〇NHK BSプレミアム『生中継 闇と炎の秘儀 お水取り 〜奈良・東大寺修二会〜』(第1部:2021年3月13日 18:30~19:30、第2部:3月13日 22:30~3月14日 01:15)+YouTube 東大寺公式チャンネル
東大寺の修二会を初めて聴聞したのは大学生の頃で、以後、3年に1回くらいのペースで、たぶん10回は行っていると思う。直近では、2019年に2日目を聴聞した。2018年にも10日目のお松明を見ている。しかし、2020年はコロナ禍、今年2021年も拝観制限(堂内での聴聞不可)が発表され、予想されたこととは言いながら、がっかりしていた。そうしたら、なんとNHKが史上初めて堂内にカメラを入れて生中継するという情報を得た。
このほか、東大寺ホームページの情報によれば、3月1日~15日は、ニコニコ動画で二月堂遠景を24時間ライブ配信し、3月12日~14日は東大寺の公式YouTubeチャンネルでも配信するという。素晴らしい。しかし、何といっても見たいのはBS生中継だが、私のマンションはBSが映らないのである。幸い、いまは緊急事態宣言下で、中高級ホテルが安いので、土曜は都心のホテル(大浴場つき)に1泊して、大きなモニタでゆっくりBS中継を見ることにした。
第1部はお松明の上堂。二月堂の斜面の下からだけでなく、回廊の下で点灯する様子、ゆっくり回廊を上がる様子、お堂の入口まで練行衆を導き、くるりとターンして、手すりから松明を差し出す様子などが、間近で捉えられていて迫力があった。特にこの日は風が強かったため、風に煽られて伸び縮みする炎は、生きもののようだった。匂わないはずの松脂の焼ける匂いが、記憶の中からよみがえった。
大浴場に浸かって体を温め、缶ビールとつまみで気分を整える。第2部は、半夜と後夜の行法が対象である。カメラは正面の西の局と、さらに内陣(東南か東北の隅?)にも入っているらしい。西の局から眺める内陣の入口には戸張(とちょう=うすぎぬ)がまだ下りているが、カメラが切り替わると。須弥壇の前の練行衆が映ることもある。私は咒師(しゅし)の鈴と唱えごとが好きなのだが、今年の咒師は、オペラ歌手のような美声だった。咒師としては美声すぎるかも。(持寶院・上司永照師とのこと。※奈良倶楽部通信 2020/12/27)
しかしNHKは、行法のすべてを完全生中継するつもりはないらしい。途中で、過去映像や資料映像を使った解説に切り替えたり、ゲスト(東大寺長老・森本公誠、作家・夢枕獏、アイドル・和田彩花)に感想を聞いたりしている。いやそれは、必要なのか? 私はスマホでYouTube 東大寺公式チャンネルにアクセスしてみた。こちらは、基本的に西の局の定点カメラで、一切解説や無駄なお喋りを挟まず、現場の音声を淡々と流している。こっちのほうがいい。そこで、第2部は、テレビの音声を消して、スマホ(YouTube)の音声を聴きながら、テレビの映像を見る方式に切り替えた。ちょっと音声が遅れることが分かったが、大きな問題ではなかった。
BS中継でいちばん惜しいと思ったのは、法螺貝の吹き合わせの中継を省略したこと。あの、現代音楽みたいな不調和の美しさ、どうして放映しないかな。まあでも、テレビがお経や陀羅尼の内容を現代語で字幕表示してくれるのはありがたかった。韃靼では「八天」がそれぞれ自分の呪物で堂内を清めるというのを初めて学んだ。水天(香水)、火天(火の粉)、芥子(ハゼ=炒り米)、楊枝、大刀、鈴、錫杖、法螺である。水天と火天しか記憶していなかった。韃靼のクライマックス(大きな松明が堂内を何度も巡り、最後に内陣から礼堂に倒されて、火花を散らす)は何度見てもよい。
結局、翌3月14日もパソコンで公式YouTubeチャンネルにアクセスした。途中、テレビドラマを見たくて中断し、夜10時過ぎから本格的に見始めたのだが、布団に入ってしまったので、だんだん眠くなり、韃靼はうつらうつらの視聴になった。勿体ないことだ。でももう私も若くないので、現場で6時間頑張るには、かなり覚悟がいる。布団の中からリモートで聴聞できるなんて、バリアフリーの極致で、素晴らしいことだと思う。ありがとうございました。