと、彩文土器の壺や高坏が現れる。なんとなく東洋的な美意識と親和するところがあって、織部の茶碗を思わせる器もあった。紀元前4~2世紀の遺物だという、筋骨隆々とした巨大な男性像は迫力があった。
後半は、イスラーム色が強まり、オスマン朝時代のカァバ神殿で使われていた扉や、16世紀のクルアーン(コーラン)写本などを見ることができた。全く読めないが、アラビア文字の美しいこと。しかし、本展はイスラーム文化よりも、それ以前の長い歴史のほうが印象に残る。最後は、20世紀のはじめに建国されたサウジアラビア王国のサウード王家に関する資料。最近、君塚直隆『立憲君主制の現在』で、サウジアラビアの君主制について知る機会があったので、興味深く感じた。
■東京国立博物館・東洋館8室 『中国の絵画 墨の世界の生き物たち』(2018年4月17日~5月20日)
「生き物」をテーマにするのは、最近の博物館・美術館の流行だが、この中国絵画室では初めての試みではないかと思う。松田の『栗鼠図軸』とか蘿窓の『竹鶏図』とか、おなじみの作品がある一方、見慣れないめずらしい作品も出ていた。『藻魚図屏風』2曲1隻(伝・韓秀実筆、明代)は常盤山文庫所蔵。畳ほどもある巨大な画面を、さらに巨大な魚が体をくねらせて泳いでいる。水中の光景なのに、全然涼しそうでなく、異様な圧迫感がある。辺寿民の『芦雁図扇面』『芦雁図冊』は、小さな姿にも個性と愛嬌が感じられて、かわいい~。「辺の芦雁」の評判を得ていたことに納得。永瑢の『魚蔬図巻』は、魚と野菜を並べて淡墨で描いたもの。ちょっと若冲を思わせる。
■国立公文書館 平成30年春の特別展『江戸幕府、最後の闘い』(2018年3月31日〜5月6日)
平成30年(2018)が明治元年(1868)から満150年に当たることを記念し、明治前夜、幕末期の江戸幕府の「文武」改革について取り上げる。冒頭「もたらされる海外情報」に出ていた資料が面白かった。『視聴草(みききぐさ)』は幕臣・宮島成身が編纂したもので、天保15年(1844)オランダ国王ウィレム二世から開国勧告の国書を受け取ったときの記録の箇所が展示されていた。参考として写真図版で添えられていた特使コープス(カウプス)の似顔絵が秀逸。絵心のある幕府役人は重宝されたのではないかな。そのほか、日本にもたらされた海外情報の例として、明清交替やフランス革命、アヘン戦争について記した資料が出ていた。アヘン戦争に関し、清国軍と交戦したイギリス人の中には、武勇を発揮した女性もいて(武侠かw)実はイギリスの第三王女であるという、とんでもない伝聞も記されていた。
A4サイズのカラー図録は500円。国立公文書館の特別展は、むかしはかなり充実した図録を無料で配っていた。一時期、経費抑制で図録をつくらなくなったり、すごく価格を抑えて販売したりしていたが、この価格、このクオリティでしばらく続けてもらいたい。学校図書館等に供えて、高校生や中学生の日本史の資料にしてもよいと思う。
先史時代の石器から近現代まで、サウジアラビア王国の至宝を日本で初めて公開。展示品のほとんどはサウジアラビア国立博物館の所蔵品である。しかし私は中東について、歴史も現在の社会状況もほとんど知らない。あらためて世界地図を見て、サウジアラビアという国がアラビア半島の大部分を占めていることを確認したくらい。まあでも、せっかくの機会なので見に行った。冒頭は、東博というより科博の展示のようで、旧石器時代(100万年以上前)の石器や動物の骨など。新石器時代に入ると、矢尻や器、動物のかたちをした石器など、人間の存在をうかがわせる遺物が登場する。さらに時代が進むと、彩文土器の壺や高坏が現れる。なんとなく東洋的な美意識と親和するところがあって、織部の茶碗を思わせる器もあった。紀元前4~2世紀の遺物だという、筋骨隆々とした巨大な男性像は迫力があった。
後半は、イスラーム色が強まり、オスマン朝時代のカァバ神殿で使われていた扉や、16世紀のクルアーン(コーラン)写本などを見ることができた。全く読めないが、アラビア文字の美しいこと。しかし、本展はイスラーム文化よりも、それ以前の長い歴史のほうが印象に残る。最後は、20世紀のはじめに建国されたサウジアラビア王国のサウード王家に関する資料。最近、君塚直隆『立憲君主制の現在』で、サウジアラビアの君主制について知る機会があったので、興味深く感じた。
■東京国立博物館・東洋館8室 『中国の絵画 墨の世界の生き物たち』(2018年4月17日~5月20日)
「生き物」をテーマにするのは、最近の博物館・美術館の流行だが、この中国絵画室では初めての試みではないかと思う。松田の『栗鼠図軸』とか蘿窓の『竹鶏図』とか、おなじみの作品がある一方、見慣れないめずらしい作品も出ていた。『藻魚図屏風』2曲1隻(伝・韓秀実筆、明代)は常盤山文庫所蔵。畳ほどもある巨大な画面を、さらに巨大な魚が体をくねらせて泳いでいる。水中の光景なのに、全然涼しそうでなく、異様な圧迫感がある。辺寿民の『芦雁図扇面』『芦雁図冊』は、小さな姿にも個性と愛嬌が感じられて、かわいい~。「辺の芦雁」の評判を得ていたことに納得。永瑢の『魚蔬図巻』は、魚と野菜を並べて淡墨で描いたもの。ちょっと若冲を思わせる。
■国立公文書館 平成30年春の特別展『江戸幕府、最後の闘い』(2018年3月31日〜5月6日)
平成30年(2018)が明治元年(1868)から満150年に当たることを記念し、明治前夜、幕末期の江戸幕府の「文武」改革について取り上げる。冒頭「もたらされる海外情報」に出ていた資料が面白かった。『視聴草(みききぐさ)』は幕臣・宮島成身が編纂したもので、天保15年(1844)オランダ国王ウィレム二世から開国勧告の国書を受け取ったときの記録の箇所が展示されていた。参考として写真図版で添えられていた特使コープス(カウプス)の似顔絵が秀逸。絵心のある幕府役人は重宝されたのではないかな。そのほか、日本にもたらされた海外情報の例として、明清交替やフランス革命、アヘン戦争について記した資料が出ていた。アヘン戦争に関し、清国軍と交戦したイギリス人の中には、武勇を発揮した女性もいて(武侠かw)実はイギリスの第三王女であるという、とんでもない伝聞も記されていた。
A4サイズのカラー図録は500円。国立公文書館の特別展は、むかしはかなり充実した図録を無料で配っていた。一時期、経費抑制で図録をつくらなくなったり、すごく価格を抑えて販売したりしていたが、この価格、このクオリティでしばらく続けてもらいたい。学校図書館等に供えて、高校生や中学生の日本史の資料にしてもよいと思う。