見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2022年8月関西旅行:大和文華館、奈良博

2022-08-21 23:34:26 | 行ったもの(美術館・見仏)

 お盆旅行2日目、大阪から奈良へ移動。

大和文華館 『東アジアの動物-やきものと漆-』(2022年7月8日~ 8月14日)

 古代から近世にかけて、東アジアの陶磁器や漆器にあらわされた生動感あふれる動物の世界を楽しむ。展示品は、大小取り混ぜて98件。やっぱり、このくらいのボリューム感があると嬉しい。冒頭には、中国・明時代の『螺鈿水禽文輪花盆』、隋~唐時代の『白磁蟠龍博山炉』、どちらもゴージャス。そして朝鮮・高麗時代の『青磁九龍浄瓶』は蓋の頭頂と四方、さらに頸のつけねあたりの四方に龍の頭がついている。みんな、エサを待つ雛鳥みたいに口を開けているのが可愛い。少し位置のずれた一匹の頭が注ぎ口になっているらしかった。

 はじめに神話的な生きものである龍、亀、麒麟、鳳凰を特集。中国・明清の漆器や磁器が多いが、春秋~戦国時代の『龍文佩玉』や唐代の『金銅厭勝銭』(銭の形のおまじない)などの考古資料もあった。明・天啓年間の『五彩双鳳文皿』は子供の絵のような素朴な図柄で味わい深かった。

 次に吉祥の動物である魚、鹿、鳥を順に取り上げる。磁州窯の『白地黒花鯰文枕』は、水中にゆらゆら並んだ細身のナマズが可愛い。『五彩蓮池魚藻文壺』は、壺の側面を上下に行き交う魚が可愛い。朝鮮時代の『螺鈿魚文盆』は、使い勝手のよさそうなたらい型。欲しい。

 鹿は、1000年生きると青鹿になり、さらに500年生きると白鹿、さらに500年で黒鹿になると言われているそうだ(探したら、出典は『述異記』)。伝・光悦作の『沃懸地青貝金貝蒔絵群鹿文笛筒』に、よく見ると黒・白・青の鹿がいるのは、そういう伝説を踏まえているのだろうか。なぜか「鹿」の付け足しに、中国・南北朝時代の『灰陶加彩誕馬(ひきうま)』と『灰陶加彩駱駝』が並んでおり、ド迫力だった。馬は赤兎馬を思わせる、全身赤色に白いたてがみ。駱駝は魔除けの人面の荷袋を背に担っていた。なお漢代の中国に駱駝は見られず、南北朝時代から登場するそうだ。

 最後は鳥で、オシドリ、鶴、雀、鶉などさまざま。唐代の金工品の中には、セミをあしらった金具もあった。五角形の形状で、東博で見た『蝉文冠飾』に似ていた。金糸で繊細な文様を織り出した『竹屋町裂』は「中国・明時代」というキャプションがついていたが、解説によると、元和年間に堺を訪れた中国人から技法を学んだ日本人が、京都・竹屋町で生産を始めたものだという。いろいろ新しい知識を仕入れ、充実した時間を過ごすことができた。

 炎天下でも元気な、門前の百日紅。

奈良国立博物館 貞享本當麻曼荼羅修理完成記念・特別展『中将姫と當麻曼荼羅-祈りが紡ぐ物語-』+特別陳列・わくわくびじゅつギャラリー『はっけん!ほとけさまのかたち』(2022年7月16日~8月28日)

 階段を上がってすぐの東新館は、特別陳列の会場になっていた。仏像や仏画などに表されたほとけさまの「かたち」に注目し、「かたち」に込められた祈りや意味を、大人にも子供にもわかりやすく紹介する企画である。仏像は、いつもは本館(仏像館)でお見かけする、元興寺の薬師如来立像や、興福寺北円堂伝来といわれる多聞天立像などが、こちらに来ていた。裸形の阿弥陀如来立像は、原品のほか、レプリカが用意されていて、衣装を着せるワークショップが行われていた。仏像だけでなく、絵画や工芸(四大明王五鈷鈴・唐時代)も見ることができたのは得をした気分。公式キャラクターのざんまいずが今年も大活躍だった。

 続いて、西新館の『中将姫と當麻曼荼羅』展を参観。奈良・當麻寺(当麻寺)の本尊である綴織當麻曼荼羅(つづれおりたいままんだら)は、伝承の過程で多数の写しが作られてきた。なかでも最も精巧な名品が、貞享3年(1686)に完成した貞享本當麻曼荼羅である。本展は、修理を終えた貞享本を展示し、当時の當麻曼荼羅信仰や中将姫信仰について紹介する。

 『綴織当麻曼荼羅』(根本曼荼羅)を奈良博で見たのはいつだったろう?と思って検索したら、2013年の特別展『當麻寺(たいまでら)』のようだ。今回は、根本曼荼羅は来ておらず、彩色の貞享本がメインである。このほか、鎌倉・光明寺の『當麻曼荼羅縁起』とその異本が何種か出ていた。この物語、よく読んでみると、中将姫は化尼(阿弥陀如来の化身)に命じられて、蓮糸を紡いで染める準備作業にはかかわっているのだが、そこに化女(観音菩薩の化身)が現れて、たちまち曼荼羅を織り上げてしまう。うーん、中将姫はそれでよかったんだろうか?

 また、これには前段の物語があって、右大臣・藤原豊成の娘として生まれた中将姫は、実母の死後、継母に疎まれて殺害されかかる。助けられて山中で育ち、父に都に呼び戻されるが、中将姫は当麻寺で出家し、阿弥陀如来と観音菩薩の奇瑞に遇う。そして29歳で無事極楽へ往生するのである。えー継母も父親も報いを受けることはないのか。ちょっと釈然としない。

 展示の最後には「中将姫イメージの変遷』と題したコーナーもあり、文楽『鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてまつ)』の上演写真や、ツムラ(津村順天堂)の中将湯引札もあって面白かった。

 そして本館(仏像館)もひとまわりして、いったん夕食を食べにJR奈良駅方面に戻った。写真は、奈良博本館の前の池に浸かっていたシカの親子。

 夕食後、再び奈良公園(東大寺)に戻ってきたのだが、それは別稿にしておこう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする