見もの・読みもの日記

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2022年3月関西旅行:浄瑠璃寺、西大寺、薬師寺花会式

2022-04-02 23:34:49 | 行ったもの(美術館・見仏)

小田原山 浄瑠璃寺(京都府木津川市)

 関西旅行2日目。浄瑠璃寺は、行政区分では京都府に属するが、観光エリア的には奈良のお寺である。事前に調べたら、奈良市内から直通のバスは、観光シーズンの土日しか運行されていなかったので、JR奈良線で加茂駅に出て、加茂駅から小型のコミュニティバスに乗った。ハイキングらしい女性客が2人、岩船寺で下りたあと、浄瑠璃寺前で下りたのは私1人だった。まだ10時になったばかりで、土産物屋も開いておらず、人影のない参道に、人恋しげな犬が2匹、うろうろしていた。

 コブシや馬酔木など、花木に埋もれた参道の先には黄色い漆喰塀と小さな門。これぞ大和路、という風情である。

 開いたばかりの受付で拝観をお願いしたあと、本堂(阿弥陀堂)の濡れ縁に上がり、ぐるりと裏をまわって、受付とは反対側の入口から中に入る。すぐに目に入るのは、等身大の力強い四天王像(持国天、増長天)。残りは東博と京博に寄託されていることを思い出す。その隣り、横に長い須弥壇の上には九体の阿弥陀如来坐像が並ぶ、と書きたいところだが、左から3番目と6番目は「修復中」のため空席だった。実は中尊も昨年度修復されたところで、9体全て順番に修復予定らしい。

※Japan Art and Culture:京都・浄瑠璃寺の国宝「九体阿弥陀」の中尊、1年ぶり本堂に…「見えない部分まできれいに」(2021/7/7)

 来迎印の中尊を除き、脇尊は全て同じポーズ(弥陀の定印)だが、表情に少しずつ違いがある、私は左から2番目の阿弥陀仏に惹かれた。

 中尊の右横には吉祥天のお厨子があり、開扉されていた。私は、なんとなく青い衣のイメージを持っていたので(薬師寺の吉祥天女画像の復元模写のイメージかも)上下とも深紅の衣であるのを見て、記憶を修正した。薄暗い、ほぼ自然光の本堂でも、匂い立つような華やかさである。このほか、中尊右手の空席には地蔵菩薩立像が、須弥壇の右奥には不動明王と二童子像が祀られていた。

 本堂奥の出口の横には、若いお坊さんが座っていらした。「ありがとうございました」と挨拶して出ようとしたら、胸元に大きな猫ちゃんを抱えていた。実は拝観中、お坊さんの席のあたりからゴロゴロ大きな音がするので、朝から居眠りして鼾をかいているのか?と思ったのは、この子が喉を鳴らす音だったのだ。「お寺で飼われているんですか?」とお尋ねしたら、にこにこしながら「ここに住んでいるんです」とおっしゃっていた。火の気のない本堂なので、寒いときは猫ちゃんが暖房代わりになるのかもしれない。写真は、あとで本堂の濡れ縁で、拝観用の車椅子の横にうずくまっていた猫ちゃん。帰りの参道では、別の猫を7、8匹見かけた。

 それから、無人の浄土式庭園を独り占めして散策。いいなあ。この雰囲気、10年先も20年先も変わらないでほしい。自然に囲まれた九体阿弥陀堂(本堂)は、絵本の「ちいさいおうち」のように思われた。

 バス停に戻る途中、参道の土産物屋さんが開き始めていた。時間つぶしに店内を見せてもらったので「浄瑠璃寺みやげ」のシールの貼られたくず餅をひとつ買って行く。帰りはバスで加茂駅に出たあと、別の路線バスに乗り継いで、近鉄奈良駅に出た。梅見台という住宅地を通ったので、観光地の奈良・京都とは違う街の顔が見えた。

真言律宗総本山 西大寺(奈良市西大寺柴町)

 今回の奈良旅は、久しぶりの古寺巡礼に徹することにして、東大寺にも興福寺にも寄らず、西大寺に向かった。残念ながら聚宝館は閉まっていたが、四王堂、本堂、愛染堂を拝観した。四王堂には、右手に錫杖を執る長谷寺式の大きな十一面観音像がいらっしゃった。あと、かなり美形の道鏡禅師坐像が安置されているのが珍しかった。2021年に八尾市の「道鏡を知る会」から寄贈されたもので、芸大の籔内佐斗司先生の制作である(※八尾市記事)。

 本堂の本尊釈迦如来立像は清凉寺式。文殊菩薩騎獅像ならびに四侍者像(鎌倉時代)も見応えがあった。少し離れた奥の院にある、興正菩薩叡尊五輪塔も見てきた。

法相宗大本山 薬師寺(奈良市西ノ京町)

 薬師寺に着いたのは午後1時半頃だったと思う。この時期、薬師寺では花会式(修二会)が行われており、午後1時から日中、続いて日没の法要があることは事前にチェックしていた。金堂から、にぎやかな読経の声(マイクを使用している)が流れていたので、慌てて行ってみた。

 正面は階段の下までしか近づくことができないが、須弥壇の左右には立ち入ることができる。私は下手(左)側で聴聞することにした。須弥壇の前には10人の練行衆が座る、ベンチのような台が設置されており、上手側の長い台には4人、下手側のL字型の台には6人の席がある。

 私は昨年、国立劇場で薬師寺花会式の公演を見ていたので、だいたい何をしているかは理解できた。上手席の先頭の僧侶が、扇をトンと立てて人を呼び、草履を用意させたときは、おお、咒師(しゅし)だ!と興奮した。国立劇場の公演と同じく、やがて銅鈴を振り鳴らして立ち上がった咒師は、須弥壇の四方でくるりと一回転して、四天王を勧請した。

 日中・日没の法要が終わって、練行衆が退出したのは午後3時過ぎ。耳と目は飽きないが、東大寺の修二会聴聞と違って、立ちっぱなしなのが辛かった。それでも大勢の方が熱心に聴聞していた。午後7時からの初夜・半夜の法要では、咒師が二本の剣を構えて堂内を巡る「咒師作法」があるのだが、また次の機会に譲ることにした。東院堂の聖観音、玄奘三蔵院伽藍などを拝観して、今夜の宿の京都へ向かった。

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