見もの・読みもの日記

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阿弥陀の浄土/仏教絵画(日本民藝館)

2022-04-13 13:31:34 | 行ったもの(美術館・見仏)

日本民藝館 特別展『仏教絵画:浄土信仰の絵画と柳宗悦』(2022年3月31日~6月12日)

 玄関を入ると、2階正面の壁には、涼しげな水色地に蓮池文を染め抜いた幕。左右に「南無阿弥陀仏」「阿弥陀法界」の墨拓の軸。すでに阿弥陀の浄土に迎え入れられた雰囲気である。大階段の踊り場には、何か細長いものが立っていると思ったら『笈』だった。黒漆塗の表面に金工の仏や羅漢の姿を貼り付けている。

 大展示室は、右手の展示ケースの中にさまざまな仏画が並んでいた。本展が「これまでまとめて紹介されることがなかった、柳(宗悦)が蒐集した中世の仏教絵画をご覧いただく、貴重な機会」であることは、ホームページにも掲載されている。南北朝~室町時代のものが多いが、赤い衣(金彩の円文あり)を着て正面を向いた『阿弥陀如来像』は、中国・南宋~元時代(13世紀、伝・張思恭筆)とあった。右手を下げ、左手は肘をまげて胸の前に置く(手のかたちがよく分からない)印相は、高麗仏画を思い出させた。全体の雰囲気はずっと素朴で、田舎のおじさんみたいな顔をしている。また、中国・元時代の『達磨大師像』も、言われなければ達磨大師とは思えない、穏やかなお顔だった。

 平台の展示ケースに出ていた多数の摺仏も可愛かった。彩色の当麻曼荼羅は、精緻で明るい色彩がインドかネパールあたりの工芸を思わせた。大展示室の奥の壁の中央には、黒地に金彩で五輪塔を描いた大きな扁額が掛かっていた。奉納者であろう14人の名前が記されており、僧侶っぽい名前の中に、七郎右衛門、玉連(蓮?)童子とあるのが気になった。

 もうひとつ目についたのは、飛騨高山産という仏壇。中に人が入れるくらいの大きさで、内側は金地に蓮池が描かれており、十字名号(帰命尽十方無碍光如来)の掛軸や朱塗の燭台が取り合わせてあった。

 また、大展示室の中だったか外だったか、江戸時代の『聖衆来迎図』で、酒屋か油屋か、大きな桶が積んであり、短い暖簾が下がる店の上り口(違うかもしれないが、文楽の舞台から想像)でちょんまげ姿の町人が座って手を合わせているところに、塀の向こうから阿弥陀仏と諸菩薩が雲に乗ってやってくる様子が描かれていた。何か物語の一場面だろうか。ちょっと珍しい図様で気になった。

 2階の階段まわりには『二十五条刺納袈裟』。刺納(しのう)は刺し子の意。江戸時代の作だというが、現代手芸のように美しかった。また室町~江戸時代の『束帯天神像』は、足袋だけ履いた足のすねを投げ出しているように見えたのだけど、私の見間違いだろうか。2階はもう1室、特集の続きがあって、麗しい聖徳太子の図、阿弥陀の名号の軸、和讃の本などが展示されていた。雑な言い方になるけれど、やっぱり浄土信仰は日本文化の基層だなあと感じた。

 併設展「日本の漆工」は、私の大好きなジャンルで眼福。漆絵は楽しい。「朝鮮半島の陶磁器」では、変なカエルの描かれた『草虫図』を見ることができたのと、円柱に麦わら帽子を載せたような、白磁の位牌(15~16世紀)が気になった。「文房具」は朝鮮テイストを中心に、中国や日本の品も展示。朝鮮陶磁の水滴コレクションがかわいい。

 1階はエントランスが「丹波の古陶」、ほか「九州陶磁」「近代工芸の作家たち」「日本の染織」だった。九州陶磁の取り合わせに『御固図屏風』が出ていた。黒船来航により、高まる危機の風景を描いているのに、のどかで静謐で、好きな作品である。

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